【第一部・あらすじ】
※間違い、見落とし、表記漏れなどあったら、ご指摘ください
※ネタバレ注意、気をつけてはいますが、記述は最新話に揃えてあるとお考えください
《凡例》
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『第零章 サンプル』
越智翔は駄文を公開しようと思い立った。
「なろう」で数々の作品を目にして、似たようなモノを書こうと決めてしまったのだ。
ところが、気楽に書き始めたはずが、どんどん文章が長くなり、労力が大きくなってきて、頭を抱えるようになった。
これでは読むほうも大変だ。そうだ、登場人物紹介とあらすじをつけよう!
このあらすじサンプルは、ネタバレ防止用の文章で、うっかりこのページを開けてしまった人が、いきなりあらすじを読まずに済むようにするためのものである。
登場人物:
[越智翔], [モブキャラA], [モブキャラB]
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各章の登場人物の一覧は、[]で囲ってあります。この記述は、登場人物紹介ページと一致するものとなっています。
登場人物紹介とあらすじは、今のところ、全編を通しての記載となっていますが、作品が長くなってきたこともあり、分割する可能性があります。
物語の進行にしたがって、このページは改訂を加える可能性があります。
ネタバレなどには、くれぐれもご注意ください。
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『序章』
日本の東京で派遣社員として働いていた佐伯陽は、年末にいきなり職場から解雇される。
夕暮れ時の街を歩きながら、自分の人生について回想していたが、いきなり暴走するトラックに撥ね飛ばされ、生涯を終える。
死後の世界において、なぜか意識と自我を取り戻した彼は、二度と生まれまいと考えて、転生を拒否する。
そこへ黒髪の男が現れて、取引を持ちかける。「指定した世界に生まれ変われば、お前は超能力を有する人間になれる」との提案に、迷いながらも、従うことにした。
登場人物:
[ファルス]
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『第一章 侘しき寒村』
生まれ変わった先は、貧しい寒村だった。村外れの高台の家にある一軒家が、実家だった。
生まれて一年経ってから、正式に「ファルス」と名付けられる。家名はわからない。
亜麻色の髪を持つ集団の中に、なぜか黒髪のまま生まれてきてしまったせいか、義父からは不義の子とみなされ、虐待される。母親もひどい女で、銅貨数枚と引き換えに、ファルスを淫らな老婆に引き渡したりした。
生きることに絶望していたが、祭りの日の夕暮れ時、村の聖域の奥に立ち入った際、白銀に輝く大鹿が姿を現す。ファルスは美しい沢の風景に、一時の癒しを得た。
生まれて二年半経った頃、リンガ村は深刻な凶作に見舞われる。村長はこの地を統治する伯爵に、税の減免を願い出るが、どうもそれが拒否されたらしく、決定的な食糧不足ゆえに、次第に村内は秩序をなくしていく。ファルスは飢えをしのぐために、ゴキブリすら食べなければいけなかった。
そんな中、ある日の夜、父母から温かな麦粥を与えられ、ファルスは安心して眠りこけてしまう。だがそれは、痺れ薬入りの毒粥だった。目を覚ましたファルスは、村の男に殺されそうになる。
その瞬間、ファルスは超能力「ピアシング・ハンド」に覚醒し、男の肉体を奪取して難を逃れる。
だが、村内では阿鼻叫喚の地獄が展開されていた。子供を互いに交換して殺害し、食べるという状況になっていたのだ。
混乱したまま実家に戻ったが、そこでも少年の死体と、それを解体する両親の姿があった。望んだわけでもないのに殺し合いになり、まず義父を、ついで母を殺害してしまう。
恐慌状態で村を飛び出したものの、今後、どうすればいいか思いつかない。とにかく逃げることにして、村の外に出たところで、川べりに布陣するアネロスと伯爵の私兵に遭遇する。一見、友好的な態度をみせたアネロスだったが、安心して横を通り抜けたところで、ファルスは槍に貫かれる。ついでアネロスの斬撃を受けて川に転落した。
晩秋の冷え切った川の中で、ファルスは奪った村の男の肉体を切り捨てる。しかし、元の肉体も弱り果てており、溺れそうになる。幸運にも、流れ行く木の板を見つけ、その上に乗ることで、なんとか危機を脱した。
登場人物:
[ファルス], [ファルスの義父], [ファルスの母], [リンガ村の村長], [リンガ村のエロババァ], [白銀の女神], [プノス], [アネロス]
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『第二章 収容所にて』
意識が戻ったのは、馬車の中だった。知らないうちに川べりに打ち上げられ、そこで拾われ、更には奴隷商人のミルークに売却されていたという。
こうして、エキセー地方にある海沿いの収容所にて、奴隷としての生活が始まる。だが、ファルスにとっては、利益の方が大きかった。言葉や歴史、常識について教えてもらうことができたし、リンガ村にいた頃と違って、食事の心配もしないで済むようになった。
だが、時折、悪夢にうなされた。リンガ村での虐殺の夜は、ファルスの心に深い傷跡を残していた。
三歳になり、超能力「ピアシング・ハンド」の実験を繰り返すようになる。だがその途中で、収容所内のガキ大将に目をつけられ、痛めつけられる。ファルスは和解のために、あえて彼らを見逃す道を選んだが、それが却って彼らの激しい憎悪を招き、殺されかける。反射的に、馬小屋の中にいる昆虫の肉体を奪って成り代わることで難を逃れたが、虫の肉体ゆえの激しい知能低下のために、自力では人間に戻れなくなった。
一週間後、運よく人間の肉体に復帰し、病室で目を覚ます。
登場人物:
[ファルス], [ウィスト], [ウィカクス], [ドロル], [デーテル], [タマリア], [ノーラ], [ジュサ], [ジル], [ミルーク], [先生]
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『第三章 この世界での幼馴染達』
ファルスは五歳になった。収容所内では優遇される立場になり、子供達相手に教師の仕事もこなすようになった。また、ミルークの商売の手伝いもさせてもらえるようになった。
ふとした事件から、トーキア襲撃事件について、ミルークの関与があったらしいことがわかる。
