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鳥影2

作者: 京本葉一

 先日、インコらしき小鳥が庭にあらわれ、去っていった。


 黄色と緑が美しいカラフルな小鳥は、人の言葉を発声することができるらしく、明らかに間違ってはいるけれど、使いどころとしては正解だったような、香ばしい台詞をのこしている。


 忘れられない一幕となり、あとになって、してやられた感もあった。


 小鳥が状況を理解して台詞を選び、場を濁したうえで飛び去っていったとは考えにくいため、なんとなくモヤモヤして、飼い主コノヤローとおもったりもした。


 そう、あの小鳥には、飼い主がいたはずだ。


 どこで台詞を覚えたかと疑問をもてば、人に飼われていたと想定するほかない。インコやオウムといった、人の言葉を発声する鳥を愛する、飼い主たちのなかには、自分が好きな台詞を覚えさせようとする、ハッピーな人もいるのだろう。

 日常生活のなかで自然に覚えた可能性もないことはないだろうけれど、どちらにしても、飼い主と接点をもつ気はないため、あまり考えないようにしている。


 あの美しい小鳥は、いったいどこにいるのだろうか。


 あの日以来、パンくずをまきながら、私は待っていた。

 飼い主のもとに帰ったのかもしれず、もう二度と、わが家の庭にあらわれることはないかもしれないのに、

「来年の夏には、黄色い大輪の花が咲かせよう」

 などと言い訳をしながら、ヒマワリの種を買っていたりする。


 去り際の台詞はともかく、愛らしい小鳥であったことは間違いないのだ。私の手に乗り、種をついばむ仕草を想像すると、ついつい期待してしまう。


 今朝もまた、私はカットしたパンの耳を細かくちぎり、庭に出た。


 常連のスズメたちが待機している。

 数が多い。

 いったい何羽ほどいるのだろう。


 ちょっと数をかぞえて──


『2』


 どこからか、落ち着いた声が聞こえる。


『3』


 二羽でも三羽でもないが、いや、数をかぞえている?

 私はぐるりと周囲を見わたし、カラフルな姿をさがした。


『5……7……11』


 黄色と緑が美しい小鳥は、屋根のうえにいた。

 角に立ってこちらを見おろし、どうやら素数をかぞえている。


『13……17……19……23……29』


 そこまでしか覚えていないのか、そんなにスズメがいないことに気づいたのかはわからないが、インコらしきカラフルな小鳥は沈黙して、位置を変えずに待機している。


 私は庭にパンくずをまいて、屋内にもどった。私がいなくなると、スズメたちがいっせいに集まり、パンくずをついばみはじめる。そのなかには、カラフルな小鳥もまじっている。

 窓ガラスをはさんでの観賞タイム。

 大量にまいたつもりでも、群れとなった鳥たちのまえでは、あっという間だ。


 しばらくは地面をつついていたスズメたちも、一羽、二羽と飛びたてば、すぐにみんないなくなる。残ったのは、カラフルな小鳥が一羽だけ。

 黄色と緑が美しい愛らしい小鳥は、塀のうえで羽を休めていた。


 前回と同じパターンではあるけれど、今回はヒマワリの種という切札がある。

 これを食べないという選択はないだろう。

 これを拒絶はしないだろう。

 期待してもよいだろうか。

 手のうえに乗ると信じてよいだろうか。


 私はヒマワリの種を手にのせて、庭に出た。

 塀の上にいるはずの、カラフルな小鳥の姿を探したが、どこにも見あたらない。


 さっきまですぐそこに──

『トリートメントはしているか?』


 どこからか、落ち着いた声と、小さな羽ばたく音が聞こえた。

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