4話目
続きです
「それじゃぁ、開けるよ……。」
柿崎がドアノブに手をかけた。
先程犯人が複数かもしれないと話した後なので、狭山は後ろを注意し、俺はつきを少しだけ背に隠す。
柿崎はまず、少しだけ扉を開けて中を確認してから開けた。
「大丈夫、中には誰も居ないみたい。」
俺達はホッと息をする。
「どうやらキッチンのようだよ。」
柿崎が俺達が見やすいようにドアの前から退いた。
古い冷蔵庫が見えて食器棚なんかも見える。
「残念ながら窓とかは無いみたいだよ。」
柿崎は申し訳なさそうに言った。
べつに柿崎のせいでは無いのに、優しい人だなと思った。
「窓は無くても、何か武器になるものとかあるかもしれない!見てみよ!」
「ええ、そうね。麺棒とかあったら殴るのに良いかも……。」
「綿棒なんかで殴っても痛くないだろ?」
俺は先に綿の着いた耳を掃除する綿棒を想像して、それで殴っても?と笑った。
「望月君、多分想像してる綿棒じゃなくて……ほら、木でできた棒の事だよ。麺類とか小麦粉の塊とか伸ばす用の……。」
柿崎がコソッと教えてくれた。
「あー、麺棒!麺棒な!うん、うん!あれは武器になる!!」
「あんた耳かきの方の綿棒想像してたでしょ?」
「うっ、だって、そんな調理器具の名前なんて知らねーよ……。」
「はぁ、まぁいいわ。とりあえず中に入りましょう。」
スタスタと狭山は中に入っていった。
中はそれなりに広いキッチンだった。
流し台が有り、食器棚には沢山の食器。
少し型の古い大き目の冷蔵庫。
奥には大きな棚。
反対側、右側の壁には小さな窓があった。
俺は何となく窓の方に近づいて行った。
窓からは玄関ホールが見えた。
ちょうど俺達が倒れていた所がよく見える。
そういえば向こう側にあった飾り窓も、この辺の位置にあったな……。
マジックミラーってやつか?なんでそんなもんここに着いてるんだ?
窓をじっと見ていると窓枠の下の方が汚れている事に気付いた。
近寄って見てみた……
「!!」
血の跡だった。
まだ赤くて乾いていない、そんなに時間の経って居ない血の跡……
恐る恐る見ていると、何となく手の形に見える。
小さな手が二つ、右と左……
子供の手、血だらけの小さな手が除くように着いている。
血だらけのての子供が、俺達が玄関で寝ているのを見ていた?
ゾッとした、そして今手を繋いでるつきの手も子供の手だと思い、そっと手を見た。
冷や汗が出る……。
手は、綺麗だった。
血はついてなくて、白い小さな可愛らしい手だった。
「どうしたの?」
つきがキョトンとした顔でこちらを見てくる。
「な、何でもないよ……」
苦笑いがもれる。
「あった!麺棒!」
どうやら狭山が麺棒を見つけたらしい。
硬そうな棒を持っている。
「う〜ん、ここは鍵がかかってるみたいだ……」
柿崎は俺達の背丈より少し大きな棚を開けようとしていたようだ。
「鍵?」
「うん……。」
「ねぇ、これだけ大きいしどかしたら後ろに窓とか無いかしら?」
確かにキッチンの奥の面を塞ぐほど大きな棚だ、後ろに窓ぐらいあるかもしれない。
「退かしてみよう!」
3人がかりでどかすことを試みたが、ビクともしなかった……。
「動かねぇなぁ……。」
「そうね……。」
柿崎が壁と棚の間の僅かな隙間を覗こうとする。
「うーん、隙間も無いし……これは退かすの無理そうだね……。」
「仕方ない、他を探そう。」
「今度はつきちゃん、あのお姉ちゃんと手を繋いでくれるか?」
狭山と手を繋ぐことを促す。
「うん!」
つきは元気よく返事をして狭山の手をとる。
心做しか狭山は嬉しそうだ、案外子どもが好きなのかもしれない。
「今度は俺が先頭に立ちますよ。」
「うん、わかった。」
柿崎が後方に下がり真ん中に狭山とつき、俺が先頭で歩き出す。
食堂の扉の前まで来た。
今度は慎重に扉を少し開けて向こう側の様子を伺う。
キシっキシっキシっ
階段の方から音がした、誰か降りてくる。
「おい、階段から誰か来る。」
小声で伝えると二人が息を飲む。
「つきちゃん、シーだよ?」
狭山が人差し指を口元に出してつきに静かにするように言うと、つきは口を手で覆い、こくこくと頷く。
さて、俺達を誘拐した犯人さんはどんな顔のヤツだ……。
息を潜めて扉の隙間から様子を伺う。
額から冷たい汗が出る……。
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