第3話 厨二病の痛い男子との邂逅。 前編
数学テストの追試は、数Ⅰの非常にわかりやすい参考書を買って、努力でごり押ししたらなんとかギリギリでクリアできた。
これで完全に嵐は過ぎ去った。
私たちの学校生活は平穏を取り戻しつつあった。
ーーちなみに、その努力方法は、一夜漬けである。
家族の心配をよそに、必死に参考書でテスト範囲を調べて覚えた結果である。
一日で覚えられるのもある意味天才かもしれない。
美術以外にも才能があるかもしれない。
今日、私は夜眠れず、木漏れの月を見ていた。
綺麗に光る三日月だった。
私の心を魅了させる罠に私は見事にひっかかった。
罠、これは比叡表現の一つだから気にしないで。
「お前も月が好きなのか?」
どこからともなく声が聞こえる。
黒く闇のように低い声だった。
刹那、その声の正体がわかった。
黒いコートを着て、闇の如く輝く杖を持ち。
私の方向へ近づいてくる。
やばい、なにかされる。
「は......はい」
私は怯えながら声を出した。
「ふ......奇遇だな、私も月が好きだ。 月は世の生き様を表しているような姿をしているだろう」
「そうですね......」
(なにこの人厨二病?)
私は心の中で、引くっていう感情を覚えた。
ーー痛い、痛すぎる。
「ねぇ、貴方の持ってるその杖ってなんなの?」
私は、闇のように禍々しい杖に指をさした。
「これは漆黒の闇のエンチャントで具現化されたダークマターウィザードだ」
ネーミングがかっこいい。
でも痛いなこの人。
「偶然の出会い、邂逅。 素晴らしい、お前のような娘出会えるとはな」
気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い。
でも、人から好かれるのは嫌いじゃない。
「そ......そうですね、私も嬉しいです」
嬉しいっていうのはフェイクだよ。
本当は引きまくり。
「さあ、夜明けの時間だ。 お前もそろそろ準備したほうがいいんじゃないのか、深淵なる楽園へ導かれる準備をするがいい」
翻訳すると、もうすぐ朝だから学校行く準備をしろってことだろう。
私はスマホを見て、時刻を見た。
4時。
そろそろ夜明けだ。
もう夜明けの時が近づいている。
5月の朝は早い。
「う......うん、じゃあね」
私は痛い中二病から逃げるように家に戻った。
私は朝食をとって、学校の準備を行った。
今日はさわやかな朝だった。
風が心に染みる。
(夜中の厨二病くんはなんだっただろう)
登校中はずっとそのことで頭がいっぱいだった。
考えていたらあっという間に学校についてしまった。
朝のHR、先生は笑顔で私たちに情報を教えてくれた。
情報社会である今、こういう知識を得なければ
生きていけないのだ。
「今日は転校生を紹介します!」
ーーしかし、時には知らない方がいい知識も
あることを沙羅は知らない。
転校生? まじか、転校生か。
この学校の生徒数が一人増えるのか!
ワクワクが止まらない。
転校生とか、アニメや漫画でしかない展開だと思ってたのに。
ここはアニメや漫画の世界じゃないから
びっくりした。
「誰だろうね、楽しみだね! 沙邏ちゃん」
「うん、とっても楽しみだね」
ワクワク、ドキドキ。
ドアが開いた。
そして、転校生は先生に招かれながら黒板に自分の名前を書き始めた。
「え......嘘、マジで?」
私は、驚きを隠せなかった。
目がビックリしている。
黒......漆黒......貴方は、もしかして......
「黒木 魔王だ、よろしく頼む」
黒く冷たい声で痛々しく喋っていた。
ーー厨二病魔導師が降臨した。 これの出会いは邂逅か、それとも運命か......
意味がわからないけど痛々しい子だな。
中編へ続く。