第6話 厨二病の痛い男子との邂逅。 完結編
たったったった。
学校の外へ向かう私と魔王は、必死だ。
汗がだくだくになって、恥ずかしさを忘れるほどだった。
魔王の顔も真剣だった。
私は魔王の手を離さず、演技でノッてるつもりだったが、やがてマジになってしまった。
「ここが玄関よ、そんでどうすんの?」
「まだだ、まだ外じゃない!」
「えー外まで行かなきゃいけないの〜めんどくさいわね」
「帝魔王様の命令だ、絶対に連れて行く」
私と魔王は再び走り始める。
手は離さない。
異世界への移動というものだが、実際そんなことができるなんて信じられない。
私は半信半疑だった。
でも半分信じてるのだから、異世界がどんなところなのか楽しみだ。
ーー洗脳されてしまったのだろうか、沙邏は、周りのクラスメイトにもドン引きするほど、魔王に魅了されてしまった。
これじゃあ、沙邏は美術少女じゃなくて厨二病少女だ。
「ついた」
校庭のグラウンドだった。
真ん中の砂場へ移動し、教師の目を避けるように左右方向を確認してから、魔王は私の方を向いた。
「早速呪文を唱えるから、お前は下がっていろ」
私は、魔王の言われたように、後ろへ下がった。
そして、魔王は深呼吸をして、自分の持つ杖を使い、術式の魔方陣を書き始める。
(-57749,33233)
x軸とy軸を表しているようだった。
この数値は、異世界の現在位置、つまり移動場所を書いて、それに合わせてワープするっていう単純なものだ。
この情報は、おととい、魔王から聞いた。
私は、魔王の情報を半分信じているのだから、半分忠実に覚えてるんだ。
次に、魔王は、座標グラフを魔方陣式に書き始める。
これは、三角形と反三角形をくっつけた一般的な魔方陣だ。
そして、最後に、魔方陣周辺に暗号化魔術を描き始める。
暗号化魔術は、自分の願い事、つまり、今は異世界転移。
まずはローマ字で書く。
魔王はこう書いた。
Isekaimaouteikokusekaihetensoutenkaiwokaisi
異世界魔王帝国世界へ転送展開を開始。
そして、魔王はその言葉を目を瞑りながら喋る。
「異世界魔王帝国世界へ転送展開を開始......」
何度も何度も同じ言葉を語りかける。
それを5分ほど繰り返し、私は呆れていた。
「はぁ...こんなんで異世界に行けるわけないじゃん」
半信半疑の半疑が強くなってしまった。
やっぱり魔法なんてないんだよ。
ーー信じようと思う人には事実を教えてくれる。
だけど、信じない者には、現実を思い知らされるのだ。
沙邏は、現実を見たのである。
魔法なんてない。
1週間洗脳されていたことを後悔してしまった。
ていうか、信じる方がアホだっちゅうに。
「よし、術式終了。 あと30秒以内にこの魔方陣の中に入って、俺を手を再び繋げ」
私は、はぁ...ってため息をつきながら、早く終わってくれないかなぁって気持ちを持ちながら、魔王のいいなりになった。
あと20秒か。
「光が少し見えてきたぞ」
私は、半疑が完全なる疑の心を持つようになった。
私は呆れつつ下を見つめる。
「!?」
しかし、私の見た現実は、事実でもなく現実でもなかった。
魔王が書いた魔方陣周辺に、光の塊が集まってきている。
太陽の暑さが、全て私と魔王に当たってしまうほど暑かった。
例えるなら、自分が、死んだり溶けたりしない炎に飲まれる気分だ。
残り10秒。
信じられない現実と事実が、完全に具現化してしまった。
暗黒の闇まで現れてしまい、光と闇がバランスを崩し始めた。
「これは、いったい......?」
「これこそ、魔術の儀式。 異世界転移の方法で地球上最後に残された技だ」
「あなたは......何者なの?」
魔王は私の方を振り向いて、強さを象徴させる声で、目を閉じながら、語りかける。
「私は......この地球で生まれた存在ではな......」
時間だ。
もう0秒だ。
私と魔王は、手を強く握りしめ、魔王はもう片方の手で如何わしい紙を必死に守っていた。
この変態め、まじ意味わからん。
ーーそして、沙邏と魔王は、異世界。 魔王帝国へ転移した。
最初に見えた現実は、ガラス状の闇の世界だ。
周りは全て宇宙のような闇。
地面はガラス。 柱もガラス。
そして、奥底には、水色と黒色の水晶でできた椅子と、闇の身体を持った帝魔王がいた。
これらは全て現実だ。
「こんにちは、初めまして、私は沙邏といいます」
帝魔王は、椅子から離れ、私の方に近ずいてくる。
「ハジメマシテ、ワレノナマエハテイマオウ、オヌシハエロイエヲカクテンサイナノダロウ、サッソクミセテクレ」
私は、少し後ろに下がり心の中で引いてしまった。
魔王とか帝魔王って魔王族は変態が多いのかな?
「こちらになります」
私が後ろへ下がり、魔王が代わりに私の書いたエロい絵を差し出した。
すると......
「コ......コレハ.......コレハアアアアアアアアアアア!!!!!!」
ーー絶対終わるって!編へ続く。