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美術少女と異世界に住まう魔王の旋律  作者: Spell
Episode 01 美術少女と厨二病魔王のハイパースーパーな1ヶ月!
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第2話 空腹に襲われながら数学生活。 後編

同級生の男子が教室へ入った。

静かな空間が少し和らいだ。


「おはよー沙邏、今日は早いねぇ」


本当は寝坊したんだけどね。

事実を伝えてもいいか。


「あははは、寝坊したんだけどね」


私は笑ってごまかした。


「え? 寝坊したのに早く来たの?」


男子ははてなマークで首を傾げた。


「お母さんに送ってってもらった」


私が母に無理やり送ってってもらったなんて

言えるわけない。

母に送ってもらったのは嘘ではないから。

事実だけを少々伝えるのが、会話を巧くするコツだ。


ーー親を困らせるいやな娘である。

普段から勉強してないし、頭も悪いくせに、こういうズル賢い手段はとことん使う沙羅である。


「そうなんだ〜」


男子生徒はふつうに受け入れてくれた。


「うん」


同級生の男子は本を取り出して読書を始めた。

これは、ライトノベルかな?

絵が可愛いし。

萌え萌えしてるし。


「あ! 忘れてた!」


何を忘れたんだって宿題だよ。

私は鞄を取り出し、宿題プリントを探した。

しかし、何も入っていなかった。


「急にどうした!?


男子生徒は驚いてしまった。

当然だ。

突然何かが起きると驚くのは。


「宿題忘れた......」


私は、絶望顔が2割程度増した。


「え?なにいってんの? 今日は予習が宿題だよ」


しかし、顔は、宿題がないことにより、元に戻った。

私は安堵した。


「あ、なんだよかった」


よかった、予習が宿題なら、忘れ物はないね。


ーーなにがよかったのやら。

沙邏は都合が悪いところはスルーなのだ。


何事も無いように3時間目まで過ぎた。

難し過ぎてついていけないところが多かったが、それはみんな同じだし、気にすることはなかった。


「さて、次の授業は数学ですので、覚悟しといてくださいよ」


先生が気合を入れて生徒に喝を入れさせた。


「はい!」


みんないい返事だなぁ...

私の場合は、はぃ、なんだけどね。

自身がないんだもの。


休み時間がどんどん早くすぎる。

みんなを見渡してみると、全員顔がフリーズしている。

みんな本当は予習してないのかなぁ。

いけないんだ〜


ーー醜いブーメラン乙。 としか言えない。


「沙邏ちゃん、今日の数学...わかる?」


私の友達が話しかけてきた。

私は友達の方を向いて、数学がわからないことを伝える。


「わからない......未奈ちゃんはわかるの?」


未奈ちゃんという女の子は中学の頃からの数少ない友達だ。

水色のロングヘアで性格はおとなしい。

そして優しい。

ゲームやパソコンが好きで、意外とオタク性質だ。

だから気があう。

一年に二回あるコミッケへよく二人で一緒に行ったりする。

類友かもしれない。


「わ......わからない......」


これも類友だ。


「そうだよね、何が展開だって思うよね」


「うん、私、算数は得意なのに数学は苦手なの」


その気持ちわかる。

分数の四則演算とかはできるのに、

文字式とか方程式とかゴミすぎ。


「それな!」


3分後、キンコンカンコンというチャイムが鳴ったので、ドアを開ける音が聞こえ、先生が現れる。

私たちはチャイムがなる前に

席についていたので注意される心配はない。


ーーそれも重要だが、ほかに何か大切なものがあるだろう。 予習はどうした。


「皆さん、ちゃんと予習してきましたか?」


私はしていない。

私だけじゃなく、殆どの人がしていないのだろう。


「はい!」


なぜ堂々と「はい」って言えるのか。

理解できない。


「は......はぁい......」


私は細い声で返事をした。


「では、テストの紙を配ります」


先生が紙を持ってきて一人一人配っていった。

やばい、すごく緊張する。

死んじゃう。

心臓がバクバクになってる。


「では、始め!」


紙が全員分配られたので、

スタートの合図を先生が行なった。


残り45分。

時間はたくさんあるから考え放題だ。

えっと......なんだこれいきなりわからん。

名前とクラス番号は入れたけど問題が全然わからん。

空腹で体がもたない。

こんなことなら2時間目の休み時間に売店行けばよかった。

売店なんて昼休みに行くものだって暗黙のルールを自分で作るんじゃなかったなぁ。


ーー空腹は集中力を切らす。 だけど沙邏はお腹いっぱいでも頭が働かないのだ。


ええと......かっこ内の文字......着目?

