第31話 七色の薔薇道 〜Yellow rose Mina road〜
橋川との出会いから
一週間ぐらいたった。
未奈ちゃんと橋川の進行度は
順調に進んでいるらしい。
仲も良いみたい。
未奈ちゃんはどうやら
橋川と少しだけ仲が良くなったみたいだ。
なので、今日も気分が良いらしい。
「おはよう、沙羅ちゃん♫」
「おっはよ〜」
未奈ちゃんはルンルンのようだった。
そりゃあそうだ、あの日からクラスに入り、毎日あのパーラパラダンスを見に来ているのだから。
そして、未奈ちゃんはそのダンスを見物して楽しんでいるのだから。
話す機会もたくさん。
ホント幸せそう。
昼休み、未奈ちゃんはお弁当をもって、ウキウキで橋川のクラスへと走っていった。
あんなに嬉しそうなのホントに久々に見た気がする。
...だけど、未奈ちゃんが遠い存在に見えてしまう。
好きな人ができただけでここまで違うものなのか...?
単なる思い込みだと思うけどさ...
関わりが減ったわけでもないし。
「...はあ...」
「...?」
ため息をしているのは、魔王でも、未奈ちゃんでも私でもなかった。
未奈ちゃんの席の隣の男子生徒だった。
つまり私の隣の隣ってわけだ。
「ねえどうしたの?」
私は、名前すら知らない男子生徒に話しかけてみた。
入学してもう3ヶ月くらいたつのに、名前すら覚えてないのはちょっと恥ずかしいが...
まあ30人くらいクラスにいるんだし覚えられないのもしょうがないか。
「あ、亜瀬さん、ちょっとね...いろいろと考え事してたんだ」
私の名前を知っている...?
じゃあわからなかったのは私だけ...?
恥ずかしい...
「そ...そうなんだね、どんなことかな?」
「ごめん、それはちょっと言えないんだ」
「そっか、なら言わなくてもいいよ、私の方こそごめんね」
「ううん、いいよ」
私はそのあと、その男子生徒の名前を聞いてみた。
何かあった時に名前は覚えとくべきだなってことだ。
それにしても、喋ったことのない人に、自分から話しかけることができたなんて...
これは魔王の影響かしら。
どうやらこの男子生徒の名前は
杉浦 抄
って言うらしい。
私と同じようなタイプかもしれない。
おとなしい性格のようで、名前も知らなかった。
外見は少しぽっちゃりしているが、太っているわけではない。
むしろガッチリ体型。
ってなんで体の話になってるのよ。
考え事ってなんだろう。
無理に聞く必要はないか。
可哀想だし。
「ただいま〜」
未奈ちゃんは昼休みが終わった時いつも気分が良い。
これだといつかクラス中にバレそうだが、そこは私がフォローする。
「よかったね〜今日も売店のパンが美味しかったんだね♫」
私は大きめな声で未奈ちゃんのことをごまかす。
未奈ちゃんから聞いたが、橋川がいるクラスでも、単にパーラパラダンスを一緒に盛り上がってるだけだと思われてるらしいので、今のところ私以外に未奈ちゃんの好きな人の情報は知らないらしい。
よかった。
橋川のクラスにて。
無言で本を読んでいる少女がいた。
実は、杉浦 抄は、その少女に興味を持っているようだった。
だが、なかなか話す機会がなく、未奈と同様悩んでいるようだった。
沙羅はおろか、周りの人たちはそのことをまだ知らない。
杉浦は、人とあまり喋るのが苦手で、自分の気持ちを伝えたり、友達を作るのも得意じゃない。
だが、人に優しくできるっていう優しさがある。
出会ったきっかけは、体育祭だ。
赤チームで同じグループになり、たまたま席が隣になっていたのだ。
だが、杉浦は昼食の時に箸を忘れてしまったのだ。
弁当の箸がなければ食べられない。
杉浦は困っていた。
だが、その少女が「これ、どうぞ」ってそれだけ言って、箸を渡してくれた。
少女は箸を予備用に持っていたらしく、問題なかったようだ。
いままで親切にしてくれる人がいなかったので、この少女が眩しく見えたようだ。
それ以来気になっているらしい。
だが、好きかどうかは別問題だ。
仲良くなりたいとは思っているようだが。
どうすればいいのかわからずにいたのだ。
(...)
(会いたい、だけど怖い)
(でも会いたい)
そんな気持ちが混ざり合って、ついにため息が出てしまったのだ。
次の日、杉浦は昼休みに少女のいるクラスを10秒ほど見つめて、結局歩める勇気も持てずに終わってしまう。
そして、自分のクラスに帰ろうとしたその時。
「ねえ...ちょっといい?」
女子生徒が杉浦に声をかけた。
その生徒は未奈だった。
声をかけられた杉浦は、気持ちを落ち着かせるために深呼吸をした。
「え...えっとね...クラスで、ちょっと仲良くなりたい人がいて...あっ違う、なんでもないから...」
杉浦は恋に似た感情を少しでも表したら、壊れてしまいのだ。
それぐらいあがり症。
人と話すこと自体苦手な杉浦に、好きな人と仲良くなれるきっかけなんて作ることはできなかった。
だが未奈はある行動をとった。
「誰かな、隣の席同士さ、これも縁だと思って教えてほしいな」
「...」
杉浦は下を向いた。
顔が熱があるのではないかと疑うくらい、赤くなっていた。
未奈は、杉浦の行動に少し興味があったのだ。
だから声をかけた。
そして仲良くなれたらいいなって思っているようだ。
杉浦は大人しく地味だが、人柄は誰もが認めるほど優しい、そして真面目だ。
だから未奈は杉浦に少し興味を持っていたのだ。
「...あ、ごめんね、別に無理に言わなくても...」
数秒間、杉浦は黙り込み、そして...
仲良くなりたいと思っている人に指をさした。
本を読んでいる、黒髪ショートの少女に。
「...この子?」
「う...うん、伊吹 美音さんって人なんだけど...ちょっと声かけるのが...」
伊吹 美音。
少女の名前だ。
杉浦は、伊吹 美音という少女と仲良くなりたいと思っているが、人と話すのが苦手なので無理だった。
それを未奈に伝えることにした。
自分の気持ちを伝えることも苦手な杉浦、そんな性格もあってか、全部話し終えるのに5分以上かかってしまった。
本来は2分くらいで終わりそうな内容だが、杉浦は別だ。
「そっか...杉浦くんも仲良くなりたい人がいるんだね」
杉浦は赤くなりながらも頷いた。
「じゃあさ、行って来なよ、私もクラスに用があるからさ、一緒に行こ」
「う...うん...でも恥ずかしいよ」
「大丈夫だよ、私も気になる人がいたんだけど、話すことができなかったけど、沙羅ちゃんと一緒に行ったら、緊張もなくなったんだし、だからさ、私でよかったら...」
「そ...そうだね、このまま勇気を出さずにクラスに入らなかったら僕はずっとこのままかもしれないし...」
杉浦は覚悟を決めてクラスに入ることにした。
そして、美音と仲良くなるために勇気を出すことにした。
人と関わるのは、最初が肝心だ。
第一印象。
杉浦は、第一印象はできるだけ良い風に見せたいと思っているようだ。
もともと杉浦は良い雰囲気を持っているが、あがり症なのでそれをぶち壊しにするのだ。
杉浦は小さな小さなコミュ力だが、最大限に見せたいと思っている。
意気込みは十分だ。
「さあ、入るよっ!」
「う...うん!」
ガラーン。
ドアを開け、美音の元へゆっくりと歩く...
(はじめの一歩...!!!)
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〜Green rose mail interchange road〜




