GAME
「本当か?」
ゲーマーの拓哉に、ゲーマー友達の源基から噂のゲームの情報が入った。
今、都会で噂の『デス・ミー』というゲームを入手したという。
そのゲーム、ただのゲームではなく、ゲームオーバーになるとプレイしたものも死ぬという恐ろしいゲームだった。
だが、拓哉と源基はそんな噂、迷信だと信じてはいなかった。
犠牲者も多数いるが、偶然の心臓発作と信じ、噂を嘲笑っていた。
そう、犠牲者全員が、つまり、プレイした全員が心臓発作で亡くなっているのだ。
「今日、お前の家、行っていいか?」
「はい、いいですよ。」
真知田源基。高校2年の男子。ゲーマー歴5年の高校の後輩。去年引っ越してきた後輩だ。
清水拓哉。高校3年の男子。ゲーマー歴8年。一人暮らし。
「すげぇ……これが、あのゲームか……」
ゲームのパッケージは、体が切り裂かれ、倒れて目を剥いてこっちを見つめている少女の画像が載っているゾッとするパッケージだった。
こんなエグい画像を載せ、販売していいのか。と拓哉は一瞬だけ疑問に感じた。
だが、パッケージの片隅に『このゲームには、流血シーン・その他暴力シーンなどが含まれています。』という警告と、『15歳以下プレイ禁止』と表記されていたので、これでいいのか。と思った。
「どこまで進んだんだ?」
「それがまだ、プレイしていないんですよ。」
「なんでだよ。」
「怖かったんですもん。パッケージの迫力に負けてしまいました。」
「なんだよ、チキンだな。」
「普通はそうですよ。1人の部屋でこんな恐ろしいパッケージのゲームなんてできます?」
「できるよ。で、何。どこで買ったの。」
「渋谷のツタヤで中古販売980円でした。」
「安っ!俺も欲しいな。」
「よかったら差し上げます。」
「えっ!何でよ?」
「怖いんですもん。プレイしたら死ぬという噂もありますし。」
「本当にいいのか?」
「はい。いいですよ。」
「ありがとな。」
拓哉はそう言い、財布を取り出した。
「980円だっけ?」
「いやいや、いいですよ。そんなの。僕が先輩にこのゲームを引き取ってもらうんですから。」
「そうか?ありがとな。」
帰り道、拓哉は噂のことが頭に浮かんだ。
「プレイしたら死ぬか……」
その後、その考えを振り払い、ただの噂だと言い聞かせ、自分の住んでいるマンションに向かった。
部屋に入って早々、ゲームを開始した。
あらすじは、【学校からの下校途中、ある少女が誘拐された。捜査に加わり、その少女を助け出せ。】というものだった。
「なんだ、簡単そうじゃん。」
そう呟き、ゲームを進め始めた。
「今は何時だろう。開始したのが午後8時半で……」
拓哉は時間を気にしていた。
「まあ、いいか。明日は土曜だし。」
そう呟き、ゲームを進めていった。
その5時間後、少女が捕らわれているA-8番倉庫に来た。
その中に慎重に入る。
隣には刑事さんが2人いた。
そのとき、銃声が二発聞こえ、隣の刑事2人が血を噴いて倒れた。
『お前は誰だ。俺と闘い、倒せたら少女をお前に渡そう。』
そう画面に表示された。
「ついにラスボスか?」
拓哉は興奮していた。
そして、ついに銃撃戦が始まった。
しかし、相手を何回撃っても相手の体力が減らない。
逆に、自分の体力が減っていっているように感じる。
そのとき、相手がマシンガンで乱れ撃ちを仕掛けてきた。
その攻撃に素早く反応できず、まともに食らい、体力が最初100あったのが13になっている……
「ヤバいな……」
拓哉の息も荒くなっていき、徐々に胸が苦しくなっていった。
現時点ではもう体力が八しかない……
「ハァ……や…ヤバいな……これ……本当なんだ……」
拓哉はもう、噂を信じるしかなかった。
そのとき、自分の死を覚悟した。
もう、体力は2しかない。
「もう……だめか……」
体力、1。
体力……0。
「ヴッ……」
拓哉の心臓に発作が起こった。
苦しい……助けて……誰か……苦しい……苦しい……くるしい……くるし……くる……く…………
“ゲームオーバー”
『今日、午前11時ごろ、高校3年生の清水拓哉さんが自宅で亡くなっているのを管理人さんが見つけ、警察に連絡しました。死因は心臓発作です。』
その画面の明かりに照らされた源基の顔は、まるで別人のようだった。
12年前、都内で少女惨殺事件が起こった。
少女の体はナイフで切り裂かれ、無数のナイフが刺さってままで林に捨てられた。
犯人は未だ不明。
そして、ちょうど10年前、その事件をもとにしたゲームが発売された。
そのゲームの名前は、“デス・ミー”。
発売からわずか3ヵ月後だった。開発に携わった人間全員が少女と同じバラバラ死体で見つかったのは。
そして、ゲームには強い怨念が憑依し、クリアできなかった、つまり、少女を助けられなかった人間を少女が呪い殺していたのだ。
それを仕掛けていたのが、惨殺された少女の兄、真知田源基だった。
転校を繰り返し、親友を装い、ゲームをプレイさせ、殺す。
簡単に行ったら逆恨みだった。
なぜ、自分の妹が、かわいい妹が殺されなければいけないのか。そして、なぜ、それをゲーム化するのか。そうだ、妹と同じ思いをさせてやればいい。死ねばいい。みんな死ねばいい。
そういう狂った人間に成長してしまったのだ。
そしてまた、引越しの手続きをし、今日もどこかの学校で、人間を呪い殺している。
その後、“デス・ミー”は製造中止となったが、ゲームはまだ源基の家にたくさんある。
「あと、何人が犠牲になってくれるかな。」
そう呟き、顔に不気味な笑みを浮かべた。
源基の眼は、狂気に染まっていた。
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