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異世界冒険記  作者: 昼飯前
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あれから三ヶ月位

あれから三ヶ月位経った。

ハイハイが出来るようになり、離乳食になり、最近両親がハッスルしだしたり、色々あった。


中でも俺はこれだけは言いたい。


――魔力、だと思われる何かしらの力を体内に感じ取ったのだ。

地球にいた頃は絶対に感じ得ないこの感覚。

初めは小さな違和感からだった。

魔法をどうしても使いたい為、瞑想や、ハアッ! って手をかざしたりする事二ヶ月と少し。遂に俺は感じたのだ。心臓辺りにほんの少しの温もりと、確かな力を。

それを無くさぬよう、忘れてしまわぬよう、感覚を鋭敏に研ぎ澄まし、より強く感じてみる。


そしてそれをそっと、優しく動かしてみる。


「あぶ!」


きたっ。僅かではあるが、動いたのだ。よし。これを後は動かし、う、動かし……。


「オギャア!オギャア!」


俺は泣いた。

魔力を動かしてどうすればいいんだよ。皆どうやって魔法使ってんだよ。


「どうされましたか? ジョン坊ちゃま」


ガチャリと、ドアが開き使用人さんが姿を見せる。

手には桶とタオル、替えのおしめがあった。


スッと、俺は使用人さんに手をかざす。すまない、今は一人にしてくれ。心の傷を癒やす時間が必要だ。


「あらあら、今日もキレイなうんちが出ておりますねえ。よっ」


そう言ってテキパキとおしめを取り替える。

近くで顔を見ると、昔は美人だったんだろうと思う。

肩甲骨程の長さに整えられて明るい茶色の髪、少し目尻にシワのある優しい瞳。綺麗な形をした鼻に、丁度いい比率の口。熟女好きには堪らんのではないだろうか。


今日も今日とてお世話になっている。


しかし、この世界はやたらと美形が多い。

使用人さんを始め、俺の両親、果ては使用人さんに至るまで、揃いも揃って皆美形なのだ。これは俺も期待出来る。


なんて、色々考えながらも魔力を動かしてみる。

心臓を起点にまずは、左手へ。初めて魔力を感じたあの感覚はまだ忘れていない。


「うー、あー」


ほいっ、よっ。気持ちいい掛け声と共に、実際は赤ちゃん言葉で左腕からUターン。

そこから心臓ではなく、左脇腹を経由し腰、更に左足へ。続けて太もも、ふくらはぎから再度Uターン。内太ももからおひんひんを一気に駆け抜け、右足を左足と同様に伝う。鏡のように右手まで行くと、テンポ良く肩から頭へ。最後に左肩を通って心臓に戻る。ゴールだ。


今出来る事といったら、魔力を動かすこと位なので、魔法の上達に繋がると信じて行っている。


それと、興味深い話をいくつか聞かせてもらった。

寝る前に使用人さんが語ってくれた。


「千年以上昔の事です。かつての世界は、魔法がとても栄えていました。空を物凄い速さで飛ぶ乗り物や、国全体を覆う巨大な結界を発動させる道具などがあり、到底今の技術では再現出来ません」


この使用人さん――リーフさんは、昔のお話が好きらしい。

昔話の本を片手に、朗々と語る。


「さらに、今では絶滅したとされる巨大な二足歩行の魔物や、高度な知性を持った魔法生物などがおり、人間は奪い合い、助け合っておりました」


今、大陸に蔓延っている魔物は、大半が知性が低く、狂暴性がある。

身近な魔物は、醜悪な顔をした"小鬼"、樹に擬態して人を襲う"化樹"などが挙げられる。


「そんなある日、突如として魔物達が凶暴化し始めました。人々は戸惑いました。攻撃的な魔物は積極的に人を襲い、こちらから攻撃しなければ襲ってこない魔物、森の奥深く、山の山頂に住んでいる災害とも言える強さの魔物。そういった危険な魔物まで人を襲い始め、人類は大混乱に陥りました」


これから話の佳境に入るのか、徐々に熱が篭ってくる。


「押し寄せる魔物の波に、人類は対抗する術を持たず、あっという間に多くの国が滅んでしまいました。このまま全ての人類が滅んでしまうのか、そう誰もが絶望した時――勇者が現れたのです」


パタンと、リーフさんが本を閉じた。


「今日はここまでにしましょう。続きはまた今度。お休みなさい、お坊っちゃま」


あらま、もっと聞きたかったのに。

リーフさんは話に満足したのか、今日は終わりのようだ。

アニメの次回予告みたいな終わり方で切られたせいで、続きが非常に気になる。

寸止めからの放置プレイとは、意地悪な女である。

といっても、普通は赤ん坊が言葉を理解できるはずがないから、リーフさんとしては、好きで話をしているのだろう。

俺としては、唯一の娯楽なので、結構この時間が好きだったりする。


「あふぅ」


自然と漏れた欠伸に、段々と意識が持っていかれる。寝る子は育つって言うし、今日はもう寝てしまおう。


最後に、循環させていた魔力を体外に放出する。これは、今日思いついた訓練だ。

消費したら増えそうだし、なんかオーラみたいな感じで纏えたらカッコいいなって思いながら、イメージする。


全身から、魔力を噴き出す。毛穴という毛穴――いや、皮膚を形成している細胞という細胞の隙間から、体内の魔力を絞り出す。

限界まで放出したところで、意識が遠のく。


魔法使いに、俺はなる!!





