第1話 空腹に襲われながら数学生活。 前編
高校生ってなんだろう。
入学してから数週間。
5月になった。
私はふと高校生とはなんなのか考える。
学生っていうのは、勉強して、恋するものなのだろうか。
辛いこともたくさんあるのだろうか。
私は、学校に馴染めるのだろうか。
いや、馴染めているのだろうか。
今は全くわからない。
そのうちわかる日が来るのだろうか。
気が付けば、桜はすべて散っていた。
私の高校生活も、こんな風になってしまうのだろうか。
わたしは、今日の朝、トウサ高等学校の空気を感じることができたような気がする。
でも、それはきっと幻だ。
私の髪が、桜が消えた今、風のように靡いた。
「明日はテストを行います、ちゃんと予習すればしっかりできますよ」
先生が私達生徒にテストがあることを告げた。
「はーい」
生徒たちははーいって返事をした。
やばい、明日はテストだ。
取り敢えず返事をしたけど、全然わかんないよ。
数学なんてしらないよ。
「これで帰りのHRは終了です、それでは皆さんさようなら」
「さようなら」
みんなが次々と帰って行く。
よし、こうなったら勉強する。
数学なんてよくわからんけど勉強するわ。
私の頭脳は一夜漬けすれば問題ない。
ーーそんなこと言ってまた駄目な点数を取るのがこの子だ。
私は友人と一緒に帰ることもなく電車に乗ってる空き時間を使ってスマートフォンを使う。
「えっと...展開ってなんだっけ?」
私は、ネットでじょーほう?公式を調べた。
えっと……(x+y)^2=x^2+2xy+y^2…
ああああああああああああ!!!!!!
なによこの公式!!!!
全然わからん。
何がわからないのかもわかりません。
ーーこの子は中一の数学すらほとんど知らない。
ていうか忘れてる。
「うわ......わかんないよ」
私は数学が大っ嫌いだから文字式を見てるとイライラする。
「そうだ、お母さんに聞いてみよっかな」
母親に相談しても
母も数学が嫌いだから無駄だろうって
思っていたが、それしか方法がないので、母に相談することにした。
私はそう決めて、スマホゲームをやり始めた。
ソシャゲはゲーム性がなくて私はあまり好きじゃ無いが、暇だったのでやってみた。
電車の音がうるさくて集中できない。
うるさいわねって心の中で叫ぶが、これは仕方のないことなので心を抑える。
ーーこうしてこの子は家に無事に帰れたのだった。
ちなみにこの数学が大嫌いな少女の名前は亜瀬 沙邏。
髪型は黒髪のボブカットで、身長は154cm。
性格は、二重人格で、パワフルになる時もあるが、基本的には大人しく、優しい。
パワフルになるときは、親しい人とかに多い。
家族全般や、友人などにそういう傾向が強くなる。
ちなみに、学力は低い。運動もできない。帰宅部で友人も少ない。
ただし、美術だけはずば抜けて凄い。
昔から賞を貰ったりしている。
でも、明日行うテストは数学。
これじゃあ意味がない。
「ねえねえお母さん、ここわかんないんだけど教えてくれない?」
私は、スマホでさっき調べた、じょーほう……?
なんちゃらっていうのを見せた。
――乗法公式である。
「え? 知らないわよ。 お母さんが頭も悪いってこと知ってるでしょ?」
そうだすっかり忘れてた(本当は忘れてない、賭けに負けたから現実逃避しているだけ)
蛙の子は蛙。
「じゃあお姉ちゃんに聞いてくるわ」
私は、お母さんから遠ざけて
もう一つのワンチャンを求めるために
お姉ちゃんの部屋に行くことにした。
「好きにしなさい」
お母さんは再び夕飯の調理を始めた。
私はお母さんに聞いて損したって感情を残して姉の方へ向かった。
姉の部屋をノックして「どうぞ」って声が聞こえてから、姉の部屋に入った。
「ねーねー」
「なによ」
「ねーねーちゃん」
「なによ」
「ねーちゃーはん」
「は? チャーハン?」
「展開と因数分解って知ってる?」
私は、数学Ⅰの教科書を見せた。
「知るか!」
お姉ちゃんは自分の机を叩いた。
バンって音がした。
「なによ! ねーチャーハンって! どんな食べ物よ!」
「チャーハン作れる?」
「得意よ!」
お姉ちゃんは家庭科が上手。
でも、勉強はまるでダメ。
やはりダメだったか。
ーーあれ?話はどうなったんだって思いがあるが、ここは我慢しよう。
「展開は?」
私はもう一度お姉ちゃんに同じことを聞く。
「何よそれ!」
しかし、同じ反応が私を襲う。
「あんた大学生でしょ!」
私は私なりに鋭い指摘をした。
「底辺大学よ、わかるわけないじゃん」
私は呆れてしまった。
ただし、自分も勉強まるでだめだから
共感をしてしまうことも事実だ。
「はぁ...まあいいや、私、勉強なしで授業受けるから」
私は、ワンちゃんを諦め、ため息をついてから、自分の部屋に戻ろうとする。
「アホになる気はあるの?」
姉は突然変なことを私に質問した。
ーーさっぱりわからない。
「ないわよ!」
バン!