秋の終わりに、藍玉の市が開かれるのに合わせて、年嵩の少年奴隷達がオークションにかけられる。だが、景気の悪さもあって、一人も売れなかった。
収容所に帰ってきた後のミルークは、ずっと不機嫌だった。好奇心に駆られて手紙を盗み見てしまったファルスは、デーテルが変態貴族に惨殺された事実を知る。姉であるタマリアには言わないようにとミルークに念を押されるが、なぜか詳細が彼女に伝わってしまい、大騒ぎになる。
ファルス達は、一連の出来事から、実はミルークの執務室に入り込む方法があるのではないかと考えて、下水道から侵入するのに成功する。結局、タマリアに事実を知らせたのは、ドロルだったと判明した。
春になり、ファルス自身が参加するオークションの日が近付いてきた。恒例の外出先は、美しい湖だった。そこで子供達と憩いの時間を過ごし、タマリアを元気付ける。そして、ノーラから愛の告白を受ける。
登場人物:
[ファルス], [ウィスト], [コヴォル], [ドロル], [タマリア], [ノーラ], [ディー], [ジュサ], [ジル], [ミルーク], [先生]
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『第四章 オークション』
オークションを間近に控えたとある日、聖林兵団の軍団長であるゼルコバが、自らミルークの収容所を訪ね、犯罪奴隷三名を引き渡した。
犯罪奴隷達は態度が悪く、いきなりファルスに暴行を加えるなどした。しかし、これはいい機会であると考えた彼は、彼ら三名から、「ピアシング・ハンド」で能力を奪い取る。その能力の試験運用のため、ジュサに試合を申し込み、見事勝利する。
夜中にミルークに招かれ、語り合う。何か秘密があるに違いないと突き止めつつある彼に、ファルスは自分の前世での名前を教える。お返しに、ミルークは銀の指輪を贈った。
オークションでは、次々売れていった。とりわけノーラは、金貨二万枚という破格の値がついた。しかし、買い取ったのはラスプ・グルービー、不潔感あふれる商人の男だった。
ファルスは、競り合いの末、トヴィーティ子爵家に仕える執事、サウアーブ・イフロースに買い取られる。
登場人物:
[ファルス], [ウィスト], [コヴォル], [タマリア], [ノーラ], [ディー], [ジュサ], [ジル], [ミルーク], [先生], [イフロース], [グルービー], [アイビィ], [イリク・ウィッカー], [モータス・エトゥート], [ニトゥラ・プーハ], [ゼルコバ・ドレーヴォ]
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『第五章 総督官邸での日々』
子爵家は、想像以上に窮屈な場所だった。ファルスに割り当てられた職務は「接遇担当」というもので、とにかくオシャレして置物のようにじっとしていることだった。身分の違いによる差別も存在しており、我慢を重ねなければいけなかった。
サハリアに出航予定の船長が書類の受け取りを忘れて出かけようとしていたのに気付いたカトゥグ女史と秘書課が、ファルスに届けるよう無理強いする。身体操作魔術の力を借りてそれを成し遂げた彼は、もらったお小遣いで貯金箱を作った。
その貯金箱がリリアーナの手元に間違って届く。その翌日、彼女はまた家出したために、家中総出で令嬢を捜索することになった。ファルスはうっかり彼女を見つけてしまうが、救出時のトラブルもあって、むしろ罰を受ける破目になる。
そんな中、グルービーがピュリスにやってきた。金貨三万枚を積み上げて、ファルスを売って欲しいと持ちかけるが、ファルスはグルービーを警戒して、「下僕が主人を選ぶべきではない」という理由をつけて、それを拒絶する。
結局、ファルスは接遇担当を外され、子爵家のエリートコースから落ちこぼれる。
登場人物:
[ファルス], [イフロース], [グルービー], [アイビィ], [サフィス], [エレイアラ], [リリアーナ], [ウィム・エンバイオ・トヴィーティ], [イーナ・カトゥグ], [カイ・セーン], [ディン・フリュミー], [ラン], [ナギア], [ルード], [メイド長]
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『第六章 真夏の小旅行』
陸上交易部門に配属されたファルスは、カーンから金貨二十枚を与えられる。好きに運用して、利益をあげてみせろと言われ、使い道を考える。
コラプトで内陸製塩が行われていない事実を確認するため、ファルスは鳥の肉体を使って現地に向かい、街の中を歩き回る。ツルハシストを名乗る男達と出会ったり、グルービー直営の高級風俗店を覗いたりしながら、必要な情報を集めた。翌日には、ピュリス近郊の塩の産地であるブルカンに飛び、そこで塩を購入して総督官邸に運ばせる。
コラプトでは、塩を売り捌いて、薬品の原料を買い付けた。その際、偶然にガッシュ・ヨコーナーと出くわす。デーテルの件で、自分も痛い目をみた恨みもあって、彼から能力を奪取する。
ピュリスに戻ると、事件が起きていた。夜間のうちにリリアーナが行方不明になったという。召使総出で捜索に出る。見つけるつもりもなかったのに、ファルスは波止場でハンカチを発見し、リリアーナが並岸流によって市外に誘拐された事実を突き止める。だが、「ピアシング・ハンド」について知られるわけにもいかず、中途半端な報告しかできない。
誘拐の事実を知りながら見殺しにすることができず、ファルスは勝手に街を出て、一人で追跡に向かう。結果、王都とピュリスを繋ぐ街道沿いにある小道に痕跡を発見、更に追跡することで、リリアーナがいるであろう山塞を発見する。
だが、そこでキースが放っておいた怪鳥ヤシルの襲撃を受け、殺されかける。ヤシルの肉体を奪取することで命拾いした。山塞の情報を集めるため、翌日、ヤシルの肉体で潜入したが、誘拐犯達は追跡の手が及ぶ前に、早めにここを出ようとしていた。
強行突入を覚悟したファルスは、うまく忍び込んでリリアーナを連れ出しかけるが、その動きを先読みしていたキースの手回しによって、むしろ捕虜となってしまう。
真夜中に、リリアーナの横に転がされたファルスは、彼女の身の上話を聞かされる。
夜明け前、ファルスは切り札の身体強化魔術を用いて拘束を振り解き、強行突破を試みる。無数の傭兵を叩きのめし、上級冒険者のトゥダまでも打ち倒して脱出に成功しかけるが、そこでキースの待ち伏せに遭う。
