ピートの主張
私はピート、コニーの兄です。
思えばコニーがポチを拾ってきたときは驚きました。だって竜ですよ?まず竜は何を食べるのかから調べなくてはなりません。毎日大人数人分の量の生肉を仕入れなくてはならなかったらどうしようかと悩みました。けれども人間と同じ食事で構わないみたいなので安心したものです。あれで生肉食だったらもう一度捨てて来させたかもしれません。そんなに食べられたら家の裏山は数日でハゲ山になったことでしょう。
それでもすんなりと人間との生活に慣れた竜でしたが、我が家での生活の何が悪かったのか、竜はなにやら肥満気味です。コニーと同じ量を食べて、コニーは太らないのに何故竜は太るのでしょうか。太りやすい体質なのでしょうか。いつか会う親竜にしかられて襲われたらどうしようかと思っていましたが、親竜はそれほど深刻に考えていないようでした。このまま深く考えないでくれるとありがたいです。
今回、私は王子様に招かれてお城にうかがうことになりました。正直メンドクサ・・・恐れ多いことだと思ったのですが、ポチの友人の青い竜が送ってくれるらしいとコニーに言われて、誘惑に負けてしまいました。竜に乗るなんて!と父に鬱陶しいほど羨ましがられました。帰ったらせいぜい自慢してやりたいと思います。
今回招いてくださった王子様と、私が親友だと言われています。これにはたいへん馬鹿らし、ゲフン!大きな理由があるのです。あれは私が都の学校へ通っていたときでした。ある日、学校へ忍び込んでいた王子様(対人恐怖症のくせにこういう度胸はあるらしい)が私の目の前へ走りこんできて、
「友達になってください!」
と叫んで走り去ったのです。まさしく通り魔的犯行です。そのときはどこの変態かと思いました。後で聞くとあれは王子様で、私は王子様と五メートル圏内で会話した貴重な人間だとか。会話ですか、言い逃げされただけなのに。
ともかくそういうわけで、私は王子様の親友というレッテルが貼られたわけです。まあこのレッテルを最大限利用しようかとは思いますがね。
そんな王子様が、私に何の相談があるのかというと。
近々、王子様の婚約者の方が隣国からいらっしゃるのだそうです。その婚約者の方と、必ず直接お話をするようにと王様からきつく言われているのだそうです。乳母や乳兄弟ごしの会話はダメだと言われ、どうしようと困ったのだそうです。自分ではいい考えが思い浮かばず、思い余って私に相談しようと考えたのだとか。
竜にのってあんな辺鄙など田舎に一人でやって来る度胸があるなら、会話ぐらいできそうなものですがね。それとこれとは話が違うらしいのです。
しかし私としても、こんなことを相談されても、がんばれと励ますくらいしかできそうもないのですが。王子様を拘束して婚約者の姫の前に突き出せというなら協力を惜しみませんが。こういうのは、どちらかというと私の母に相談すべきだったのではないでしょうか。他人の恋愛ごとは大好物ですから。
それでも何かしらの解決策を出さなければいけない雰囲気です。仕方ないのでコニーにこの相談を丸投げすることにしました。コニーは私から話を話を聞くと、
「わかった~」
と勢いよく頷いて、ポチを連れて走り去りました。本当に分かったのでしょうか、少々不安です。
この結果がどう転ぶかわかりませんが、すくなくとも面白いことにはなるに違いありません。




