それでも月は回っている
掲載日:2026/09/26
今から数百年前。
地球からそう遠くない、とある場所。
無数の星々に照らされ、硬い岩肌が剥き出しになっていた。
村外れの暗く冷たい洞窟。
物音ひとつしない暗闇の中に、彼は何週間も囚われていた。
柔らかそうな楕円形の小さな体。
それを覆う、焦げ茶色の毛。
ひくつく鼻と、せわしなく動く口。
長く伸びた自慢の耳は、だらしなく地面に垂れたままだった。
彼の名は、『ガリレオ』。
いわゆる宇宙ウサギだ。
彼らは、繁殖能力と環境適応能力が極めて高く、宇宙のありとあらゆる場所に生息していた。
岩の隙間から漏れる、わずかな星明かり。
長い間、耳も目も役割を与えられず、自分が誰かさえ分からなくなりかけていた。
(まだ、生きているのか……)
ほぼ水しか与えられておらず、手足にはほとんど力が入らない。
大好きな空に輝く星を、もはや見上げる力さえ残されていなかった。
(……ここまでか……)
信じてくれた仲間への感謝。
異端扱いし、己を閉じ込めた村の教皇庁への憤り。
そして、コペルニクス大先生への敬愛。
様々な思いが頭をめぐる中、最後の息とともに言葉を絞り出した。
「それでも、月は回っている……」
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