戦鬼の異名をとるほどの強者を前に、ファルスは手も足も出ない。やむを得ず「ピアシング・ハンド」で決着をと覚悟するものの、既にギムその他の敵が集まってきており、その手も使えない。追い詰められたファルスは、リリアーナを連れて屋上に逃れるが、そこを怪鳥クズルが急襲する。咄嗟にクズルの肉体を奪い取り、ここでついに打つ手がなくなった。
だが、もしかしたらとの思いから、ファルスはリリアーナにヤシルの肉体を渡し、変身を促す。二人してデスホークになって空を飛び、なんとかピュリスに帰還した。
登場人物:
[ファルス], [イフロース], [サフィス], [エレイアラ], [リリアーナ], [カーン], [ガッシュ・ヨコーナー], [ヤシル], [クズル], [コーザ・モーブ], [オブリ], [トゥダ], [ギム], [キース]
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『第七章 港湾都市の日常』
召使用の料理があまりにひどく、ケチをつけたところ、厨房担当の下僕達から集中的にいじめられるようになった。ある日、あまりにまずいスープに我慢ならず、食べずに食堂を抜け出したところ、セーン料理長相手の喧嘩にまで発展した。割って入ったエレイアラが料理勝負を提案する。
あまりにトラブルが多いファルスに対して、子爵家首脳部は、総督官邸の外で働かせることを考える。グルービーから新規出店の提案があり、アイビィが派遣されてくる。イフロースはこれを了承し、ファルスは陸上交易部門を外れて、市内の薬品店の店長を任されることになった。
アイビィは、子供のファルス相手に「仕える」立場を堅持して、接近してくる。グルービーの派遣した間者であるとわかっているファルスは、警戒心を解かない。
薬品店では、単なる薬品の製造販売だけでなく、市内の衛生環境の向上を目標とする方針を掲げる。最初は周囲の薬品店からの嫌がらせも受けた。
セーン料理長は、先の料理勝負から、ファルスの人並み外れた料理の才能に目をつけ、これを惜しむあまり、市内在住の酒場兼宿屋の店長に、ファルスの面倒をみてくれるようにと頼む。結果、ファルスは、薬品店の店長をしながら、居酒屋でのアルバイトもこなさなければならなくなった。
酒場では、特に冒険者を中心に、顔なじみができた。男装の美少女・ウィー、彼女と同じパーティーに属するガッシュ・ウォー、ドロル・クォース、ハリ・テアテミーなどと親密になっていく。
リリアーナは、ファルスに救出された時の事をよく覚えていて、以来、やたらと懐いてくるようになった。そのことが、良くも悪くも召使達の目にとまるようになる。
年末の祭りの時期に、一人、ピュリス市の喧騒を見下ろしながら、ファルスは星空を眺めて、過去と未来に思いを馳せる。
登場人物:
[ファルス], [イフロース], [サフィス], [エレイアラ], [リリアーナ], [ウィム・エンバイオ・トヴィーティ], [カーン], [イーナ・カトゥグ], [カイ・セーン], [ナギア], [アイビィ], [ウィー], [ガッシュ・ウォー], [ドロル・クォース], [ハリ・テアテミー], [マオ・フー], [店長], [ケイン・ウダーマ]
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『第八章 内海を越えて』
春になり、そろそろ七歳という時期に、イフロースはファルスに、ピュリス対岸のムスタムに向かう船に乗って見聞を広めるよう、命令する。
乗船する船は、子爵家の二号艇で、船長はディン・フリュミーではなく、秘書課上がりのメックだった。頼りない感じだが、なんとか船はムスタムに到着する。
現在のフリュミーの子爵家での立場は、非常によくないものとなっている。妻のランは子爵家に代々仕える家の出身で、守旧派の中心人物でもある。一方、フリュミー自身はイフロースの判断で子爵家に呼び込まれた、いわば改革派の一員でもある。ところが彼自身は、船乗りの論理で動くため、主人の家がすべてのイフロースとは、なにもかもが噛み合わない。騎士の腕輪を授かりこそしたものの、二号艇が彼の手を離れたら、干されるのが目に見えている。
ムスタムでファルスは、日々仕事に追われ、体調を崩す。最終日の夜には、メック達が風俗店に足を運ぶが、それとわかったファルスとフリュミーは、席を外して焼肉を食べに出た。
帰りの航海で、フリュミーは嵐の予兆を発見する。メックに退避を強く要求するが、無視される。結果、暴風雨に巻き込まれ、二号艇は座礁、一行は島に上陸する。だが、多数の死傷者を出した上に、翌朝には海賊に囲まれてしまった。
なんとか危地を脱したファルスだが、フリュミー達が捕虜になってしまう。なんとか生還をと考えるファルスは、海賊達の小屋にこもるシンを誘い出す。剣術の能力を奪われても、シンは《幻影》の神通力と格闘術とを駆使して、ファルスを追い詰める。
なんとか小屋に辿り着いたファルスは、身体強化に必要な薬の予備を取り出して服用、戻ってきた海賊達を一掃する。その後、薬の効果が切れる前に、ゾークに追いつき、戦いを挑む。紙一重のところで勝利を手にして、海賊達を捕虜とした。
帰りの船で、傷病者を治療する。自分が重傷を負わせたキャサルの死にゆく姿に、ファルスは思い悩む。
帰還後、ファルスは海賊退治の功績を認められ、金貨一千枚を与えられる。また、リリアーナやアイビィから、誕生日を祝ってもらう。
登場人物:
[ファルス], [イフロース], [リリアーナ], [ディン・フリュミー], [ラン], [ナギア], [ルード], [メック・ナキュウァ], [アイビィ], [ウィー], [ガッシュ・ウォー], [ドロル・クォース], [ハリ・テアテミー], [店長], [カイ・ゾーク], [シン・フック], [キャサル]
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『第九章 罠と批難とお荷物と』
ムスタムから帰ってから、ファルスは何かに憑かれたように働きまくっていた。その原因に心当たりのあるアイビィは、表情を曇らせる。
市内で最も不潔な売春宿の浄化を引き受けたファルスは、そこでむごたらしい扱いを受けている女奴隷達を発見、激怒する。店長を務めるオカマ野郎から奴隷達を買い取って追い出し、彼女らを引き取った。
しかし、これに対する世間の反応は冷たかった。ビルの所有者を名乗る男は、苦情を言った上でビルの清掃を要求してきたし、とりあえずの寝床を与えた宿屋の店長も、不安を隠そうとしない。おまけに、救出されたはずの奴隷の一人、ガリナは、ファルスに激しく反発した。
