第59話 ~侵攻される世界~ 君のために変わったんだよ。
「完成したのね、化学兵器」
私は、これに乗ることになる。
水陽、際藤、彼女を倒すために。
そして、私の親友の仇を打つために。
「沙羅さん、これで水陽を倒してください、
そして...魔王さんをお願いします」
私は頷き、兵器の中へ入っていく。
アニメでしか見たことないような機械兵器。
この世界ではギアマシンと呼ばれるらしい。
「操縦の仕方はマニュアルに書いてある、沙羅...頼む!」
「帝魔王様、花奏ちゃん、そして浅海さん
私は仇をとってきます、それまで待っててください」
私は絵以外に取り柄がないのに
ロボットの操縦までしている。
私だけじゃ非力で勝てない。
だから、この魔導の力を秘めたギアマシンで
対抗するってことだ。
私は、マシンのマニュアルを読んで
それを実行してみる。
マシンは空を飛翔し、高速で動く。
「すごい...でもなんでこんなに動いてるのに
目が回らないんだろう」
内部の重力が同じなのかな?
まあいいや、とにかく水陽の場所へ向かおう。
目星はついてる、魔王を誘拐するような場所は
あそこしかない。
ーーーーーーーーーーーーーー
私の目的場所は、かつて、私を倒した
あの山だ。
「ようやく現れましたね、沙羅」
やはり奴は現れた。
私は怒りに任せてギアを荒く動かす。
「水陽ーーーーーー!!!」
私は、目の前の標的を撃つべく、ギアに力を
変換させて、光線を放つ。
「いきなり攻撃するなんて卑怯じゃないですか」
水陽は光線を壁で弾き返した。
まるで、光を反射する鏡のように。
「光の屈折って知らないんですか?
私は水の力を秘めている...つまり、鏡を擬似的に作り出して跳ね返すことだってできるんです」
「だから...なんだっていうのよ!!!」
私は光線をやめ、ライフルへ持ち替えて
水陽を撃つ。
いくつもの火花と引き金が
音を響かせ、水陽を撃ち続ける。
「だから、効かないんですってば」
水陽は弾丸を水の力で弱らせて、速度を低下させている...
私の攻撃は一切効かないということか。
「うるさい...!あんたさえ...あんたさえいなければ...!!未奈ちゃんはーーーーーーー!!!」
「五月蝿いですね、その未奈っていう方は
際藤という方が勝手にやったことじゃないですか...
ですが、その非礼は私が詫びてあげますわ」
「ふざけるのもいい加減にしなさいよ!!!」
「私はね、あなたみたいな真っ直ぐな人は好きですよ
でも、そんな力任せで私に勝てるとでも?」
「...うるさい...」
「魔王を返しなさいっ!!!」
「じゃあ、私を倒してからです」
水陽は刀を十字に刻み、泡を呼び起こし
私を狙う。
私は片腕で薙ぎ払う。
「やっぱり、さすが最新兵器なだけありますね
私の泡が効かないなんて」
「でも兵器を持ってるのはあなただけじゃないんですよ、私だって持ってますから」
水陽は、大量の兵器を用意していた。
目には目を、ということか。
いくら私のギアといえど、この兵器には
敵わない...のか?
「さあ、これでおしまいです、私だってあなたのこと憎んでるんですからね、いつも魔王魔王って
気持ち悪いんですよ、あなたに魔王さんの何がわかるっていうんですか」
「あんたにだけは言われたくないわ!
魔王は私のことをよく見てくれてたんだ!」
「何を言ってるんですかね
魔王さんは人殺しの息子なんですよ?
あなたみたいな偽善より、私側についた方が
有意義だと思いませんか?」
「魔王は悪い奴じゃない...
悪い人間なんかじゃないわ!!!!
魔王はいつだって私のことを助けてくれた...
お前なんかに何がわかるんだ!!!
悪人には本当に善人はわかんないんだよ!!!!」
「はあ...もういいです、死んでください」
ーーーーーーーーーー
私は機械兵器に殴られ、蹴飛ばされ
内部の機械がショートするまでボコボコにされた。
最新兵器も、複数でやられたらこのザマとは...