私は姉に呆れてドアを閉めた。
ーーもう夜になってしまった。
沙邏は、夢中になっているものがあった。
それはべんきょ...じゃなくてゲームだ。
音ゲーだ。
勉強は部屋に戻ってから
ほんの数分やって
挫折して、諦めてしまった。
ブーメラン刺さりそうな発言たくさんしてるのに、
まさに意味不明である。
「キック! パンチ!」
よし、badからgoodに上がった。
私はリズムよくボタンを押した。
画面上に移るアクションを見て行動する。
「楽しいなあ〜」
私はルンルンでノリノリの気分でヴィレステ4を楽しんだ。
ーーこんなことしていいのだろうか。
沙邏は気にせずにピコピコ遊んでた。
翌日、私は寝坊した。
ピリリリって音を聞いてすぐに起きるべきだった。
やばい、もう7時20分だ。
昨日パラパラなんてやるんじゃなかった。
面白くて夢中になり過ぎた。
お母さんに車で送ってってもらおうかな。
「ねーねーお母さん送ってってよぉ」
私は子供みたく甘えて見た。
すりすりしてみた。
「嫌よ走ってきなさい」
お母さんはそっぽ向いて、家事を始める。
「ケチ」
私は本音を吐き出した。
「めんどくせぇのよ」
お母さんの口調が変化した。
「お願いよ!」
私は跪いてお願いした。
「ダメです」
しかし、母は聞く耳を持たない。
「お願い!」
今度は土下座をしてお願いした。
「ダメ」
即答された。
「頼みます!」
敬語になってお願いしてみた。
「いけません」
敬語で返された。
「ドケチ!」
遂に私はキレて口調がドケチって言ってしまった。
「ドをつけるなんてそれでも女か!」
女よ馬鹿たれが!!
こうして喧嘩が始まり、大乱闘がスタートした。
ボコスカボコスカ!!
ボコボコボコ!!
ーーこうしているうちにも時間は過ぎていく。
アホなガールだ、まるでどっかのバナナ女みたいだ。
あそこまで酷くないか。
結果。
私が勝った。
勝ったので早速、制服に着替えてカバン持って準備をした。
お母さんが送ってってくれた。
やったね。
ーーどんだけ図々しいのやら。
5分でついた。
これで遅刻はしない。
むしろ余裕すぎる。
ーーでもその代償は重かった。
「お腹すいたな......」
私はお母さんと揉めて朝食をとっていなかった。
因果応報ではあるが、やっぱり空腹だ。
「よし、売店行こう」
ーー売店はまだ営業時間ではないことを沙邏は知らない。
売店は閉まっていた。
学校の中もとても静かだった。
「えええええええ!!!! そうだすっかり忘れてた! 売店は10時からだったー!!!」
私は、心の底から7割絶望してしまった。
エネルギーが急激に減って行くことが
自分からよく伝わる。
ーーというわけで朝食は抜きである、自業自得だ、諦めなさい。
「はぁ......仕方ない、自分の教室に行って休むか。」
私は、ショックを受けながら、自分の教室へ向かった。
チクタクチクタク...
誰もいない教室は退屈だ。
聞こえるのは時計の音か、自分のお腹の音だ。
あと数十分まてば生徒が来るのだろうけど、やっぱり退屈だ。
「お絵かきでもしようかな」
私は暇つぶしに得意なお絵かきを始めた。
キャラクター書くのは昔から得意だ。
Prttiってサイトでよく自分の絵をアップするんだけど、いつも高評価をたくさん得ている。
将来の仕事は漫画家目指そうかな。
逆に漫画家以外に出来そうな仕事がない。
私は、鉛筆を一旦止めて窓の方へ行って、生徒がいるかどうか確認した。
「あ、いるじゃん」
ちらほら生徒が現れ始めた。
これで寂しい一人きりの朝は終わる。
ーー数学は4時間目だ。 後半へ続く。