最近習ったことがあるな......

なんだっけ......

私は頭を100%フル回転させて考えてみた。

(よし、よく考えよう...係数はたしかカッコに埋まってる文字以外のやつだったはず...)

7xy[y]......つまり、これの係数は...7x?

それで、次数は...1?

これでいいのかなぁ......

あああああ!!!

あとは全然わかんないよ!

(うわあああああああああん!!!!)

私は心の中で泣いてしまった。


ーー因果応報がここにも現れたのだ。 やっぱり特大ブーメランである。


こうしているうちにも時間は流れ出す。

もう20分経った。

(こうなったら適当に答えてやる!)

私はやけくそに解き始めた。

こんなんでいいのか。

ペンが適当に走り始める。

√?なにそれ?カレーのルーがトロけるから

ルート?

サイン?コサイン?タンジェント?

サインは芸能人のサインが欲しいわ!

コサイン?コカイン飲んだら頭おかしくなるわよ!!

タンジェント?牛タンがジェットのようにぶっ飛ぶの?

展開?それってラストステージだよね!!

ツボを再び封印させるわよ!!

私は消しゴムを使うことなく無我夢中で適当に解く。


「残り5分です!」


私は、ずっとプリントににらめっこをしていた。

我ながらひどい回答だ。

√の有理化問題とか、√が有利のカレーライスって回答したし。

展開は、怪物を再び封印させるために

ツボって回答したし...

こんなことしたらテストを作ってくれた先生に失礼だろって思うけど、わからなかったのだから仕方がない。


ーー正当化する理由がそれか、ちゃんと勉強しろよ。 沙邏。


「はい、終了です! テストを回収します、皆さん、先生のところまで持ってきてください!」


ついに終わった。

解放された。

私は笑顔で先生にプリントを提出した。


「はい先生!どうぞ!」


ニコニコしながらルンルンで4時間目が終わり、売店に行き、昼食を食べた。


ーー適当に答えたテスト用紙のことはすっかり忘れてしまった。

それほど昼食が楽しみなのだろう。


「美味しい!!!!」


私は焼きそばを美味しく食べた。

感動の味がした。

美味かった。


「売店の焼きそば美味しいよね〜!」


「うん!!」


私は笑顔でそう言った。


いやー空は青いねぇ。

気持ちいいほどに。


こうして私は5時間目と6時間目を終えて、笑顔のまま家に帰った。


「じゃあね〜!」


未奈ちゃんが手を降った。

私も手を振った。


「うん、じゃあね〜未奈ちゃん!」


ラッタラッタラーン♪

私はスキップした。

嬉しいな♪ 嬉しいな♪

幸せだなぁ♪


ーーしかし、この喜びが偽りのぬか喜びだってことを沙邏は知らなかった。


「うわあああああああ!!!」


テストの点数がたったの4点だった。

適当に解いたり、カンで当てたりして4点だ。

係数と次数の問題だけ正解だった。


「次からはちゃんと予習するんですよ......」


先生は呆れていた。


「す......すみません」


私は先生に謝った。

もう次からちゃんと予習しよ。

姉も母も頼りにならんし

参考書でも買おうかな......

勉強嫌いだけど......


「あ、そうだ、1週間後に沙邏さんだけ追試をします、よろしくね。」


絶望感が音を立てて現れる。

私の顔は絶望に染まり。

今にも魔女化しそうだった。


「は...はい。」


1週間で知識を得なきゃ......

本当、キツイっすよ......


ーーやっぱり努力しないといい結果って起きないんだよ、次からは気をつけるんだな、沙邏。


空腹に襲われながら数学生活。 おしまい。

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