女奴隷達の引き受け先を探して、ファルスはあちこちに頭を下げて回るが、結果は思わしくない。そんな中、セリパス教会の司祭を務めるリンが、ファルスと子爵家を弾劾する。ファルスはサフィスに叱責され、暴徒が宿屋に集まり、女奴隷達を痛めつける。
ファルスは、自分の「善意」が、実は過去の殺人についての贖罪を求める気持ちから出ているだけの、まやかしであると気付く。
その上で状況を整理し直し、どうすべきかを考えた。ビルの所有者であるタラムが、黒幕との繋がりを持っていると考え、捕らえて事実を自白させる。また、リンに接触したシュライ人の女が、裏で暗躍している人物であると気付き、追跡を始める。
マオ・フーの提案に従い、ファルスとアイビィは、海沿いの高台で敵を待ち受ける。姿を現したクローマーは、三種の神通力を有する強敵だった。だが、決着がつく前に、マオ・フーはじめ冒険者達、神官戦士団、それに子爵家の私兵が駆けつける。クローマーは形勢不利と悟って、夜の海に飛び込んで逃れた。
女奴隷達を街から追放しようとするリンは、実はヘビーゲーマーだった。ファルス達は罠を張り、司祭ともあろうものが賭けゲームに夢中とバラされたくなければ、攻撃をやめろと彼女を脅迫する。
しかし、女奴隷達の引き取り先は見つからず、結局、ファルスが一時的に売春宿の店長を兼任する形となった。
登場人物:
[ファルス], [イフロース], [サフィス], [エレイアラ], [リリアーナ], [アイビィ], [ウィー], [ガッシュ・ウォー], [ドロル・クォース], [ハリ・テアテミー], [マオ・フー], [店長], [オカマ野郎], [タラム], [リン], [ザリナ], [ガリナ], [リーア], [エディマ], [シータ・ダーマ], [フィルシャ], [ディー・アスリック], [ウーラ・レータ], [ステラ・レータ], [カーナ・イノーモ], [テニヤ・ヤヴォー], [サディス], [エウーム], [クローマー]
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『第十章 交錯』
イフロースは、サフィスとファルスの関係性の悪化が決定的であるとみて、それでもファルスを手元に残すために、自ら剣術の指導をすることにした。
ファルスは、引き取った娼婦達を救うため、グルービーに頭を下げて、グルービー商会の名前を借りて、売春宿を復活させる。前世のエロ知識を生かして、彼女らを稼げるプロへと育てていく。
また、不老不死を求めて、世界を旅する準備を重ねる。リンからは、聖女リントの不死伝説を聞かされ、東方からやってきたユミからは、不老の姫巫女の存在を知らされる。また、南方大陸の大森林には不老不死をもたらす果実があるらしい。東方大陸には、やはり不老の人々が住むという聖なる山がある。これらの目的地についての調査を重ねる。
リリアーナの呼び出しを受け、半ば脅される形で、一日だけ彼女と入れ替わる。リリアーナの実生活がどんなものかを身をもって体験し、ファルスはその煩わしさに怒りを感じる。
故郷のティンティナブラムから領主である伯爵がやってくる。彼は、客先でも淫らな行為をやめられない、いやらしい人物だった。会食が終わった後、廊下を移動中に、壁に黒い矢が突き刺さる。イフロースが主人と伯爵を守るために前に出るが、そこへ二本目の矢が放たれる。復讐の意志表示をした犯人は、無事に逃げおおせた。
登場人物:
[ファルス], [イフロース], [サフィス], [エレイアラ], [リリアーナ], [ウィム・エンバイオ・トヴィーティ], [ナギア], [アイビィ], [ウィー], [ガッシュ・ウォー], [ドロル・クォース], [ハリ・テアテミー], [マオ・フー], [ユミ], [店長], [リン], [ガリナ], [リーア], [エディマ], [シータ・ダーマ], [フィルシャ], [ディー・アスリック], [ウーラ・レータ], [ステラ・レータ], [サディス], [オディウス]
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『第十一章 故郷』
ファルスは、いくつかの目的をもって旅に出る。
まず、コラプトに向かい、グルービーとの約束通り、面会を果たす。噂通り、彼は淫らでどうしようもなく自堕落な生活を送っていた。子供が相手でも容赦なく女を勧めてくるありさまで、専属のエロメイドをプレゼントするなどと言い出す始末だった。しかし、コラプト出発の前夜には、彼の知性を窺える機会があった。
ノーラの生活を垣間見ることもできた。再びファルスに出会う日を夢見て、彼女はたゆまず努力を重ねていた。
その後は、グルービーがつけてくれたイーパに、旅の水先案内人を任せる。道中、イーパにアイビィの過去を尋ねたところ、彼女は海賊によって全滅した村の出身であるとわかった。
シュガ村で、かつてファルスを売り飛ばしたナイススに出会う。その息子ジョイスが、山賊まがいの行動を繰り返していると知って、ファルスはこれを打ち負かし、捕らえる。そのまま旅の同行者に加えて、ティンティナブラム城に向かう。
ティンティナブリアは荒廃しきっていた。城下町は無人状態だった。伯爵に、子爵からの手紙を渡し、返事を待つ間、城下の村で時間を潰すが、その時、スラムの老婆が殺害される事件に巻き込まれる。この後、ジョイスに打ちのめされた兵士が逆恨みして、ファルス達のいる小屋を襲撃した。このままではジョイスが殺されると考えて、ファルスはその兵士をピアシング・ハンドで消し去る。
せっかく肉体を奪ったのだからと、ファルスは兵士になりすまして、城内に潜入する。だが、そこでルースレスに、アネロス相手の命懸けの試合をするように命じられる。
なんとかその場を切り抜けたファルスは、アネロスに呼び出される。その後、城内を歩き回って有用な情報を見つけようとしたところ、リンガ村の過去の神についての記述を発見する。
城内を歩き回る不審者として、ルースレスに捕縛され、拷問を受ける。隙をついて拘束を逃れ、城の高楼から、兵士の肉体を捨てながら鳥に変身し、難を逃れる。
帰り道に、ファルスはイーパに頼んで、リンガ村に立ち寄ってもらう、自分の実家や広場、あの美しかった沢を見ようと歩き回るが、残っていたのは惨劇の残骸ばかりだった。暗い気持ちになって、馬車に戻る。
ヌガ村では、領主が重い病にかかっていた。そこで身を休め、ピュリスに帰還したファルスだったが、イフロースへの報告中に発病。昏倒して意識を失う。
