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小心王女と四つの試煉  作者: 伊佐伊波
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どうしてお前が………

 精悍な顔立ちの、いかにも騎士を台頭しているが如く鷹揚として屹立している美青年。


 青年の右手が掴む長剣の柄から先、すうっと剣鍔から切っ先まで細く伸びていく刀身は筆舌に尽くしがたいものであり、何よりも驚くのはその刀身が今も燦然と虹色に光り輝いていることであった。その虹彩が放つ光はまるで生き物のように、刀身を軸に隆々と畝っていた。

 その長剣の様は、美しい刀身の見た目と虹色の輝きが相まって、まさに光彩奪目の一言であった。


 今も状況が呑み込めず、漠然と佇んでいる少女はその光景――――――美しいの一言では尽き止まない、燦然と光る長剣とそれを掲げる青年――――――から眼を逸らすことができず、ただ無意識に、網膜に焼き付けられ続けるその映像を決して瞳孔をぶらすことなく、瞬きすら忘れてその双眸に収め続けた。


 やがて、ほんの数瞬をまさに永遠のように感じるような錯覚に陥っていたその少女は、やっとの事で自分の目の前にいるその青年が剣聖リュー・スタンセアであるということを認識するに至り、未だまったくもって混乱が鳴り止まず、大渋滞を引き起こしている頭からポロッとほぼ反射的に湧き上がってきた一つの疑問が少女の口から漏れ出る。


 「”どうしておまえがここにいる?”」


 少女の口から発せられた、本来ならばここにいるはずのない、少女の予想外を期した青年に向けられたその一言目はか細く震えていた。ともすればそれはいわば、少女の脳内で処理しきれずに漏れ出た、情報という名の数多の感情。


(なぜわたし以外の人間がこの試練を受けている!?わたし一人でなければ………そうではなくては……!、意味がないのに…………!?)

 少女のまだ幼くも美しい相貌が悲痛に歪む。

 「なぜここにいるっ……!?こたえろッ!!」


 次に一間を置いて、少女の理性の枠から数多の感情が激情へと変貌して、暴れて、溢れた。

 少女の喉が張り裂けんばかりに発せられたその激情に乗せられた二言目は、悠然と立つ青年に向けられ、その激情は余すことなく青年の鼓膜に音の波動となってぶつけられ、青年の脳内に確かに強く響き渡った。


 たったの二言の、余りに抽象的な言葉として青年にぶつけた、少女の怒りに満ちた罵声。


 今も、少女のどこまでも透き通っていくような翡翠の双眸は無言で佇む青年を捉えて決して離さない。

 少女の激情はまったく収まる欠片も見せずに、鋭い眼光と化して、攻撃的に青年を問い攻め続けている。



 不意に、無言で少女の怒りの叫びを受け止め続けていた青年が頭を垂れて俯く………………



 少女が冷静さをようやくだがほんの少しずつ取り戻し始めた思考を働かせ、言い過ぎてしまったか。

 というよりもどうやって、どうしてここに剣聖がいるのかも、その経緯と理由をまだ聞いていなかった。

 それなのに自分は助けられておいて、その恩人に激怒するなど、流石に幼稚でみっともなさ過ぎたと、そのまだ幼稚な頭を回して反省の色を浮かべ、取り敢えず王の娘たる者、助けられたのならば、しっかりとその礼を言わねば、と改めてそれなりに穏やかな、反省の色を滲ませた顔で青年に向き直ろうとして――――――――――――――――――――



 「”助けてもらっておいて、ンだよその態度”……」


 柳眉を逆立てた美青年がその整った顔立ちに怒りを露わに顔を上げた。



 


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