エレナのバッグその2
「ちょっと!エレナ!」
学校の玄関口で声を掛けられたエレナは、後ろを振り向いた。
そこには仁王立ちで、むすっとした顔のクインがいた。
エレナは、にこっと微笑む。
「おはよ。クイン」
クインの態度に全く反応しないエレナにクインは呆れたように息を吐いた。
「おはよ・・・じゃなくて、ちょっと来て」
「え?」
きょとんとした顔のエレナはクインに引っ張られて校舎の裏側へと連れて行かれた。
そこは雑草が伸び放題で特に何の整備もされてはいなかったが登校する生徒たちの声も遠くに聞こえるほど静かな所だった。
「何?どうしたの?」
クインは、満面の笑みで、エレナの両手を握った。
「すごいじゃない!何で言ってくれなかったのよ?」
エレナは相変わらず意味がわからない様子できょとんとした顔のままクインを見つめていた。
「すごいって?何が?」
「そのバッグ」
「これ?」
「そう!それ!Darupaの新作バッグ!」
「へえ、そうなんだ」
「そうなんだって」
「これもしかしてめちゃくちゃ高い?」
「そりゃもう!ゼロがめちゃくちゃたくさんあって・・・って、エレナ、もしかして値段も知らなかったの?」
「ウォーキンシティで一番高い?」
「え?ええ、多分それぐらいはすると思うけど。モールで見た限りではたぶん一番高かったと思うし」
「そう。本当だったのね」
エレナは微笑むと少し目を伏せた。
「本当って?」
「ううん。なんでもない。それより、クイン。そのことが本当なら、今日の授業午前中で終わるわよ」
クインは今言ったエレナの言葉の意味がまったく理解できなかった。
「え?それ、一体どういう」
その時、学校のチャイムが響いた。
「いいから、早く教室行きましょう。遅刻しちゃうわ」