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オワタ・オンライン【∞】  作者: 水沢 流
シナリオ2:海底基地からの脱出
10/14

 ピ、と無機質なビープ音が鳴る。

 それに気づいたラガが視線を上げると、空中でラガのウィスパーが点滅していた。

 ミケをはじめとする皆のウィスパーが総じて生き物の形をとっているのに対し、ラガのウィスパーはモノリスじみた平板のままだ。

 設定時、ラギと形状について口論になった結果、デフォルトのまま使う事にしたからである。


「ホワイト軍曹…?」


 ブレイン名をラガが読み上げる。

 クリスマスみてーな名前だ、という感想が後に続いた。

 そう言えばラギが何か言っていた気がする。ミケが、シナリオで不思議なブレイン達に助けられたと。


「ふむ」


 つまり、この見慣れない名前もそのブレイン達の一人と言うことか。

 そう考えると、悪戯な笑みが口元に浮かんだ。


「ハッピークリスマス? 復活オメ?」


 チンピラのような、けだるげな口調でホワイト軍曹の助力を歓迎する。

 それからフィズを見ると、まだ、フィズの方はボタン前で悩んでいるようだった。


『全押し2回、上1回下2回、上2回かな?』


 ホワイト軍曹のヒントには、そうあった。


「へえ?」


 ラガが、面白そうに口の端を釣り上げる。

 なるほど確かに、この正体不明のブレインは優秀らしい。


「こいつはいい。フィズ、おい、フィズ!」

「何? 脳筋」

「お前、俺には容赦ねえよな…」


 子供の顔してそのセリフとか、ラギだったら泣くぞと苦笑する。

 ああ、だから俺の時なのか…。

 変な所で納得できちゃったなあ、と一人ごちてモノリスに指を伸ばす。

 助言サンクス。そう綴った文字をブレインへの伝言として、ラガはフィズをおしのけた。


「はいはい邪魔邪魔。そいつの答え、分かったからちょっとどけって」

「何それ。実はヤマ勘とか、そういうオチだったりしない?」

「ちげーよ、いいからみてろって」


 言って、ボタン前に座り込んだラガが、ホワイト軍曹の指示通りボタンを押していく。

 ピ、ポ、と押されるボタンが指が触れる度に青緑色に光り、それを押すラガの顔を、そのつど照らし上げていた。

 全押し2回、上1回下2回、上2回。

 全押しはXX。上一回はV。下二回はW。上二回はM。

 だが、押し終えても反応はない。


「あれ?」


 ラガが首を傾げる。

 そこに近付いて来たフィズが、ちょんちょん、とラガの背をつっついて上を指し示した。

 XXVMWのうち、V以外が消えている。


「Vは下じゃない?」

「ああ」


 そっか、と納得する。

 今になって言って来たという事は、途中までラガの操作を見ていて法則性に気付いたのだろう。

 そうでなければ、とっくに自分でやっていただろうから。


「よし、もう1回」


 Xで全押し。Vで下1回。Wで下二回。Mで上二回。

 それを打ち直すと、ピ、と音がして今度はボタン全てが引っ込んだ。


「これで開くかなあ」

「多分。性格の悪いシナリオじゃねえことを祈るぜ」


 そろりとスイッチから離れて、ラガが扉を睨みつける。

 直後、ガコン! と大きな音がして、ぐらぐらと足場――もとい、エレベーター全体が揺れた。


「ちょ、うわっ! ラガ、間違えたりしてないよね!?」

「お、お前も一文字答えただろうが!」


 慌てたラガがフィズに怒鳴る。

 けれども心配は杞憂だったようで、やがて揺れは収まり、ゆっくりと扉が左右に開いていった。




「うわ……」


 扉が開いてすぐ、声を上げたのはフィズだった。

 通路の入り口の左右に一つずつ、門のように立てられた硝子ケースの中に、風変わりな銃がおさめられている。

 ケースの表面には、サンドブラストで描いたような奇妙な文様がいくつもあり、下方の土台には入力欄と、いくつかのヒントが記されている。


「この武器、持って行くべき?」


 ラガが問う。


「その方がいいんじゃないかなあ、何が待ち受けてるかわからないし」


 フィズがうなずいた。


「フィズ、お前が俺を助けるっつー選択肢は?」

「やだよ。ボクが逃げる選択肢が最優先」


 そんな自己中的発言をしたフィズが、すとんとパネルの前に座り込む。

 同じく、パネル前に座り込んだラガが、露骨に嫌そうな顔をしたが知った事ではない。

 んー、とラガが悩む声が耳に届く。


 その後、神妙な顔をしたラガが、ぱし、と膝を叩いて言う事には。


「わかんね」

「あきらめるの早っ!」


 フィズが思わず突っ込んだ。




 ――ヒントの内容はこうだ。


 ONETHREEONE=4

 THREETHREE=4

 ONEEIGHT=5

 EIGHT=4

 EIGHTTHREE=?


 字体が古めかしいせいか、ヒエログリフのようにも見える文字だ。

 神秘的と言えば聞こえがいいが、場所が場所だけに、妙な不気味さを演出しているようにも思えてしまう。

 殺風景も歓迎できないが、これはこれで嫌な感じだと、ラガがぶつぶつ文句を垂れる。


「文字数…じゃなさそうですねえ」


 フィズが眉をひそめて腕を組んだ。

 EIGHTは英字なら5文字だし、漢字なら二角。

 ほかには…と考えていると、いつの間に隣にやって来たのか、ラガがヒントをのぞき込んでいた。


「4…か。エイト?」

「発音しても三文字だから」


「えいとぅ!」

「それっぽく発音しても無理だから」


「縦に読めばいいんじゃね?」

「一列目が読めないわけ?」


「じゃあ、どうしろっつーんだよ!」

「それを今、考えてるんだって!」


 どうして、あんたみたいな奴と組むハメになるかなあ!と悪態をつく。

 正直、ラガの方はROには向いていない気がしてならないのだ。

 ラギはともかくとして。


「ま、いいや。また何か閃いたら言って」


 そう言って気分を切り替えたフィズが、もう一つあるケースの方へと近付いていく。

 こちらは、大きな魔法陣のような模様に、丸みのある文字でヒントが書かれている形式だった。


 2=nofeq

 1=odem

 3=shebo

 yashfeh=?


「…何語?」


 少なくとも、耳慣れた言葉ではない。

 だけど見た事があるような気がする、と検索を開始するフィズの向こうで、ラガが何かに気付いたように後ずさった。

現在の所持品

・なし

通路状況

★一つ目のケース

 ONETHREEONE=4

 THREETHREE=4

 ONEEIGHT=5

 EIGHT=4

 EIGHTTHREE=?


★二つ目のケース

 2=nofeq

 1=odem

 3=shebo

 yashfeh=?

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