07:最上級魔法
今は昼過ぎの放課後、俺は聖アストリア魔法学園の演習場にいる。
魔法の練習をしていた時、俺の何気ない一言に怒ったシーラが魔力を高めて文字通りの全力を出そうとしていた。
「喰らわせてあげるわ。最上級魔法をね。」
そう言うとより一層濃い魔力が集まっていく。
フィンが慌てて止めようとするも。
「や、やめなよ。こんなとこで最上級魔法なんて撃ったら大変なことになるよ。」
「大丈夫よ。私は完璧に出力を調整できるのよ。ただ、近くにいたら危ないかもね。」
それを聞いてフィンと周りにいた観衆たちはすぐさま避難する。
「に、逃げろ。巻き込まれるぞ。」
「「「うわぁぁぁ。」」」
近くには俺とシーラのみになった。
(カッコいいとか思ってたのもきっとなんかの間違いよ。)
シーラは心の中でそう言い聞かせると最上級魔法を撃つために集中した。
(なんかシーラすごい魔力集めてるな。まあ、強い攻撃来るなら次はちょっと魔力多めに出して守るか。)
俺はそんなこと思いながら体の魔力を外に出し始めて盾のように囲み始めた。
「我が名はシーラ。シーラの名の元に命ず。我が体、我が魔力を喰らいて顕現せよ。故に我は創造す。創るは自分、壊すは世界。理を砕いて我が力となれ。アデラスプラッシュ!」
シーラの詠唱とともにもうひとつの世界が俺を飲み込もうと迫ってくる。
俺は先程から作っていた魔力障壁の盾にギュッと魔力を入れ込んだ。
アデラスプラッシュは俺の魔力の盾に当たると魔力そのものに干渉し概念そのものを歪め、俺の近くの空間全体を造っては壊し、壊しては創られた。
それはまるで生き物のように貪り尽くすように空間自体を別世界とした魔法。
シーラの貯めた魔力が尽きるまで攻撃は続いた。
しばらくして最上級魔法の魔力は切れ、別世界と化した空間も消えていった。
(やばいわ…ど、どうしよう。やりすぎちゃったわ。)
「わたし、なんてことを…」
シーラはついやってしまったと酷く動揺していた。
(学園では最上級魔法を封印するつもりだったのに。)
別離された空間が戻ってきた。
そこに残されていたのは、原型が何かすらもわからず辺りに飛び散った肉片……
などでは無く。
最強の魔法、最上級魔法を受けた後と前で全く様子が変わっていないイナロセが立っていた。
「う、うそ。なぜ私のアデラスプラッシュをまともに受けたのに。」
「いやー、びっくりしたよ。なんか閉じ込められて出れないかと思ったよ。」
呑気な答えにシーラは歯噛みしてさらに問い詰めた。
さらに遠くで見ていた周りの人達も口々に言った。
「どうやって攻撃を防いだの?」
「最上級魔法に最上級魔法以外の防ぎ方はねえ。あいつも三大名家ってことか?」
「防御系の最上級魔法てことか?」
「攻撃系の最上級魔法で相殺したのかもしれないぞ。」
「いや、俺魔法使えないから。」
「ふん。そうやって余裕ぶってるといいわ。もう貴方の魔力はスッカラカンでしょうね。」
「バーニングファイヤー」
「ほいよ。」
飛んできた紅い炎の塊を魔力障壁で防いだ。
その瞬間シーラは絶句してただ見つめるだけになった。
「どう、して…」
シーラの代わりに周りにいた連中が口を開いた。
「あいつ、最上級魔法を防いでいたのにどんな魔力量してんだよ。」
「な、なんだあいつの魔力量。」
周りの生徒達は驚愕の表情を浮かべている。
そりゃそうだ、世界でも数人しか使えなくて同じ最上級魔法以外に最上級魔法を防ぐ術はもはやないとまで言われてるにもかかわらず、俺の魔力障壁のみで防いでしまってさらに続いた上級魔法も防いでしまったんだから。
「魔力障壁って嘘だろそんなもん…。俺なんてファイヤーボールですら防げないぞ。」
魔力障壁は使用した魔力量によって強度が決まる。
より多く魔力を注げばどんどん固くなる。
「馬鹿言え、ファイヤーボールを防ぐために魔力障壁をつくるより反魔法を放ったほうが魔力消費がすくねぇ。なのにあいつ絶対無敵の最上級魔法を魔力障壁だけで完璧に防いだんだよ。」
「あいつの魔力量どんなになってんだよ!」
「ていうかあいつ、なんで魔力障壁しか使ってないんだよ。」
「あ、俺魔法知らねえから、使えないぞ。」
「「「「「えぇーーー!!」」」」」
その場にいた生徒達と向かいにいたシーラも驚きを隠せていなかった。
「はぁ、さっきから俺言ってたじゃん。」
その場にへたりこんだシーラ、それを合図に俺達の戦いは終わりを告げたのだった。
どうもユウユウハです。
本日も無事更新出来ました!
一応毎日更新をノルマとして進めていくつもりです。
本作品を面白いとか続き読みたいとか言ってくれると嬉しいです(>_<)
是非是非続く展開を楽しみにしていて下さい。
ちょっとこっからの構想はもう出来てるんで頭の中では凄い楽しいことになっちゃってますよw