第60話 〜侵攻される世界〜 裏切り
薄暗い何もない部屋の中。
私は知らない男に襲われている。
服を脱がされ、顔を擦られている。
「水陽様の言った通り、身体はチビだが
顔はなかなかのもんだな」
「...うるさい...!!見ないで!離してよ!!!」
親友を守れず、ただ自分の惨めな姿を
男に曝け出して、私は壊れていく。
誰とも経験したことのないような行為を
男にされ、崩れていく。
「...ごめんね...未奈ちゃん...」
私は目から溢れる雫を抑えることができなかった。
何も守れず、光を失う世界。
あの子がいない世界に希望を見出せない...
私はもうダメなんだ。
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「もうやめろ」
魔王は、水陽との契約通り
男を止めた。
止めた時には沙羅の身体は崩壊していた。
沙羅の身体には何かの液体で服を汚す。
もう男は満足した様子だった。
「はいよ、もうそろそろ満足したしな」
男は悪びれる様子もなく、あっさりこの場を去っていった。
今残されているのは
魔王と水陽、そして沙羅だけだ。
「...魔王...」
沙羅は魔王に身体を寄せて、怖かった。
と、涙を流す。
魔王は沙羅を突き放した。
「どうして...?」
「沙羅、もう俺はお前のそばには居られない、早くここから出ていってほしい」
「一緒に帰れないの...?」
「俺は水陽についていくことにしたんだ、お前のためにね」
「そういうことです、魔王さんが私に着いてきてくれたならもう私はあなたなんかに用はありません」
魔王は水陽と手を繋いで
魔王の頬を撫でた。
「魔王...目を冷ましてよ、どうしてこんな奴と一緒になるの?何かの冗談でしょ...?」
「冗談なんかじゃない、俺はお前のために水陽と行くことにしたんだ」
「魔王さんは悪人にぴったりなんですよ
人殺しの息子があなたみたいな偽善につくわけないでしょ」
「...」
「沙羅、今度お前と会う時は敵同士だ
もう2度とわかりあうことはない」
「...っ!!!」
沙羅は魔王の顔を引っ叩いた。
親友は死に、沙羅は男に汚され
そして魔王には裏切られ、何もかも失った少女には
もう希望すら残されていない。
戦う気力も、生きる意味も見つからない。
「魔王にまで裏切られたら...私は何を信じて生きていけばいいんだよ!!!」
その声も、攻撃も、魔王にはもう届かない。
「お前一人で生きていけばいいだろう」
「さあ、もうお話は終わりです、部外者は出ていきなさい」
水陽に無理やり追い出され、
今の沙羅に残っているのは何もない。
汚された服とボロボロになった身体。
そして大切な親友の死。
仲間の裏切り。
沙羅の瞳に希望は消え、沙羅は道端で倒れた。
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沙羅が目覚めたのは数日後だった。
長い間、ずっと意識を失っていたようだった。
沙羅を発見したのは、一人の女性だった。
茶髪がかったロングヘア。
弓を抱えた弓使いだった。
「目が覚めたのね、良かったわ...」
「......」
「あなた、ずっと眠ってたわ、もうダメかと思った」
「......あなたは...?」
「私は蓬生 羽実よ、ここの山奥で静かに暮らしているわ」
蓬生 羽実と名乗る女性は、沙羅に暖かい飲み物を運んだ。
「ここで採れたハーブのお茶よ、これを飲めばすぐに元気になると思うわ」
「...すみません、私なんかのために」
「ううん、気にしないで、この辺で人が通るのって
あんまりないから、気になっちゃったんだ
ねえ、あなたはどうしてあんな所にいたのかしら」
「......」
沙羅は、あの出来事を夢だと思いたかった。
でも、沙羅の中にはしっかりと身体が覚えている。
裏切られ、親友を殺され、汚されたことも。
「ごめんなさい、言いたくなければいいのよ」
「すみません...」
「あの...外はどうなっていますか...?
私の国が今大変なことになってて...」
「それなら、昨日のうちに終息したわ
水陽...を率いる軍はなぜか突然戦いをやめたわ」
きっと、魔王を手に入れることができたからだ。
沙羅はそう確信し、心には針が刺さったままだ。
「あなたの国はなんて言うの?」
「ブニダーズです」
「ああ...あの国の帝魔王さん達も無事よ」
「...そうですか、良かったです」
「ねえ、あなたの名前も教えてくれないかな」
「私ですか...?私は亜瀬 沙羅です」
「沙羅さん...いい名前ね」
「これからあなたはどうしたい?」
「そうですね...私の街に一旦帰ります、
私のこと見てくれてありがとうございました」
「いいのよ、また何かあったら私のところへ来て
この辺のことならなんでも知ってるから」
「すみません」
沙羅は自分の街へ帰ることにした。
自分の学校、自分の家。
勢力が無くなった今、沙羅の場所が心配だった。
もう戦いは見たくない。
誰とも関わりもない、今は自分の世界に閉じこもりたい。
沙羅は現世界へ帰還した。
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「...帰ろう、あの人にはお世話になったけど
もう私は他人なんて信じられないわ
人って結局最後は裏切るもんなんだよね」
私の街は戦いが終わった後だった。
建物は他の人たちが守ってくれたのか
あまり壊れていない。
犠牲者も予測より少なく済んだようだ。
「...杉浦君たちが頑張ってくれたのかな」
私の家に着いた。
崩れていない。
そのままの家があった。
私の街並みは、私の日常は崩れていない。
学校も壊れてないし、私の志願した会社も壊れてない。
私の歩く道は守られていた。
家族もそこにはいた。
「ーーーー沙羅!!」
「お母さん、お姉ちゃん...」
「良かった、無事だったのね...!」
私のお母さんとお姉ちゃんは
私を暖かく迎えてくれた。
「何日も帰ってこないから...
本当に心配したんだから...!!」
「うん...ごめんね」
本当に信じられるのはここだけ。
私の家族だけは裏切らない。
そう確信している。
...だけど、私のお父さんはどこにいるんだろう...
でも、もう今は横になりたい。
家族に心配はかけられないから
この場所だけでも平常心を保っていたい。
涙を押し殺して、気持ちを押し殺して。
私は普段の日常へ帰る。
続く。