ってな感じで、日々を過ごしていると、思いもよらない事態に遭遇する。

俺が一歳と三ヶ月の時だ。


弟が出来たのだ。


いらねえよ。弟より妹をくれ。


なんて、出来た時は思っていたんだが、今は違う。


くぁわうぃい~チョウくぁわうぃい~


オカンに抱っこされて見に行ったんだが、俺の顔を見てキャッキャと笑うのだ。

それがもう、可愛くて仕方がない。こいつは将来が楽しみだぜ。


他には、ハイハイが出来るようになった。

それにより、行動範囲が少し広がったが、まだ部屋を出るまでは至っていない。

早く立てるようになりたいもんだ。なにやら書庫が家にはあるみたいだし。


んで、魔法についてだが、依然発動は出来ていない。いや、正確には発動しようとしていない。

魔法を発動する手順は仮説ではあるが、理解しているつもりだ。

これは魔力を目に集中しているときに気が付いた。


まず、魔力の性質として、集中した体の部位が強化されるようだ。腕然り足然り。

基本的な効果としては、集中した部位が強靭になるのだが、例外がある。

それが目だ。

では基本とどう違うのか。それは俺の仮説に繋がる。


――魔力の可視化。


人間の体内に宿る魔力、大気中に漂う魔力、それらの動きが見える。

呪文を唱えている際、例えばウォーター。

この魔法は、詠唱を始めると魔力が発動地点である腕に集中していく。

そして発動の瞬間に掌から"放出"されるのだ。

そう、放出だ。

つまり、俺がやってきた魔力操作は無駄ではなかったということだ。

ん? 違うな。


つまり、魔法についてだが、証明は出来ていないが、発動出来る段階にあるということだ。


また、魔力量の上昇についてだが、こちらは限界までの放出はあまり意味が無いようだ。

全然増えた気がしないし、これについても仮説がある。

魔力の可視化により、空気中に魔力が漂っていることに気付いたのだが、人間は呼吸でそれを取り込んでいる。

魔力を取り込むと、それが自分の魔力となるのだ。

そんで、俺の仮説はこうだ。


魔力で満たされた自分の器を、取り込むことによって無理矢理広げる。


最近の一ヶ月ほど、魔力がマックスの状態で魔力を取り込もうと必死に呼吸しているのだが、成果が見られない。

リーフさんが危機を感じて、医者を呼ぶほど激しい呼吸をしても、取り込めない。

魔力を可視化しながら取り込む光景を見ると、何か壁に当たったように弾き返されるのだ。

前世で見た、虫が街灯にぶつかっていく感じで、上限を越えれない。


はい、仮説崩壊。


そこで、一つの答えに辿り着く。


才能っぽいなこれ。


オカンとオトン。長男と次男。姉とリーフさん。

皆、魔力量が違っていること。

俺の二つの仮説が恐らく間違っていたこと。

改めて事実を確認し、やはりそうだと結論付ける。


才能っぽいなこれ。


くそっ、強力な魔法をガトリングみたいにバンバンぶっ放したかったのに。


――で、今。魔法をバンバンぶっ放す方法について考えている。


んー、と、手を顎にあてる一歳児らしからぬ仕草で何かないかと考えを巡らす。


「あふっ!」


ここで一つの、妙案が浮かぶ。


自分の器以外に、供給源を作れないか?

そうと決まれば、早速イメージしてみる。

そうだな、ダムがいいか。

体内魔力を操作し、その源、つまり心臓部のすぐ横に魔力で球体を作る。

一年近く体内魔力を循環、集中しているんだ、この位できる。

そして出来たのが、心臓と同じくらいの大きさの球体。


ふむ、これじゃあ小さいな。


前世の記憶から、写真で見たことのある巨大なダムを引っ張り出す。

鮮明にそれをイメージし、球体を大きくしていく。ぐんぐん大きくなっていき、俺の体からはみ出た時、急速に巨大化するスピードが落ちる。

俺の体より球体が大きくなるイメージが上手く出来ないのだ。

魔力は体内で動かすものだし、魔法を使用するときにしか、体外に放出しないと認識しているからか。

ならばと、少し方法を変える。


俺の体の心臓部、その更に奥に真っ暗な空間が有るとする。精神世界のようなイメージだ。

その空間は広大。正に無限に広がりを見せる世界だ。

そこに先程作った球体を出現させる。

グンッと思い切り大きくしてみると、思い通りに大きくなった。

後はそいつをダムのように深く、広くしていくと完成だ。

設定としては、呼吸による魔力の吸収時、入り切らなかった魔力をこのダムに流し込む。


フワフワと浮いていたダムをその空間に定着させる。

ズシンッと、質量を持った巨大な魔力の供給源を手に入れた。


オラの妄想力は五十三万です。

なんて満足感に浸る間もなく、俺の意識は一瞬で途切れる。


頭を使いすぎて疲れたか。

まだまだ発展途上である俺のスカウター(脳味噌)は、五十三万の妄想力に耐えられなかったようである。

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