01:魔法学園
「な、なんだこいつの魔力量。」
周りの生徒達は驚愕の表情を浮かべている。
そりゃそうだ、世界でも数人しか使えなくて防ぐ術はもはやないとまで言われてる最上級魔法を俺の魔力障壁のみで防いでしまったんだからな。
「魔力障壁って嘘だろそんなもん…。俺なんてファイヤーボールですら防げないぞ。」
魔力障壁は使用した魔力量によって強度が決まる。より多く魔力を注げばどんどん固くなる。
「馬鹿言え、ファイヤーボールを防ぐために魔力障壁をつくるより反魔法を放ったほうが魔力消費がすくねぇ。なのにあいつ絶対無敵の最上級魔法を魔力障壁だけで完璧に防いだんだよ。」
「あいつの魔力量どんなになってんだよ!」
「ていうかあいつ、なんで魔力障壁しか使ってないんだよ。」
「あ、俺魔法知らねえから。」
「「「「「えぇーーー!!」」」」」
その場にいた生徒達と対戦相手の女の子も驚きを隠せていなかった。
「はぁ、最初に俺言ったじゃん。」
溜息をつきながら聖アストリア魔法学園に入ってきたきた時のことのことを思い出した。
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聖アストリア魔法学園、それはこのアストリア王国の中心都市にある王国一の魔法術師の卵が集まる魔法学校のことである。
そして今日がその聖アストリア魔法学園の入学試験日である。
ふとそんなことを思いながら俺は試験の受付を済ませた。
受付を終えて奥へ行くと闘技場のような所へと出た。
周りを見るとみんな黒のマントを羽織りスタッフと言われる杖を持って観戦席に座っていた。
俺もマントと杖を持ち空いてる席へと腰をかけた。
受付時間も終わりになる頃、試験官と思わしき人物が闘技場の中央で言った。
「ここにいる者を順番に試験していく。自分の名前が呼ばれたら前へ出ろ。試験内容はこの魔法の石に1番得意な魔法を放て。魔法の難易度や規模などを審査室にあるペアリングした魔法石からの情報で合否が決まる。」
静寂の中、息を呑む音が多く聞こえた。みんなに緊張が走ってるのがわかる。
しかし、静寂を破るように1人の少女が言った。
「すみません。得意魔法が攻撃では無い場合は正当に評価されるのでしょうか?」
金髪のスラリとした長い髪の少女が試験官に向かって質問した。傍から見てても可愛いと思う。周りの人達も息を呑むのが聞こえる。少女はそんな視線を気にせずに試験官をじっと見た。
「いい質問だ。心配することは無い。攻撃魔法なら強度、威力、支援魔法なら回復量、強化力など正当に評価される。また、それ以外でも石への動作を起こせば石が魔法力を判断してくれる。」
「分かりました。ありがとうございます。」
そう言って少女は座った。
「では、始めるとするか。まずはフィン=ルーン」
「は、はい!ファ、ファイヤーボール!」
こうして各々得意魔法を魔法の石へ向かって撃っていった。俺は試験を受けているもの達を見つつどこかぼーっとしていた。学校楽しいかなとか友達とか出来るといいなとか考えていた。
そして、俺の番が回ってきた。
「次、イナロセ=ユウスエイ」
「はい。」
ふぅとひとまず深呼吸して俺の得意魔法、いや魔法と言えるようなものかも怪しいが魔力をそのまま石へ叩きつけた。
「まりょくボール」
・・・センスがない名前とともに。だって仕方ないじゃん、適当に魔法っぽくしないとみんな見てるし、ほかの魔法知らないし。
しかし、そんな俺の心とは別に周りの反応は大きかった。
「い、今の上級魔法のウィンドエッジじゃないか?」
「何言ってんだよ。上級魔法なんてそんな簡単に使えるわけないだろ。」
「魔法出す時に見える魔法陣が見えなかったんだけど、隠蔽魔法まで使える?」
「まじかよ、隠蔽魔法なんて上級魔法の中じゃ相当難しいって聞くぜ。」
「つまりあいつはそれほどの魔法知識と魔法力があるってことだろ。」
え?ただの魔力弾ですけど…なんかすごい注目されてんですけどぉぉぉ。
そんな俺の心はつゆ知らず試験は続いた。
「次、シーラ=ガンゼット」
「はい。」
俺は観戦席の方に歩くと、シーラ=ガンゼットと言う蒼い髪の細身の女の子とすれ違う時に立ち止まって彼女が言った。
「なかなかの魔法ね、上級魔法をマルチでできるなんて。私も負けないわよ。私はシーラ=ガンゼット、シーラと呼んでいいわよ。よろしく、ええと、イナロセくんでいいのかしら?」
「え?うん、よろしくシーラ。君も頑張ってね。」
そう声をかけると足早に観戦席に座った。
観戦席からシーラを見る。顔もなかなか可愛くて人気も出そうな可愛らしさがある。そんな彼女が杖を振って詠唱に入った。シーラは詠唱魔法使うのか。
「我が名はシーラ。シーラの名の元に命ず。我が体、我が魔力を喰らいて顕現せよ。故に我は創造す。創るは自分、壊すは世界。理を砕いて我が力となれ。アデラスプラッシュ!」
魔法の石への攻撃は魔法の石という概念さえも歪めた創造と破壊の一撃。創っては滅び、滅びては創られる。術者の意志によって。魔法が終わった頃には、観戦席では大盛り上がりであった。
「あれは最上級魔法でありますよ!」
「最上級魔法なんて使えるやつがこの学園に来るのかよ…」
「て、天才が…」
最上級魔法か、どうりでみんなの魔法よりもすごいきれいだなと思ったわけだ。
まあどのくらいすごいのか分からんけど。
そういって俺は学園に入れたらのことが楽しみで学園生活の妄想にふけっていた。
魔法を放ったシーラは歓声の中、全く驚いていない俺を見て驚愕した。
(私の魔法を大したことないと思ってるってこと?)
ただ魔法のことを知らないだけなのだが、そんなことシーラは知ることもなかった。
(ふふっ、退屈だと思っていた学園生活も楽しみになってきましたわ。)
この時まさかあんなことになるなんて学園生活の妄想してる今の俺には知る由もなかった。
初めて書きました。
楽しんでもらえると嬉しいです。
続きも書いてみます。