第47話 1学期の終わり ~新しい世界~
いざ踏み込んでみれば、見えてくるものもある。
私にとって、イラストを編集者さんに見せて、評価をもらうことが最初の一歩だと思っている。
「とうとう来てしまった」
私は、いままで書いてきた絵とUSBを鞄に詰めて、スズミ社の前に立っている。
ここが、私の夢の場所だということ。
もしかしたら、ここが就職先になる可能性だってある。
私は緊張のあまり、手が震え、体もなまりのように重く感じた。
スマホの地図を見ながら歩き、近づくにつれて、それがより鮮明に感じるようになった。
そして、その臨界点がとうとう来てしまったのだ。
「人…人…人…ぱくっ」
私は緊張をすこしでもほぐすために、自分の手に人という字を書き始める。
「ふぅ…よし、行こう」
私は、覚悟を決めて、会社の窓口へと足を踏み込む。
「すみません、私は亜瀬 沙羅という者です」
声が震えながらも確かな声で受け付けの人に声をかけた。
「はい、どんなご用件でしょうか」
「編集者の伊波 静恵さんという方に、私の絵を見せてほしいって言われたので
会いたいのですが、よろしいでしょうか」
「伊波さんですね、少々お待ちください」
数分後、私は静恵さんに出会った。
スーツを着こなし、左手に小さなノートパソコン。
胸ポケットにはペンとメモ帳。
外見は見た感じだと26か27ぐらいか。
瞳はキリっとしている。
とても、真面目そうな雰囲気だ。
「こんにちは、沙羅さんですね、今日はよろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いします」
私と静恵さんは一礼をかわし
静恵さんの案内によって部屋を移動した。
「では、私の持ってきたものをお見せします」
私は鞄に入っているUSBやイラストを取り出して
静恵さんに渡した。
彼女の瞳からは、お宝を発見したかのような表情をしている。
私を推薦で呼ぶくらいだ。
かなり期待されているのだろう。
だが、私の絵が世間に渡る可能性があるってことは
つまり、絵を趣味で書けなくなるってことだ。
様々な人間の意見を聞き、そして、自己研鑽を重ねる。
そうやってプロは出来上がっていく。
プロになりたければつらいことを乗り越えなければならない。
もう、私の絵は趣味になれない。
私は、静恵さんが私の絵が入っているUSBをパソコンに差し込む。
それから、数十分、彼女は一言もしゃべらずにパソコンと向き合っている。
私の絵をまじまじと見られている。
恥ずかしい。
けれど、絵が評価されればイラストレーターへの道が開かれる。
そして、沈黙が消えた。
「沙羅さん…」
「はい…」
「沙羅さんの絵は、とても個性があり、なおかつ絵のクオリティも全体的にかなり高いです
昔から書かれていて、とても絵がお好きだということがうかがえます
私の予想は本当でした
ぜひ、私と一緒に絵の世界を作っていきませんか?」
想像以上の評価の高さだ。
まさかここまでの評価をもらえるとは思わなかった。
私の答えはひとつだ。
「宜しくお願いします!」
私は大きな声で発した。
それから、私と静恵さんは絵の話について5時間ほど話した。
色々なこと、私の人生の体験談のことなど
いままでの私の絵のことをすべて、隠さずにさらけ出した。
私は家に帰って、家族に結果について報告した。
「まさか、ここまで当たるとは思わなかった」
「そうか、よかったじゃない、あんたは昔から絵が得意だったから
そのままプロになってもいいと思うわよ」
「それもいいかもね」
母は私がプロになることを止めない。
私の将来のためになんでもやりな
ってことなんだろう。
さて、それはいいんだけど。
これからどうするか。
私の絵はかなり評価が高かったけど、それは静恵さんの個人の感想。
つまり、世に出てからも
評価が高いままなのかはわからない。
私はこの1か月の夏休みに、イラストを20枚完成させることを目標にした。
宿題もあるから、ちょこちょこ書く程度ではあるが。
いちおう、私も学生だしね。
「はあ…魔王は今頃なにやってんだろ」
と、まあ魔王のことも考えたりしていた。
一方そのころ、魔王はというと…
「…沙羅、もうすぐナイトメアでは、戦いが始まり、多くの者が犠牲になっていくっていうのに…
俺の故郷に帰っちゃいけないなんて…」
魔王は、一人、夜の部屋で、月を見ていた。
故郷である、ブニダーズに戻れない。
沙羅の命令であるとはいえ、魔王は破ろうかと思った。
「戦争は終わらない…あの水陽とかいう女、MKKの一人らしいが
彼女のサイコパスさは異常だろ…
大事な上司をいざ使い物にならなくなったら、駒のように捨てる…」
魔王は自分の持つ剣を握りしめ、術式を描き始める。
異世界へつなぐゲートを…
「やはり、世界が心配だ、水陽がなにをやらかすのか…
一度みておかなくては」
魔王は単独でゲートを作り出し
戦いを防ぐ行動へと出た。
続く!




