第35話 七色の薔薇道 〜Purple rose not love road〜
2週間後、久しぶりに昼休みに未奈や杉浦は
隣の教室に入った。
2週間前の血の気のあるような争いがあってもなお、
懲りずに二人は教室に入る。
「あれ...?」
未奈と杉浦は、橋川と美音がいないことに気づいた。
杉浦は橋川に憤りを感じていた。
あいつなんかに美音ちゃんを渡してなるものか。
あいつには絶対に渡すものか。
守るんだ、何があっても絶対に。
杉浦は美音のことを好きでいることをやめない。
「いないな...」
「探そうか」
「そうだね、手分けしよう」
だんだんストーカー気質になっていく二人。
クラスでも最近の杉浦と未奈はおかしい。
っていう噂が漂っている。
もっとも、本人たちはそれを知らないが。
というわけで未奈と杉浦は手分けして二人を
探すことにした。
携帯の電話番号はお互い交換してある。
なので、見つかったら電話をする。
二人は協力的な性格だ。
助け合い精神はある。
でも杉浦は橋川のことが嫌いだ。
そのことを未奈に伝わってしまったら
この関係は途絶えてしまうだろう。
杉浦はそれはマズイと思ったので
あの事件のことを深く言うことはなかった。
「美音ちゃん...! 絶対にあいつなんかにとられてたまるか...!!」
この関係だけは絶対に離したくない。
守りたい。
両想いになりたい。
杉浦は、美音との関係を友達から始め
それから1ヶ月しか経ってないけど、
杉浦は美音と恋人にもなりたいと思った。
だが、その関係が橋川によって
奪われることは絶対に認めない。
美音は橋川を嫌うが、
もしかしたら好きになってしまうかもしれない。
だから絶対にそんなことさせない。
「...!?」
最初に見つけたのは未奈だった。
未奈にとっては過酷な現実が待っていた。
橋川と美音はそこにいた。
「...なあ、美音...どうして俺を避けるんだい?」
橋川は髪を手で揺らし、
ナルシスト気味に美音にささやく。
美音は橋川を睨んだ。
「...やめて、嫌だからこないで...それが理由です」
(え...)
未奈は、橋川の豹変した姿を見て一歩引いた。
橋川のオーラが増している。
橋川は目に見えるほどのオーラを発していた。
好きになれって言うオーラだ。
それをついに未奈は察知した。
未奈は、橋川には好きな人がいる
ってことを知ってしまった。
しかも、その子は美音。
杉浦が好きな女の子だ。
未奈は溢れる涙を手で押さえた。
現実から逃れるために、わしゃわしゃと髪をかいた。
電話をすることすらできずにいた。
これが現実ではないことを信じた。
ーーしかし現実は甘くない。
「...お前は俺のことが嫌かもしれないが、俺はお前のことが好きなんだよ、だからあんな奴と関わるのはやめろ」
橋川は美音を壁の方まで引きずり、
壁を殴って脅迫した。
これは壁ドンとは程遠い、威圧による洗脳だ。
未奈はそれを見て、泣き出して、逃げ出した。
悲しさと嫉妬。
その両方が合わさり、怒りを呼び起こした。
未奈は、トイレに引きこもり、壁を殴りつけた。
橋川は救いようもないほどのクズだと言うことに気づき、未奈はショックだった。
そして、怒りは美音にも向いた。
両方に復讐してやりたい気分になった。
だが美音は嫌がっていた。
だから、すぐに気持ちを取り戻し、再び自分を取り戻すことができた。
「お前がな、もし金輪際あいつに関わったら...
