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ほらあな  作者: 松田
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地固まる

「そうなんですよ。生徒たちに危険があるといけないからって無理やり」

「そりゃ、あんたも大変だな、まあいつもはこんなことにならねーし、この山は比較的穏やかだから心配いらねーさ」

「そうなんですか、実は危ないかなーと思ってたんですけどそれなら大丈夫そうですね」

「おう、この時期は紅葉も綺麗だから生徒さんたちも喜ぶだろ」

と、さっきは何も話さずにいたおじさんと軽装備が仲良く話している。ちょっと見ない間に何があったのだろう。

軽装備はおじさんから貰ったであろう布団に身をくるんでいた。

おれたちもその二人に加わり今あったことを話したが

「なあにが大男だよ、おめー。そんな伝説この山にはねーよ」

とおじさんに笑い飛ばされてしまった。

あっ!と突然芦屋が声をあげて謝り出した。

「すみません、布団、どこかにやっちゃったみたいで、今度弁償しますんで…」

「いや、いいよ、あんな安物にそこまでしてくれる必要はねえ」

軽々突っぱねるおじさんを見て男らしい人だと思った。

こういう人は大抵、少し融通の利かないところがあるもんだがこの人はどうなんだろう。

「その穴、どんな感じ何ですか?見せてください」

軽装備は興味津々でらんらんと目を輝かせていた。こういうことが好きな人なんだろう。幽霊や宇宙人肯定派だな、と心の中できめつけてやる。

ここですよ、あれ?と芦屋が首をひねている。

そしておれも同じ疑問を持った。

なぜだかわからないがさっきの穴がぽっかりとなくなって、ただの土壁になってる。

「やっぱりそんなもんねーじゃねーか」

と笑い飛ばすおじさん。

「ですね、夢でも見ていたんですよ」

と諭す軽装備。

でも、二人で同じ夢を?


*


雨が止み、四人で山を降りて駅で別れた。

おれと芦屋は二人とは帰る方向が違うらしい。

なあ、どういうことなのかな…と、不意に芦屋は呟いて、それにわからない、とだけ答えた。

本当にわからないあれは本当に現実だったのか。

夢だとしたらどこからが夢でどこからが現実なのか。

なぜ二人で同じ夢を見たのか。

わからないから、二人だけの秘密にしようと決めた。誰かに話したところであれこれ聞かれて結局わからないと言われるのが落ちだろうから。

それに、二人で秘密を共有することで少しだけ、さらに仲良くなれた気がした。

多分おれにとっての芦屋は、人間が一生に一度出会えるかどうかわからない心友というそれなんだろうな。と感じていた。

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