カフェにてその2
クインの目が悲しそうに光った。
「そっか、そうよね、学校中に知れ渡っているものね」
「エレナは大丈夫なの?」
「う、うん。今のところは」
「そう。私に何かできることがあればよかったんだけど」
メルはぎゅっと拳を握り締めた。
(私のこの力がもっと人の役に立てればいいのに)
「おまたせしました」
クインとメルの前にぽかぽかと湯気が立ち込めるホットコーヒーと熱々のサンドがふたつ置かれた。
メルは両手でカップを包み込むとホットコーヒーを一口くちに運んだ。
「メル、変わってない」
メルは驚いてきょとんとした顔をクインに向けた。
「え?」
「いま、自分に何かできることはないかって考えたでしょ?メルの力で」
メルは、目を瞬きながらカップを置いた。
「私、そんな顔に出てた?」
「ううん。前にここでそんな話したじゃない?エレナと三人で」
「私も。ちょうどそのこと思い出してた」
「あの時のメル、自分の力が誰かの力になれればいいのにって話してたでしょ?その時と同じように思いつめた顔してる」
「結局、顔に出てるんじゃない」
クインは笑った。
「まあ、そうなんだけど。でも私たちがエレナにできることはもうないわ。あんな結末になったのもエレナのお父さんが決めたことだし。エレナにだってどうしようもできなかったのよ。それに、今は学校が大変なことになっているしね」
クインは、サンドをひとつ手に取って一口。
自然に顔が笑顔になって美味しそうに味わっている。
だが、メルはそんなクインを不思議そうに見つめていた。
「学校が?今日の休校のこと?」
クインはサンドを飲み込む。
「今日だけじゃないじゃない。これでもう三日目よ」
メルがきょとんとした顔をクインに向けるものだからクインは首をかしげた。
「メル、知らなかったの?学校はもう三日連続で意味もなく休校になっているのよ」
「三日も!?なんでそんな」
「もしかして、学校を休んでいたの?この二日間」
「ううん。二日どころじゃない。一週間よ。しかも学校というよりは外にすら出ていなかったの」
「一週間!?メル、まさかまた不運の」
「そう。一週間前に不運のジンクスを感じてからずっと嫌な感じが抜けなくて。でも、今朝幸運のジンクスを感じてやっと外に出る気になった。それなのに学校は休校してるし」
「メルのジンクスが外れたってことは・・・ないわね」
メルはうなずいた。
「私が感じるジンクスは絶対に外れないもの。だから今朝のジンクスは一体なんだったのかしら」
クインは腕を組むとうーんと唸った。
メルはそんなクインの考え込む姿を見つめて微笑んだ。
「もしかして、こうしてクインとお茶することだったのかも」
「え?まさか、ただ喋ってるだけじゃない」
「うん。でも、なんだかそんな気がするのよ」
メルはそう言って微笑んだが、心の中に何かモヤがかかっている気持ちになった。
(なんでだろう。せっかく幸運のジンクスを感じたのに)
メルは皿の上に残ったサンドを見つめた。
とっくに冷めてしまったサンドに手を伸ばしたメルの心の中はさらにモヤがかかった様な気持ちになった。