私はそのあと、無理やり追い出され
機械に乗った男に連れられた。
そこには薄暗い部屋に、何もない部屋だった。
ただそこには小さな窓があった。
ここからでは何も見えない窓だった。
ーーーーーーーーーー
「魔王さん、あそこに見えるのが沙羅さんです
最新兵器のマシンとはいえ、私の複数の機械には
叶わなかったみたいですね」
「だって私の勢力は無数にあります
MKKの中でも上位に入るほどの実力者ですから
際藤さんも強いですが、MKK同士だったら
間違いなく私が勝ちますね」
「おい、沙羅をどうするつもりなんだ...!」
「それは見ればわかりますよ」
魔王は窓を叩きながら沙羅の名を叫びだす。
「沙羅...!沙羅...!!!!!」
しかし、その声は沙羅には聞こえない。
「この窓は特殊なんですって、だからあなたの顔も声も聞こえないし、この窓も壊せませんよ」
「黙れ...!!!!」
ーーーーーーーーーーーー
薄暗い部屋、ギアを破壊されて
私が無理やり連れて行かれた部屋。
そこには窓と扉があった。
扉には当然のように鍵がかけられて
開けることはできない。
魔法の力で鍵を作れないか工夫したが
この部屋の中では魔法がかき消されてしまう。
本当に私は何も出来ない非力な子となってしまった。
未奈ちゃんの仇も討てずに
ただ私はここで消えていくのか。
私はそう思うと涙が止まらなかった。
ーーーそして、扉が開かれる。
「...!?誰...!?」
「よお...お前結構可愛いじゃねえか」
「...なんですか...!早くここから出してください!」
男は私の顔を撫でて、ニヤける。
まるで空腹に植えた者が
肉を見つけたかのように。
「まあまあ、そんな慌てなくてもいいさ
ひどいようにはしないからさ」
「いや...!!!やめなさいよ...!!」
男は私を見て、私の口を重ねてきた。
まだ誰ともしたこともないような行為を...
この男は...
「さあ、まだまだ始まったばかりだよ」
「イヤあああああああああああ!!!!」
ーーーーーーーーーーーーーーー
「沙羅...!沙羅!!!!」
沙羅が消えていく。
心を、奪われ、消えていく。
「あなたが私側につけばすぐにでも助けてあげますよ」
水陽は偽りの救いの手を差し伸べた。
「お前卑怯だぞ...!沙羅にこんなことして
俺をお前側に...行かせるつもりか!!!」
「だって、そうしないとあなたは
私を見てくれないじゃないですか」
沙羅の苦痛の声をバックに
水陽は魔王を脅す。
沙羅は涙を流しながら、男に襲われている。
それを助けるには魔王が水陽側に着かなければならない。
でもそんなのは嫌だ。
だけど、どうすればいい。
助けるにしても、窓は破れない。
水陽から離れることもできない。
「ほら、沙羅さんの苦しむ姿、もっと見てなさいよ」
水陽は魔王の顔を無理やり鏡の方へ向けさせる。
「ほら、興奮するでしょ...?人殺しの息子らしく、一人の少女が苦しむ姿は愉悦でしょ?」
「そんなわけないだろ!!」
「嘘を言うのはやめた方がいいですよ
あなたの顔が今、赤くなってるじゃないですか」
「違う...!!」
「このまま沙羅さんの心が消えていくのを見て
どう思いますか?」
「いいはずがないだろ!!!」
「じゃあ、早く私に近いの戯をしてください」
魔王は知らなかった。
魔王の中には本当の裏の心があることを。
沙羅に向けてた愛情の裏に秘めていたのを。
それは、魔王が沙羅を支配したいという裏の心だった。
だが、それを受け入れず、理性を保ち続ける
沙羅を助ける、そのためなら
魔王は悪人になっても構わない。
そう思い始めた。
「...わかった、それで沙羅を助けてくれるなら
俺はお前側に尽く、そして沙羅を救う」
「はい、よく言えました、おめでとうございます
これであなたもMKK、選ばれた者の仲間入りですね」
魔王は、水陽とキスを交わし、
MKKの継承者の力を得た。
「約束はしたんだ、早く沙羅を解放してくれないか」
「お安いご用ですよ」
水陽は魔王と手を握り、沙羅の扉の前まで
一緒に歩いた。
かつての幼馴染の頃のように。
続く。




