05:模擬魔法戦
俺は今クラスメイト達と演習場にいる。
なぜこうなったか、担任のラーナ=スラング先生が初対面でいきなり魔法模擬戦をすると言い出したからだ。
俺らは1人ずつ先生と魔法の撃ち合いをしていった。
先生は最小限の魔法で次々と生徒達に1本取っていった。
連戦のはずだが、先生に疲労の色はない。
「みんないい魔法使えてるけど実践での活かし方はまだまだね。ふふっ。」
ラーナ先生は楽しそうにそう言うと魔法を なってまた1本取った。
「じゃあ次はシーラ=ガンゼットさん。」
「はい。」
シーラのが呼ばれて先生と対面する。
この模擬魔法戦では中級魔法以下のレベルの魔法のみに制限されている。
その中で実践経験豊富な先生にシーラはどうやって立ち向かっていくのか非常に気になった。
先制攻撃を仕掛けたのはシーラだった。
「ファイヤーランス」
燃える炎の槍が鋭い速さで先生へと向かっていく。
「ミストウォール」
シーラの炎属性の中級魔法攻撃に対し、水属性の初級魔法を霧状で縦に使うことで威力を弱め相殺した。
反魔法は相性がよければ限りなく弱い魔法でも止められる。
シーラは歯噛みして次の魔法を放つ。
「くっ、これなら。サンダーボルト」
先生に直撃して雷撃音が響いた。
「ふふふ。先生から1本取れました。」
しかし、シーラがそう言った瞬間後ろから先生が魔法を放った。
「はい残念。ショックボルト」
「ひうっ。」
シーラは先生の初級魔法の不意打ちを喰らって倒れた。
先生はシーラに回復魔法をかけながら言った。
「貴方達の攻撃は単調すぎるのよ。攻撃は相手の隙をついたり油断を誘うものよ。」
「うっ…で、でも先生はサンダーボルトをどうやって避けたのですか?」
「ミストウォーターで私が隠れた時に霧の反射の魔法を利用して後ろに回り込んでいたのよ。」
「せめて、上級魔法さえ使えれば。」
「シーラさん。魔法はその時その時に制限があったりするものよ。一流の魔法使いは強い魔法が使えるだけじゃなれないのよ。どんな環境にも最大限の力を発揮出来る魔法使いじゃなきゃね。」
シーラははその言葉を受け止め、悔しそうにしながらもこちらに戻ってきた。
「シーラお疲れさま。」
落ち込んだシーラに声をかけるとシーラは俺に話しかけてきた。
「先生は実践能力が高すぎるわ。貴方はどうやって戦う気?」
シーラは期待した目でこちらの顔を覗き込んでくる。
俺にやれることなどたかが知れているというのに。
「とりあえず魔力が尽きるまで攻撃するしかないよ。」
そう言うとシーラは呆れたようにため息をついて言った。
「ラーナ先生に無策で魔法を撃ち続けるのは得策じゃないわよ。」
そんな事言われても他にどうも出来ない。
防御に徹するより攻撃してた方が気分が楽だしな。
「次、イナロセ=ユウスエイくん。」
お、俺の番か。とりあえず善処しよう。
「よろしくお願いします。」
「うん。さあ、かかってきていいわよ。」
んー、魔力を出した攻撃をするしかないんだけどな。
「まりょくボール」
俺がそう言って魔力の塊を放つと先生は驚いた表情を浮かべた。
「!?」
魔力弾は肩へと命中した。
「魔法陣を通さない魔法?それとも体内で魔法陣を隠してた?」
何かブツブツ独り言を言っているが、気にせずに攻撃を繰り出すことにした。
「まりょくボール」
「うっ、魔法陣が見えないから反魔法を撃てないわ。それにこの攻撃は何?どう見ても初級魔法レベルなのにとんでもない威力してるわ。」
ラーナ先生は避けるのに必死になっていた。俺は手を止めずに攻撃し続けた。
「まりょくボール、まりょくボール、まりょくボール」
「なんて、量なの。でもこれで先生に当ててダウンを取って早期決着を狙ってるのね。長期戦になれば魔力切れになって先生の勝ちよ。」
そしてしばらく時間が経ち、、
「まりょくボールまりょくボールまりょくボール」
「はあはあ、ちょ、なんではあはあ、まだ魔力尽きないの?」
ラーナ先生はもう体力の限界で俺の攻撃が当たる前にバタりと倒れた。
「え、えっとこれ俺の勝ちでいいんですか?」
「ハァハァ、あなたの勝ちでいいから…ハァハァ、飲み物を貰えるかしら。」
ラーナ先生に飲み物を渡すと、一気に飲み干してこちらを睨んできた。
「先生をこんなに動かすなんて、先生魔法1回も撃てなかったじゃないのよ。」
そんな事言われても俺としてはこれしかない。
「まあいいわ。お互い相手のスタミナ切れを狙ってたみたいだし、あなたのスタミナが先生の体力より強かったってことね。私の負けよ。」
「「「うぉーーー!」」」
後ろでクラスメイト達が騒いでいる。
「あいつ勝ちやがった。」
「先生に防御すらさせなかったぞ。」
「俺入学試験であいつ見たんだけどよ、強い魔法使ってたぞ。」
「先生に勝って俺に惚れてもらう計画がァ。」
みんな驚きを隠せない様子だった。最後の方なんか違うこと言ってたやついたけど。
「じゃあ次で最後ね。ミキヤ=シルハランくん。」
俺はみんなから賛美の声をかけられながら最後の模擬戦を見てた。
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「せ、先生が完封されて負けるなんて…」
「あれが三大名家シルハラン家の嫡男にして神童とまで言われる男か。」
ミキヤ=シルハランはラーナ先生の魔法攻撃を全て受けきり、たった一撃でそれも初級魔法の超低難易度ファイヤーボールで倒した。
それを見てみんな唖然として演習場は静寂に包まれた。
どうもユウユウハです。
今回はあんまり乗り切れずに上げてしまい申し訳ございません。
新キャラの三大名家シルハラン家の男の子
一体このあとの展開はどうなるんでしょうね、私にも分かりません。
次話更新は2日後までにはします。
また次でお会いしましょう!