Mr.Sからの罪滅ぼし
それは・・・と言いかけてクインは口をつぐんだ。
「それならエレナ。受け入れるの?Mr.Sの勝手な願いを、こんなおじさんを?」
エレナは笑いながら、ゴウはそんなおじさんじゃないわよなんて呑気に否定した。
「もちろんそのつもりよ。向こうが勝手に罪滅ぼししたいって言ってるなら私は受け入れる。だって何でも願いごとを叶えてくれるのよ?」
エレナの嬉しそうな顔をクインは笑みひとつ浮かべず見つめていた。
「本当に信じて大丈夫なの?だってあいつは」
「いいの。クイン。信じて」
そのときリムジンが急ブレーキをかけて止まったものだからふたりの体は大きく揺れた。
「何?急に」
「ゴウ?」
「家に着いた。エレナ」
エレナは何も言わずじっと運転席を見つめた。
ゴウはエレナとクインに振り向くことなく前を見据えていた。
エレナは小さくため息をついた。
「ゴウって愛想ないでしょ?いつもこんな感じなの」
そう言って、エレナは運転席に身を乗り出した。
「ゴウ、このままクインを家まで送ってあげて」
クインは驚いて、エレナの肩をつかんだ。
「何言ってるのよ、私まだ話が」
エレナはクインに振り向いた。
「話せることは話したし。私の意志は変わらない。クインが気に入らなくてもね。頼んだわよ。ゴウ」
ゴウがエレナに振り向いた。
その時、クインは初めてゴウの顔を見たのだった。
大きな黒い瞳を持ち、すっと高い鼻、それでいて力強くぎゅっと結ばれた口。
ゴウは、クインとエレナよりも5つか6つほど年上に見え、整った顔立ちをしていた。
だから確かにエレナの言うとおりおじさんではないな、と呑気にクインは納得していた。
ゴウはそんなクインを一瞥し、エレナに視線を戻した。
「わかった」
こんなイケメンとならいいかもしれないなんて一瞬クインは思っていたが、すぐにちゃんと我に返った。
「で、でも私」
「いいから、くつろいでいって。じゃあね、クインまた明日」
そう言ってエレナはリムジンを降りた。
「え?」
バタンとドアが閉まってリムジンは再び動き出した。
「え?」
クインを乗せて。