俺はあいつを...」
未奈が消えて二人だけになったが、話は続いていた。
橋川は救いようもないクズだということに
未奈は気づく。
「ーーあいつをなんだって?」
駆け出したのは、杉浦だった。
杉浦は、汗だくになりながら、走った。
「お前、昨日はよくもやってくれたな」
「...杉浦くん...!?」
杉浦は握りこぶしを作り、橋川を睨む。
鋭い目で睨みつける。
「橋川、お前の行動はきっちり録音した、これを学校に報告する」
「なんだとゴラ」
橋川は杉浦の胸ぐらを掴んだ。
杉浦は話をやめない。
「盗聴か...この野郎」
「橋川、お前なんかに保護する人権があるのか?」
「ほう...じゃあ、聞くけど、お前、この女を知っているか」
「...」
美音は涙を拭い、黙り込んでいる。
「...伊吹、美音...だ、知っているに決まってんだろ」
「じゃあ、消えろ」
橋川はカッターナイフを取り出し、杉浦に矛を向けた。
「おい美音、この男のことを知っているか」
「...知ってる、杉浦...抄くん...でしょ」
美音は鼻をすすりながら恐怖で声が出せずにいたが、なんとか声を出すことができた。
「お前と杉浦はどんな関係だ、答えろ」
「...私の初めての...」
「ーー友達です、大切な友達です」
すると杉浦はカッターナイフを杉浦の腕に近づけた。
しかし、杉浦は無抵抗だ。
争いはしないで。
約束をしたばかりだ。
だから、話し合いで解決がしたかったのだ。
だが、橋川は襲ってきた。
正当防衛という手段は今の杉浦には思いつかなかった。
「なら、この男が怪我する姿を見たくないだろ?」
「...ぐ...なんの真似だ」
「ナイフ、お前の腕に切り刻んでやるよ」
橋川は杉浦の腕をナイフで軽く傷をつけた。
少しだが血が出た。
杉浦は耐えた。
「...やめて...!!」
美音は橋川を止めるよう促す。
しかし、橋川は止めない。
(私のせいだ...私が...こんな...大変なことを...!)
「どうする、お前は俺と付き合うか、杉浦がくたばる姿を最後まで見物するか、どっちがいい?」
橋川はナイフを杉浦に切りつけ続けた。
「...っ...ぐ...!! み...美音ちゃん...!!
そいつの言葉に耳を貸すな...!!
僕は...俺は...大丈夫だからっ!!」
「...杉浦くん...!!」
「あと30秒以内に答えないと
神経まで切られるかもな〜
さあどうだ、お前は俺と付き合うか?」
「...!!」
「つ...つき...っ...!!」
「ああ? こんな声で俺が攻撃をやめると思ってんのか?」
橋川はナイフを止めない。
20秒ほどで完全に神経までいってしまう。
...美音は自分のことよりも、杉浦を守りたいと思った。
...これがたとえ最悪な決断だとしても。
「...わかりました...! 付き合いますっ...!!! あなたを好きに...なります...!!!!」
すると、橋川はナイフを引いた。
そして、美音の元へ駆け寄る。
杉浦は、倒れ込んでしまった。
腕は深くまで傷になってしまった。
「そうか、それでいい!! これぞ...力...力こそが全て...!! あはははははははははは!!!!」
「...美...音ちゃん......!」
「お前はそこで寝てろ」
橋川は、美音の腕を掴み、顔を寄せた。
「ま...まさ...か...!!」
「お前はこれからずっと俺のそばにいろ」
「...!!」
美音は、答えない。
嫌いな人を無理矢理好きになって、すぐに答えられるわけがない。
「答えないとまたあの男が大変なことになるけどお?」
「...は...はい...」
「よし、素直ないい子だ」
杉浦は、最悪な現実を直視することになった。
「ま...まさか...やめ...やめろ..!!
美音ちゃん...!!橋川...!!
お願いだ...やめてくれ...」
橋川は美音に口を近づけて行く。
そして...
「やめろーーーーーーーーーーーー!!」
杉浦は瞳孔が完全に開き、絶句した。
橋川は、美音に
最初の誓いを奪った。
美音は死んだ目で、橋川と口を交わしたのだ。
「...ん...う...」
唇から吐息が流れ出る。
気持ち悪い、胸くそが悪い吐息が...
「よし、行こうか」
「...はい」
「声が小さい!!」
「は...はい!!」
そして、杉浦の世界は完全に砕けてしまった。
一人取り残された杉浦。
再び勝てなかった。
2週間も修行してきたのに。
体も鍛えたのに。
無抵抗じゃ意味ないよな。
杉浦は意識を失った。
七色の薔薇道
終




