2、その転がってるのが多分パピー
「私は蛮族ではない。征服者でもない。故に、罪深き貴様らであったとしても今後我が国に仕え有益、有能な者であれば機会を与えようと考えておる」
どっかりと、玉座に座り込んでレンツェの王族たちを見下ろすのは、血のように赤い髪に青い瞳の美しい女性。レンツェの王族の瞳も青いが、この女性の瞳を前にして「青い瞳」と言うのはどれほど勇気がいるかというほど。
女性は返り血を浴びた軍服に、自身の前には剣を突き立てて足を組んでいる。
私は他の姉たちと同じく、謁見の間に連れて来られ、跪いた状態。後ろには騎士達が控えていて、すぐにでも私たちの首を刎ねられるようになっていた。
なぜわかるのかって?そりゃ、前の方にいる首なし死体が同じ状態だからだよ!
立派な服に、転がってる頭の側には王冠があるから、多分顔も知らないパパだよ!
血だまりの中で若干痙攣してたのは出来たてだったからかな!
女性が顎を動かすと、一人、また一人と、軍服の女性の前に連れて行かれ「有益か?無益か?」と問われた。
「王族とは、国にとって有益な存在である義務がある。最も優れた教育を受ける機会を生まれながらに有し、最も満ち足りた状態であると言える。故に問おう。貴様は何が出来る?」
兄や姉、王族たちは必死に自分をアピールした。
天文学を修めた者。魔法が有能な者。政治に明るい者。エレンディラを虐めくさった外道どもだが、さすがは王族、しっかりと教育は受けていて、言葉に自信があり、堂々としていた。
自分たちがどんなに他人より優れているのかを説明する言葉に説得力があり、私がもし面接官だったら「採用!」とその場で言ってしまうかもしれない。
「無能めが」
しかし、軍服女性の答えは一種類しか出なかった。
次々に落とされていく首、首、首、首。
後ろの列にいる私の方まで強い血のにおいが漂ってくる。何人か、女性の王族が吐いたが仕方ないことだ。私はといえば、寒くてそっちの方に体がしんどい。
「い、いやぁっ!!」
次、と腕を掴まれた王女が抵抗し叫んだ。これまでそうした反応がなかったわけではないけれど、たまたま担当した騎士が油断したのか、王女は騎士達の腕をするりと抜けてこちらに駆けてくる。逃げ場所などないのにどうしようというのか。
案の定、私の目の前に捕まってしまう。
が。
「お、お前!!薄汚い娼婦の子の、お前がどうしてわたくしより後なのよ!!」
どなたかと思えば、三の王女。
エレンディラを虐めた王女の一人だ。強い憎しみの目でこちらを睨み、私の髪を掴んだ。
「いたっ……」
「こいつを先に連れて行ってよ!こいつは娼婦の子、王族の名誉を汚す家畜以下よ!王族であるわたくしたちより、先に死ぬべきよ!」
どういう理屈か全くわからないが、姉上様の中ではそれが正しいようだ。
自分の番を少しでも遅らせようという心もあるのかもしれない。
私は姉上様に引き摺られ軍服女性の前に出た。