夢魔病のもたらす地獄の苦痛の中で、ファルスは自分の過去を思い出す。改めて死を受け入れたところで、白銀の女神が姿を現し、ファルスに神の飲料を与え、回復を促す。
病から回復する中で、大勢の人の善意と愛情に触れ、ファルスは、ここピュリスが自分の故郷になったのだと自覚する。
登場人物:
[ファルス], [イフロース], [カーン], [リリアーナ], [ナギア], [ディン・フリュミー], [アイビィ], [ウィー], [ガッシュ・ウォー], [ドロル・クォース], [ハリ・テアテミー], [マオ・フー], [ユミ], [店長], [リン], [ガリナ], [リーア], [エディマ], [シータ・ダーマ], [フィルシャ], [ディー・アスリック], [ウーラ・レータ], [ステラ・レータ], [サディス], [ジョイス], [ナイスス], [オディウス], [グルービー], [スィ], [イーパ], [シトール], [コーザ・ハヤック], [ルースレス], [アネロス], [ノーラ], [白銀の女神]
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『第十二章 花咲く王都にて』
春先、ファルスは奴隷身分から解放され、リリアーナの傍で、学友として振舞う役目を与えられていた。また、王都に向かう際には従者の役割を果たさねばならないので、それに備えて様々な勉強に追われ、店の仕事に集中できなくなった。
一方、ガッシュ達は、冒険者としての更なるキャリアアップを目指して、ムスタムの魔物退治の仕事を請けようとするが、頼みの綱のウィーが、実家に帰るとのことで、それを断念することになった。
王宮で催された夜会で、ファルスはついにスード伯ゴーファトの姿を見る。彼に対してなぜか本能的に恐怖や嫌悪を感じ、その理由を考える。ベランダで休憩している最中に、病気がちの老貴族クレーヴェと出会い、またその従者を務めるウィーともばったり顔を合わせてしまう。
子爵家の選抜メンバーが王都の別邸に到着してまもなく、王太子タンディラールとの茶会に出向くことになる。そこでファルスは、奴隷身分出身であることを咎められ、グラーブ王子その他から、立ち去るように求められる。それどころかアナーニア王女は、ファルスに罰を下そうとした。
茶会の最中に発生した揉め事にタンディラールは、イフロースの提案を容れて、模擬戦での決着を命じる。従者を務めるベルノストは、ファルスに一方的に打ち倒され、こうしてイフロースの思惑通り、王家との必要以上の接近を妨げる結果となった。
その日の夜、ファルスはイフロースに呼び出され、今後とも子爵家の中で活躍して欲しいと要請される。これに対して、不老不死を求める旅に出るつもりであることを明かすと、イフロースはそれがファルス自身のためにはならないだろうと警告し、自分の人生を語り聞かせつつ、有意義な時間を過ごすよう助言する。
王都での自由行動を許された際、セーン料理長の要望で、ダングの店で修業する。またファルスは、偶然、ティンティナブラム伯の名代を務めるレジネスが、冒険者の真似事をしているのを発見する。
クレーヴェの屋敷に出向き、ウィーの素性について教えてもらう。ウィーからはクレーヴェとの関係について聞かされる。クレーヴェからはウィーの力になってやって欲しいと頼まれる。
国王即位二十周年を記念する武闘大会で、キースは買収されていたにもかかわらず優勝する。それを、見物していたファルスとリリアーナが見つけてしまい、ファルスが誘拐事件の真相について、キースを問い詰めにいく。
キースは、真剣に交際したい女性がいるため、見逃して欲しいと言い出し、事件について知っていることを口にする。また、優勝賞品の剣を口止め料として差し出す。
フォンケーノ侯爵家との面会で、サフィスは屈辱的な取り扱いを受ける。侯爵の次男グディオは太子派に擦り寄ろうとしたが、イフロースがデメリットを考えて、差し止める。また、三男ドメイドと四男シシュタルヴィンは、両家の婚姻を提案する。
この提案から、ドメイドがリリアーナ誘拐事件の黒幕ではないかと疑ったファルスだが、キースの調査により、ドメイドにはそうした性的嗜好がないことが判明する。この調査の見返りに、ファルスはキースの求婚を手伝うことになったが、その相手は、クレーヴェの元にいるウィーだった。キースを紹介したファルスだが、キースの粗暴な態度にウィーは激怒し、結婚を賭けての決闘にまで発展する。
王都でのイベントの最後に、各軍団のパレードを見物する。ファルスは、自分の生き方と目標について、迷いが生じるのを感じる。
登場人物:
[ファルス], [イフロース], [リリアーナ], [ナギア], [ウィー], [ガッシュ・ウォー], [ドロル・クォース], [ハリ・テアテミー], [ユミ], [店長], [タンディラール], [ソルニオーネ], [グラーブ], [リシュニア], [アナーニア], [ティミデッサ], [ベルノスト], [フラウ], [クレーヴェ], [ゴーファト], [ショーク伯], [ファンディ侯], [ケアーナ], [レジネス], [フオラ], [ウィム・ティック・ヴァイシュー], [ゼルコバ], [バルド], [ユーシス], [ベラード], [ウェルモルド], [ラショビエ], [アルタール], [ジャルク], [カリャ], [フォンケーノ侯], [エルゲンナーム], [グディオ], [ドメイド], [シシュタルヴィン]
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『第十三章 密林の異変』
雨季の終わり頃、セリパス教会のリンは、王国南西部の海岸地帯で、正体不明の疫病が流行しているとの報告を受ける。教会としては救援事業を行う必要があり、多くの冒険者を雇い入れて、現地に派遣する。その際、ファルスにも声がかかる。いったんは拒絶したファルスだが、子爵直々の命令により、結局は行くことになる。リンは一応気を遣って、ファルスの顔見知りの冒険者達を同行させる。
ファルスは、途中に立ち寄ったブルカンの村で、ゴキブリなどから病原菌耐性などの能力を奪い取り、同行者達を守る準備をする。ウィーと二人きりになった際に、王都でのキースとの決闘について話す。
途中、馬車の故障のため、一行は村落の廃墟で休憩をとる。実はそこは、失われたアイビィの故郷だった。昼間には笑顔を見せた彼女だったが、夜には一人、村人達の墓の前で涙を流す。
