背筋が凍る……
瞬間、フィアナの息が詰まる。
(何あれ………)
フィアナの覗いている窓から三メートル程。そこには青白く燃えている亡者が家の中を徘徊していた。
姿は人間の形を留めているものの、全身の皮膚が爛れ、今にも体の一部が千切れ落ちてしまいそう。
眼に黒部が無く、全体が白い。肌は不健康を通り越して、青黒い。徘徊している足取りも腕をだらりとさせてふらついていて、生気を感じられない。口が開きっぱなしで涎が口からたらたらと滴り落ちている。
そいつは姿はグロテスクで異様であり、まさに生きた死人。死んでも死にきれなかった亡者と比喩するのに相応しいものだった。
それを見て戦慄したフィアナは、本能的にこいつがとても危険であることを察知して、この場から急いで離れようとする。慎重に、物音を立てないように。
窓から離れようと屈んで後ろ向きに一歩下がろうとしたその時、パキッという乾いた音が真っ暗な静寂を切り裂いた。
心臓が跳ね上がり、サッとフィアナが己の足元に目を寄せると……、左足が枯れ木、恐らくはボロボロの家から剥がれ落ちた家の一部、それを踏み割っていた。
と、そこですぐに正面に向き直り頭上の窓を見上げようとする。正面に向き直るまでの一瞬が永遠のように長く感じられる。フィアナの胸は今にも張り裂けそうだった。
そしてそこには――――――――何もいなかった。亡者の姿はなかった。
瞬間的に酷く安堵し、逆に血の気が引いていくような、体の熱が冷めていくような感覚に襲われ、フィアナは脱力した。
一応、念のために安全確認で窓から家の中を覗きこもうと思った。フィアナは屈みこんでいたので家の中の様子がよくは見えなかったからだ。
上体をゆっくりと持ち上げ、窓から家の中を改めて覗き込む―――――――――――――
――――――――――頭が窓の下枠の高さを超え、視界に映ったのは……………”青白い炎”。
ただ、先程家の中を覗いた時よりも視界を埋める青白い光の面積が明らかに大きい………。
一瞬呼吸が止まり、フィアナは恐怖に先導されるように面を持ち上げる…………。
十三歳の臆病な少女と生気の抜けた亡者の視線が交錯する。
瞬間……フィアナの心臓が凍りついた。




