Mr.Sの屋敷
クインは再び、窓の景色を見つめた。
いつのまにかウォーキンシティの市街地を離れて郊外のだだっ広い畑のあるのどかそうな田舎町にまで来ていた。
(こんなところにあいつが?)
次第にポツポツと残っていた家も消えて行き、小さな林の中にリムジンが入っていく。
全くもって似合わない。
リムジンに田舎なんて、こんな林なんて。
だが、正面に見えてきた建物はそんな思いを吹き飛ばす。
「何なの?ここ」
思わずクインはそう言って運転席に身を乗り出した。
「ここがMr.Sの屋敷だ」
それは、屋敷というよりも巨大な城だった。
高くそびえ立つ塔をいくつも持ち、大きな扉がいくつもあった。
簡単に人を寄せ付けない荘厳な雰囲気が漂っていて、まるで王様でも住んでいるような。
(いや、ちがう)
「ここに住んでいるの?世界一の詐欺師が」
ゴウは、一瞬クインをルームミラーで見つめてそれからすぐ視線を前に戻した。
リムジンは城の中へと吸い込まれていく。
歩くたびに音が響く。
すこし声を出しただけで反響する。
天井は高く、人が住むにはあまりにも落ち着けない、そんな場所だなんてクインは思った。
「こっちだ」
そう言ってゴウは荘厳すぎる屋敷の奥へと入っていった。
そこはまたもや格調高い廊下だった。
クインはきょろきょろと廊下を見回した。
赤いカーペットが敷かれた廊下にはほこりひとつ落ちていない。
壁にはいくつも大きな絵が飾られていた。
(これもきっとあくどいやり方で手に入れたのね)
クインは前を歩くゴウを見つめた。
ゴウはスタスタと歩いていく。
「ねえ、どこまで行くの?」
そんなクインの問いにゴウは答えない。
クインとゴウは広間に出た。
目の前には2階、3階へと続くであろう巨大な階段があった。
そこから足音が聞こえてくる。
クインは自分の心臓の音が大きくなるのを感じていた。
(あいつが来)
「ねえ、どこ見てんの?」
クインの背筋に寒気が走った。
驚いて後ろを振り返ったクインの瞳にMr.Sの顔が映る。