5話目
続きです
キシっキシっキシっ
ゆっくり近付いてくる音に、早く姿を見せろ!という気持ちと、怖いから来て欲しくない気持ちが交差する。
脚が見えた、脚?
裸足だ、くすんだ茶色の汚れた足……
嫌な予感がする。
徐々に姿を現したそれは
ゴムのようで少しカビの生えた肌
潰れた犬のような顔をした化け物だった
二足歩行で歩き回り
爪は鋭く、少し曲がった背。
鋭い目付きでキョロキョロとまるで屋敷の中を巡回するように見渡している。
「なんだよ……あれっ……」
思わず声が漏れるとそいつの耳がピクピクと動き
キョロキョロと何か探しているような動きをする
声が聞こえてしまったのかもしれない。
俺はバッと口元を抑えて息を潜めた。
「ねぇ、犯人は?」
俺が焦っていると、化け物が居るなんて思っても居ない狭山は小声で話しかけてくる。
俺は必死に声を出すなと、自分の口を押えて首を振りジェスチャーする。
「何もいなかったの?」
狭山には伝わって居なかったようだ。
スっと後ろから手が伸び狭山の口を柿崎が押えた。
「!!!」
驚く狭山に柿崎は努めて優しい小さな声で言った。
「狭山さん、向こう側に居るのはちょっと倒せそうにない、静かに。」
ビックリしながらも狭山は頷く。
どうやら柿崎がは少し後ろからあの化け物が見えたようだ。額に汗が見える。
俺はもう一度扉の隙間から化け物の様子を伺った。
キョロキョロと見回った化け物がこちらに向かって来るのが見えた。
「やばいっ……」
思わず声が漏れた
化け物は首を傾げるようにしてこちらに向かってくる。
一歩、また一歩と迫る化け物
どうする?どうしたらいい??
ピクピク、化け物の耳が動いた。
そして階段の方を見るとくるりと方向を変えて階段の方へと向かっていく。
そのまま化け物は階段を登って行った。
しばらく階段を登る音が遠のくまで肩から力が抜けず手を握りしめていた。
やっと音がしなくなり、ホッと息を撫で下ろすと力が抜けて、その場にしゃがみ込んだ。
「なんだよアレ……。」
額の汗を拭いながら呟いた。
「分からない、でも人間じゃないのは確かだと思う……。」
柿崎も同様に息をついて、狭山の口から手を離した。
「ぷッはぁ〜……ねぇ、一体なんだって言うの?二人共そんなに慌てて?そんなに何人も居たの?」
「いや、居たのは1匹だ……。でも人間じゃなかった……。」
「人間じゃないって?熊とか?」
肩をすくめてからかうように言う狭山。
「ちげぇよ!何か変なバケモンが居たんだよ!」
「化け物?何言ってるの?」
「狭山さん、僕も見たんだ……潰れた犬みたいな顔をした二足歩行で鋭い爪の化け物を……。」
「か、柿崎さんまで何言ってるのよ?仮装か何かじゃない?」
「いや、なんて言うか……そんなもんじゃない、気配?が人間じゃ無いんだ……。」
「バカバカしい、仮装に決まってるわ。次にあったら私がぶちのめしてあげるから!そんなに怯えないの!」
「だから!本当に化け物で!」
「はいはい、じゃぁ化け物の居る変な家なんてとっとと出ましょう?窓、探しに行くわよ。」
つきの手を引き狭山は扉を開ける。
キョロキョロして何も居ないことを確認する。
「何も居ないじゃない、ほら!行くわよ!」
俺達が何とも言えない顔になっているが、狭山はお構い無しに先に進んでしまう。
「まてよ!1人で行くな!」
「じゃぁ早く来なさいよ?」
「はぁ、わかったよ……」
「大丈夫?」
起き上がるのに柿崎が手を貸してくれた。
「ありがとうございます。」
「良いんだよ……。」
柿崎の手は冷や汗をかいていて冷たかった。自分も怖いだろうに、こんな時まで優しい。本当に良い人だ。
「早く〜!」
「分かったから大きい声出すな!」
俺達は狭山の後を追った。
読んでくださりありがとうございます
続きも読んでもらえると嬉しいです