目的地であるタンパット村付近で、ゴブリンの群れが移動しているのを発見する。村人の危険を考えて、一行は奇襲をしかけて、ゴブリンを撃退する。
現地に到着し、ファルス達は救護活動を開始する。村人は、いったんは回復していたらしいが、一行が到着した時点で、重症化していた。
翌日、ウィーが見慣れない足跡を発見し、一行は警戒態勢をとる。夜間、村に侵入者があり、交戦に至る。その際、敵の殺害を躊躇ったファルスに対して、アイビィは容赦ない暴力を浴びせ、厳しく叱責する。
更に翌日、一行は相談の末、付近に潜む海賊に対して、夜襲をしかけることを決める。しかし、いざ、乗り込んでみると、海賊達は疫病に倒れていた。
そのうち、村人達は自然に回復した。疫病の原因は明確にできなかったが、一行は救護活動を打ち切り、ピュリスに帰還する。
一連の出来事から、ファルスは自分の生き方を反省し、剣を捨てようと決心する。だが、それをアイビィは泣きながら止める。
登場人物:
[ファルス], [アイビィ], [ウィー], [ガッシュ・ウォー], [ドロル・クォース], [ハリ・テアテミー], [ユミ], [リン], [サディス], [アピー]
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『第十四章 ピュリスの騒擾』
冬になる頃、ファルスは穏やかな日常生活を楽しんでいた。ジョイスが新たな神通力に目覚めたり、ウィーが身体の成長に悩んだり、アイビィが熱心に神殿で祈るようになったりと、いろいろ小さな変化はあったが、概ね日々平穏といえた。
ところがある日の朝、いきなり街を沈黙が襲う。通行人が一人もいない異常事態に、ファルスは自宅を出て、身の安全を図ろうとする。原因は疫病で、半年前にタンパット村を見舞ったのと同じ症状が、街中に広がっていた。
そのうち、市内の南西、南東、北側から、それぞれ海賊とみられる集団が突入し、各所で攻撃を加えてきた。安全を求めて総督官邸まで避難したファルス達だが、自衛の必要に迫られた。イフロースの指揮の下、軍港を制圧した海賊達の頭目・タロンと戦い、これを討ち取る。しかし、この戦いの最中、ウィーが行方不明になる。
負傷者が増えたこともあり、また妹を助けにいったジョイスを保護するためにも、救援を求めて、ファルスはセリパス教会に向かう。途中、何者かに襲撃されたジョイスを発見、教会でリン、サディスを連れて戻る途中に保護する。また、ガリナ達とも合流し、自宅の薬剤を持って官邸までくるように手配する。
先に報告のために官邸に急ぐ途中、ファルスはクローマーと遭遇する。彼女から「復讐」が始まるとの情報を与えられ、ファルスは急いで官邸に向かう。そこでは、行方不明だったはずのウィーが、疫病に倒れたサフィスを襲撃していた。駆けつけたイフロースは体を張って彼を守るも、防ぎきれない。あとはサフィスを殺すだけというところで、リリアーナが彼を庇った。その姿に過去の自分を幻視したウィーは、ついにサフィスを殺しきれず、逃げ出した。
なんとか海賊達との戦いを一段落させたところで、リンはジョイスの症状をファルスに告げる。ジョイスには、何らかの魔術がかけられていた。治療を施したところ、ファルスに会いたいと言い出したという。二人きりで話をするが、ジョイスは意味のあることを話せない。だが、いきなり声色が変わり、グルービーからのメッセージをファルスに告げる。
ファルスは、自分の超能力「ピアシング・ハンド」の秘密を知られかけていると判断し、またピュリス襲撃の黒幕でもあると考えて、グルービーを捕らえるため、コラプトに旅立つ。
だが、コラプトでは、既にファルスを迎え撃つ態勢が整えられていた。街周辺の野生動物は狩りつくされ、街には人相書きが出回っていた。困り果てたファルスは、地下水路からグルービーの邸宅に侵入し、少女奴隷に変装して動き回ることにした。しかし、その作戦も見抜かれており、あっさり塔の中に誘導されてしまう。
塔の中には、グルービーが用意した刺客達が待ち受けていた。どこかからグルービーの声が聞こえるので、近くに彼がいるものと判断して、ファルスはこれらを打ち倒して先に進んだ。グルービーは、超能力「ピアシング・ハンド」の謎の大半を解き明かしており、罠にかかったファルスは、その発動の瞬間まで目撃されてしまう。そして最後に、弱点をつくために用意されたゴーレムの集団によって、完全敗北に追い込まれる。
牢獄に閉じ込められたファルスに、助かる余地はなかった。だが、女神の導きによって駆けつけたノーラが壁に小さな穴を開け、そこから脱出することができた。彼女の肉体を借りてファルスはグルービーに近付き、彼を樹木に変える。
こうして安全を確保したファルスだが、その行為が限りなく殺人に近いと知ったノーラは、それに強い不安を抱く。
その後、アイビィがグルービーの元に帰還するが、会話の結果、中身がファルスであるとすぐに見抜く。アイビィは、グルービーへの義理と、ファルスへの愛情から、あえて戦って死ぬことを選んだ。
グルービーの財宝と魔術書、能力を手に、ファルスは無事、ピュリスに帰還した。しかし、自分のした行為がどんなものか、そしてアイビィの気持ちがどうであったかを思い返して、絶望に堕ちる。
登場人物:
[ファルス], [イフロース], [カイ・セーン], [イーナ・カトゥグ], [メイド長], [サフィス], [エレイアラ], [リリアーナ], [ウィム・エンバイオ・トヴィーティ], [ナギア], [アイビィ], [ウィー], [ガッシュ・ウォー], [ドロル・クォース], [ハリ・テアテミー], [マオ・フー], [ユミ], [リン], [ガリナ], [エディマ], [ディー・アスリック], [サディス], [ジョイス], [バルド], [グルービー], [スィ], [ノーラ], [タロン], [モライカ], [マルテロ], [カンプス], [クパンバーナー], [トライノー], [クローマー], [リック・コルコック]
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『第十五章 色のない街』
事件後、ファルスは、顔面に不気味な仮面が貼りつく、奇妙な夢を見るようになった。
海賊達によるピュリス襲撃によって、市内は打撃を受けていた。サフィスは総督としての責務を放擲し、その後始末をイフロースが引き受けていた。ファルスは、市内の改修計画を策定する。
ノーラがコラプトから、ファルスを訪ねてやってきた。ピュリスで一緒に暮らしたいという希望に沿って、ファルスは女神神殿、総督官邸、セリパス教会を渡り歩く。
