1/65
はじまり
バタン。
勢いよく扉が閉まった。
あいつの話が本当ならここから早く逃げなければ。
俺にはこんなこと向いていなかった。
あの子の言うとおり、真面目に働いて取り戻せばよかったんだ。
復讐なんて何も残らない。
何も得るものなんてなかった。
でもここからだ。
ここからまた始めるんだ。
聞こえる。
サイレンの音だ。
早く。早く逃げよう。
空、青っ。
ああ。今まで人殺しだけは避けてきたのに。
まさか、こんなことになるなんて。
あの子の顔、あの顔は
「・・・」
なんだ?
「聞きたいことがある」
なんだこいつ?
「もし、今たいがいの願い事が叶うとしたら、何を望む?」
・・・へえ、なんだか
おもしろくなりそうだ。