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1話-1
『月葉編』
時々、夢を見る
何の前触れもなく
突然
忘れかけていた頃に同じ夢を…
激しい雨が降っている
私と兄は傘もささず
そのどこかの歩道に立っていた
一瞬の間を置いた後
私は兄の傍に一歩
歩み寄ると
兄は私にもたれ掛かる様になった
そして、そのまま私から
滑り落ちる様に地面に突っ伏した
やがて、彼の腹部から大量の朱い液体が流れ出す
私は訳が分からず
視線を下に下ろす
すると私の左手には
刃が朱い液体に塗れたナイフがあった
私は声にならない悲鳴をあげて
その場にしゃがみ込む
だけど
しゃがみ込んだ場所のすぐ隣にあった水溜まりに映った私は
笑っていた