ユミがガッシュ達の仲間から抜けたいと言い出す。理由を述べずに立ち去ろうとするが、そこへイフロースが私兵を連れて現れる。ユミは東方大陸のワノノマ移民の豪族、ヒシタギ家の捜索を受けており、発見されたために、ここで強制送還される。
ジョイスの見舞いに行ったファルスは、彼にかけられた謎の呪いを目にする。精神操作魔術では説明のできない挙動に、マオ・フーとファルスは、「使徒」のもたらす恐るべき災厄を予感する。
ファルスは、再び不死を目指して旅する可能性を考えて、冒険者登録を申請する。試験において、トロールの劣化種の家族を見つけ、虐殺する。
ディン・フリュミーは、妻ランとの離婚が確定し、子爵家から解雇された。ナギアはそれを覆そうと奮闘するが、どうにもならない。その過程でファルスは、ルードが実は他所の男の子供であること、ランが更なる地位を求めて王都の貴族相手に不倫に及んだことなどを知ってしまう。結局、ディン・フリュミーはムスタムに去るが、リリアーナに仕える決心をしたナギアは、父に別れを告げる。サーシャは、そんな姉の代わりに、父と共に去っていった。
ガッシュ・ウォー達は、冒険者としてのステップアップのため、ここでパーティーを解散すると決断する。
リリアーナの正式婚約を告げる手紙が偶然発見され、イフロースはこれを阻止するために、エレイアラと共にサフィスを説得する。しかし、一切聞き入れようとしない彼の態度に覚悟を決め、リリアーナ、エレイアラ、ウィム、ナギアを連れて官邸を出る。翌日の船でピュリスを出るつもりで、ファルスの家に一泊するが、翌朝、サフィスが折れて、元の鞘に収まった。
ファルスはエディマ達から、最近、仕事を真面目にしなくなったシータに、恋人ができたらしいと聞かされる。それに喜んで、祝いの料理を手に彼女らの職場に駆けつけるが、シータは夜遅くなっても帰ってこなかった。事故や事件に巻き込まれた可能性を考えて、ファルスやガリナ達は、それぞれ行き先を探すが、その過程で、シータが脱走を企てていることに気付いてしまう。波止場で彼女を発見し、戻ってくるよう説得したが、シータはあえて自ら騒ぎを起こし、当局に捕縛される道を選んだ。
登場人物:
[ファルス], [イフロース], [サフィス], [エレイアラ], [リリアーナ], [ウィム・エンバイオ・トヴィーティ], [ナギア], [ラン], [ルード], [ディン・フリュミー], [サーシャ], [ガッシュ・ウォー], [ドロル・クォース], [ハリ・テアテミー], [マオ・フー], [ユミ], [店長], [リン], [サディス], [ノーラ], [ザリナ], [ガリナ], [リーア], [エディマ], [シータ・ダーマ], [フィルシャ], [ディー・アスリック], [ウーラ・レータ], [ステラ・レータ]
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『第十六章 消えた王冠』
ファルスは無気力になっていた。官邸での仕事が忙しい中、数ヵ月後に迫った契約更改を待ち侘びていた。不死を求める旅に出る望みは、日に日に強まる一方だった。
老王セニリタートの病状悪化が伝えられる中、タンディラールへの譲位が決まったとのことで、王都に貴族達が緊急招集された。子爵一家が王都に到着するやいなや、様子見のためにあちこちから貴族や武官達が挨拶に詰め掛ける。中でも、政敵であるはずのウェルモルドは、図々しく居座って夕食まで共にした。
ファルスはイフロースの指示に従い、王都で情報屋との接触を図る。だが、それには失敗し、代わりにキースと出会った。キースがもたらした情報によると、王都には『屍山』ドゥーイに代表される危険な傭兵が集まっているとのこと。一夜明けて別邸に引き返すファルスは市内を警備するウェルモルドに発見され、朝食を一緒に食べながら話をする。
ところが行き違いがあって、ファルスが帰宅する頃には、サフィスの元にタンディラールの使者が来ていたため、長子派との内通を疑われる結果となった。急に一家は王宮に招かれ、タンディラールと話をすることになる。その席でタンディラールは、サフィスやファルスの成功や失態について語り、揺さぶりをかける。
翌日の戴冠式のために謁見の間に向かうと、そこには寝台の上に横たわるままのセニリタート王がいた。タンディラールは王への礼を求めたが、数日間、既に死んだ王への挨拶が続き、貴族達は我慢の限界に達する。加えて、伝国の王冠の喪失が発覚し、貴族達は黙って王宮を去る。
太子たるタンディラールのこの上ない失態に、サフィスは絶望し、寝込んでしまう。動けずにいるうちに王都の情勢は急速に悪化した。ドゥーイ率いる傭兵団が疾風兵団の詰所を襲撃し、内紛の火蓋が切られる。それと知ったイフロースは一家を逃がすために夜間、脱出を試みるが、城壁に設置された攻城兵器に馬車を破壊され、市内への潜伏を選択せざるを得なくなった。
スラムに身を隠して三日、ファルス達は迷い込んだエルゲンナームを保護する。相談の結果、サフィスは彼と共にフォンケーノ侯の私兵を借りるべく、貴族の壁を越えるが、そこで乱心したドメイドにより襲撃を受ける。イフロースとはぐれた後、ファルスは二人を保護するため、後宮を包囲する長子派軍を突破した。
スラムに引き返す方法を検討するファルスは、偶然、看護師イータと出会う。彼女は、安全に壁を越える方法があるという。彼女に従って貴族の壁の内側を移動する途中で、キースの襲撃を受ける。困難な話し合いの結果、彼を説得すると、協力してモールが監禁されている牢獄に向かう。そこでウィーと出会う。
ベレハン男爵の支援を受けて、兵士の壁の外側に出て、用意された家に到着する。しかしそこで、火魔術での攻撃を受ける。実は、この隠れ家を用意したドゥリアは、最初からモール達を謀殺するため、ルースレスと繋がっていた。
なんとかこれを撃退すると、ファルス達は近くの民家に飛び込んだ。ウィー達の一応の安全を確認して、ファルスはスラムに急いで引き返す。だが既に、エレイアラはアネロスの手にかかり、殺害されていた。
怒りと自責の念にかられて、ファルスは内紛を終わらせるべく、移動中のウェルモルドを殺害しようとする。しかし、重傷を負わせるにとどまり、いったんイータ達の潜伏先に戻る。そこでウィーがクレーヴェと会うために外に出たと知り、急いで追いかける。だが、発見できなかった。
先にクレーヴェの自宅についてしまい、そこで彼がクローマーやパッシャと通じていることを知る。そこから逃走後、ファルスは王都の戦乱に駆けつけたバルドと出会う。
