第62話 〜逃避〜 いつかの日
いつかの日、私は世界をこの手で
移し替えられるような夢を見ていた。
私が、私だけが描いた世界。
そこには、幸せそうにしている
私や、私の家族、そして仲間。
他愛もないような日常をこの手で描いて
私だけの世界を作っていた。
何気ない日常、そして新しく入った転校生。
体育祭のためにみんなが真剣に頑張って
私も頑張って、そんな風に日常を刻みながら
生きる世界。
異世界という存在も、現世界という存在も
全て、私の力があれば
全て改変することができる。
そんな夢をいつかの日見ていた。
できることなら、私だけの世界を作って
そこに住みたい。
と、今の私は思う。
こんな救いのない世界で、生きていても仕方ないのだから。
「...私なら、生き返らせられるのかな」
私は、絵を具現させることができる。
だから、絵で、模型して
亡くなった者を生き返らせることも
できるのではないか。
「人格はモデリングして、絵は模型、完全立体に造られた絵、これを使えばきっと...」
私は未奈ちゃんを想像して絵を描いた。
人格はこれまでの日々を参考に作り出して
立体紙を利用して、蘇らせてみた。
「...」
だけど、絵は絵でしかなく。
話すこともなければ動くこともない。
でも目の前にはあの時の未奈ちゃんがそこにいた。
そして、声がなくても、そこに命があった。
私の絵で魂を移した。
命ある者には心がある。
だから、私は心で未奈ちゃんを感じていたい。
「できた」
私は絵で実体化された未奈ちゃんを見て
自然と涙が溢れる。
生きていてくれたんだ。
私にはいたんだ。
そこに生きているんだ。
私は未奈ちゃんを生み出した。
そして、未奈ちゃんを抱きしめた。
肌の感触、暖かな身体。
それを感じることができた。
「あったかいな....」
「...」
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「花奏、あれから魔王はどうしたか知ってるか?」
「ううん...沙羅さんも未奈さんが亡くなってから
ずっとここに来てないし...」
「早く探さないとな、なんだか嫌な気配がするんだ」
帝魔王は魔王に何かあったと、察知している。
なぜなら、魔王がこんなに
帰ってこないことはないからだ。
「魔王さんに限って、そんなことはないよ...
私...魔王さんのこと信じてるから」
「...そうだな」
魔王は本当の意味で魔王となってしまったことを
花奏は知らない。
だから、信じ続けている。
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そして数日後、杉浦と美音は
魔王や水陽の場所を発見した。
エタニアルビル。
水陽は魔王の心を奪い、一緒になった。
だけど、そんなこと終わらせようと
杉浦も美音もそれぞれ力を合わせて
ビルの中に侵入しようとしていた。
「ここが二人がいるビルか...」
「うん、情報屋さんに頼って、見つけたんだ
武器の準備は大丈夫?」
「ああ、もちろん、無理だとわかっていても
俺たちはここまで来たんだ
だから、何かあったときは俺が君を守るよ」
「ううん...私もあなたを守るよ
そして、死ぬときは一緒...」
「っふふ...なんかそう言われると嬉しくてにやけちゃうな」
「行こっか」
「ああ!」
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「水陽様!申し訳ございません...!
お二人の居場所...特定されてしまいました...!」
水陽の部下の少女は
居場所を特定されないように
GPSを隠していた。
しかし、部下の不手際で情報が漏れ...
正確には情報屋がスパイとなり
水陽を対峙しようとしていたのだった。
「内部にスパイがいたってことでしょう
だったらあなたもスパイかもしれないわね」
「...!?」
「疑わしきは罰せよ、よく言うでしょ?」
「おい、水陽、彼女は何もしてないはずだぞ...
何をするつもりなんだ」
「魔王さん、あなたは少し静かにしてください
私は、スパイを見抜けなかったスパイに制裁をしなくちゃいけないのですから」
「おい...やめろよ...」
水陽は皿を用意した。
そこには米粒が用意されていた。
そして水陽はそのご飯にインクをかけた。
赤色に染められたインク。
「この私が作ったインクたっぷりのカレーを
食べさせてあげますね」
水陽は部下にインクの入ったカレーを
口に入れさせようとした。
「ほら、美味しいって言ってみなさいよ
スパイのスパイスが入ったカレーよ
スパイだけにね、あはははははははははははは」
少女は顔がインクに汚され
口の中にはインクの味がした米粒が口の中を支配した。
「わたしは...やってません...!やってないです...!!」
「まだ言うんですか」
「いやあああああああ!!」
「もうやめろよっ!!」
魔王は水陽の手を掴んだ。
水陽はその手を振って、払い除けた。
「邪魔しないでください、私は部下に教育しているだけなのですから」
その後、水陽は部下に対する
八つ当たりとも言える行為を何度も繰り返し
気が済んだら牢屋に閉じ込めた。
やっていない。
というのは事実なのに、自分の部下がなにか不祥を犯したら、連帯責任ともいえる行動をする。
魔王はそんな水陽を見て
やめろ、と怒るが
水陽はたとえ魔王の言葉だろうと聞き入れない。
自分を信用しない、自分を裏切るような部下は死んで当然だと思っているのだから。
「わかったでしょ、私の教育理念は連帯と冷徹
優しさで世界を統治できるわけがない
MKKという権力と財力があれば
あなたも同じことができます
だってあなたもMKKですからね」
「...」
ーーーそこまでだ!魔王...水陽!!!
「誰!?」
「お前らは...」
「黒木さん...私と杉浦くんは
あなたに帰ってきて欲しいからここまで来ました」
「そうだ、こんな奴と一緒にいたら
あんたは一生後悔する!!」
「...」
「勝手なこと言わないでもらえます?」
水陽は刀を取り出し、刃先を二人へ向ける。
「魔王さんは私と生きるんです、誰にも渡しません」
「...渡してくれなくていいです、だけど私たちは黒木さんを連れ戻します!!」
美音と杉浦は武器を握った。
街で買ったアイアンロッド。
フレイムソード。
最強の武器ってわけじゃないし
平凡な武器ではあるけれど、それでも
二人は勇気がある、無謀な勇気が。
続く...