スラムに引き返すと、イフロースが戻っていた。サフィス以外の一家を逃がすために、その日の夜に市民の壁を越える。そこで檻の中のオディウスを発見する。流民の壁を越えるところで、駆けつけたカーンに一家を托し、イフロースとファルスはサフィス救出のため、引き返す。
既に各門で援軍と長子派軍、伯爵軍の衝突があり、混乱が続くため、王宮に向かうことができない。北門付近でファルス達はキース、ウィーと合流し、協力して内部に向かうこととなった。しかし、遠目に見ても王宮内の戦闘は最高潮に達しており、イフロースの目的は果たせそうになかったため、当面の目標を仇討ちに変更。フォンケーノ侯の邸宅に向かい、ドメイドを狙う。だが彼は、弟のシシュタルヴィンに殺害されてしまった。
王宮への侵入経路として、ファルス達は地下牢を経由する。そこでルースレスが、自分の素性を知るドゥリアを始末してから逃亡しようとしているのに気付き、謁見の間で戦いを挑む。一人逃げ出したルースレスの肉体を、ファルスがピアシング・ハンドで奪い取り、後宮への総攻撃を止める。
戦闘中にはぐれたウィーを追うと、そこにクローマーが現れる。不吉な言葉に急いで駆けつけたが、ウィーの復讐を止めることはできなかった。
やるせない思いのままに、キースはドゥーイ達が潜伏する区域に突入し、夜明けまで殺し合った。
ファルスは一連の事件について、納得したいという思いから、ウェルモルドの居場所に向かう。そこで彼から、過去の遺恨についての話を聞く。
ファルスは檻の中のオディウスを解放し、それをティンティナブリアの流民に殺害させる。その後、戦場を後にしようとするアネロスを待ち伏せ、戦いを挑み、ついに復讐を遂げる。
登場人物:
[ファルス], [イフロース], [カーン], [カイ・セーン], [イーナ・カトゥグ], [サフィス], [エレイアラ], [リリアーナ], [ウィム・エンバイオ・トヴィーティ], [ナギア], [ウィー], [ノーラ], [クローマー], [タンディラール], [ソルニオーネ], [グラーブ], [リシュニア], [アナーニア], [ティミデッサ], [ベルノスト], [フラウ], [クレーヴェ], [バルド], [ユーシス], [ウェルモルド], [ラショビエ], [アルタール], [ジャルク], [カリャ], [フォンケーノ侯], [エルゲンナーム], [ドメイド], [シシュタルヴィン], [エマス・スブヤンシ], [オディウス], [ルースレス], [アネロス], [ドゥーイ], [スナーキー], [イータ], [モール], [ドゥリア], [デルム], [オティッシュ], [ベレハン男爵], [クルボン], [ポダーニ], [ヤーシュル・タンパ]
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『第十七章 旅路へ』
ファルス達はエレイアラの遺体をピュリスに運び、そこで葬儀を執り行った。妻の死に衝撃を受けたサフィスは、己の前非を悔いていた。
葬儀だけでサフィス達と共に王都に引き返したファルスは、エマスの処刑を目撃する。王冠喪失の黒幕がタンディラールの命令を受けた彼であることがはっきりした。
別邸到着後、サフィスはすぐにタンディラールの呼び出しを受ける。以前のように気軽に酒を飲もうと持ちかけるタンディラールだったが、サフィスは既に、彼の人となりを見抜いていた。そこへオディウスの息子であるレジネスの首が持ち込まれ、仲間だった冒険者達が手柄を訴える。これでティンティナブリアを掌中にできると喜んだタンディラールは、怒りを装って彼らを殺害する。
一通りの粛清が済んだ時点で、彼は息子達に意見を求めた。最後に、リシュニアの侍従を務めるフラウを問い詰め、隠れ長子派であることを明らかにして、監獄に送り込む。
翌日は戴冠式だった。アルタールが大将軍に任命され、サフィスは伯爵位を与えられた上で、建設大臣に任命された。結果、ピュリスの支配を失うこととなった。この動乱に際して活躍したキースは、タンディラールの招きを受けてやってきたが、名誉貴族の印璽を叩き落して去っていった。ファルスは騎士の身分を与えられた。
祝賀の夜会に出席したファルス達だったが、サフィスは既に、権力争いに興味を感じておらず、早々に去っていった。有力者からの声がけに嫌気が差したファルスは、窓辺で変装したイータに出会う。ウィーが監獄に囚われていると知らされた。夜会から立ち去る時、ファルスはアルタールに声をかけられる。
ファルスは人目を忍んで王宮の監獄を突破し、ウィーを連れ出した。彼女に生きる意志があるかを確認した上で、以前に奪ったルースレスの肉体を与えた。頭髪を残らず剃って、変装させた上で、偽造された身分証を持たせて、西の国境から出ていくよう手配した。
ピュリスに帰る前日、ファルスはタンディラールに呼び出され、二人きりで話す。タンディラールは、今回の残虐な内乱について、ファルスが半ば怒りを感じていることを察して、あえて挑発的な態度で接する。その上で、戦いの必要性を説明し、ファルスの未熟さを指摘した。
ピュリスに帰って二ヶ月、官邸は混乱に陥った。雇い止めとなる使用人達は仕事をしなくなり、ファルスも早めに年末の休みを取ることになった。既に修行の旅と称して、伯爵家を離れることを公言していた。それについて、カイ・セーンは賛成したが、ナギアは立ち去るファルスに話しかけ、留まるようにと説得する。
ファルスはリンからセリパス教関係者への紹介状を受け取る。自宅の清掃を行い、アイビィの個室も整理する。その上で、知り合いを集めて、ガリナ達奴隷の所有権をノーラに移し、自宅にジョイス、サディスを住まわせると伝える。ノーラはファルスの旅立ちに反対したが、本人の強い意志を受けて「帰ってくる」ことを条件に、それを受け入れた。
年が明けてから、ファルスは官邸に向かい、二年に一度の借金返済の機会に、全額を弁済する。自由を得たファルスは、サハリア行きの船を探すが、どこも乗船を受け入れてくれない。イフロースの手回しと察したファルスは、翌日、ピュリス市の北門に向かう。
そこでは、イフロースやリリアーナ、その他知り合いが待ち受けていた。あくまで行かせまいとするイフロース相手にファルスは戦うが、切り札の魔法を見抜いて勝利する。そのままファルスは門をくぐって、ついに不死を求める旅に出た。
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