第20話 中国への道(信長と天下を獲る――戦国タイムリープ日本統一記――/全100話完結)
天正九年(1581年)春。
安土城の黄金時代は、頂点を極めていた。
信長は右大臣として朝廷を掌握し、茶の湯や能楽を奨励。
諸大名は安土に集まり、信長の威光に浴した。
しかし、残された敵は中国地方の毛利輝元。
毛利家は本願寺を支え、織田の西進を阻んでいた。
輝元は安芸を拠点に、備後・備中・備前を支配。兵数は五万を超える。
信長は大軍を編成した。
総勢十万。
羽柴秀吉を大将に、中国攻めを命じた。
俺は鉄砲隊五千を率い、秀吉の軍に配属された。
明智光秀は畿内の守備を任された。
本能寺の変の舞台が、整った。
出陣前、信長は俺を呼び、安土城の天守で対面した。
「浩太、中国を落とせば、天下は完全に俺のものだ。お前に鉄砲を任せる」
信長の目は、狂気に輝いていた。
「殿、毛利は強敵です。秀吉殿と協力して、慎重に」
信長は笑った。
「慎重などいらん。速く落とせ」
俺は不安を覚えた。
秀吉は播磨の姫路城を拠点に、備中へ進軍。
毛利軍は高松城に清水宗治を置いて抵抗。
秀吉は水攻めを決行。
高松城を堰き止め、湖に変えた。
城は孤立。
俺の鉄砲隊は堰を守り、毛利の援軍を阻止。
光秀からの書状が届いた。
『浩太殿、殿は安土で茶会に興じている。だが、家臣の不満は限界だ。』
光秀の筆跡は乱れていた。
本能寺の変まで、あと一年。
俺は秀吉に相談した。
「秀吉殿、光秀殿の様子がおかしい」
秀吉は笑った。
「光秀か。あの男は知略はあるが、プライドが高い。殿に不満があるようだな」
「危険です」
秀吉は目を細めた。
「浩太殿、殿は天下人だ。不満を持つ者は、潰すのみ」
秀吉の野心も、見え隠れしていた。
高松城の水攻めは成功。
清水宗治は降伏を申し出た。
だが、信長の命令は苛烈だった。
「宗治の首を上げよ」
秀吉は宗治を切腹させ、首を安土へ送った。
毛利輝元は講和を申し出た。
中国地方の半分を織田に譲る条件。
信長は了承。
中国攻めは、織田の勝利で終わった。
俺は安土へ帰還。
信長は上機嫌だった。
「浩太、よくやった。天下は俺のものだ」
だが、光秀の姿はなかった。
光秀は亀山城に引きこもっていた。
書状が届いた。
『浩太殿、時が来た。殿を止める。あなたは、どちらの側に立つ?』
俺は書状を焼いた。
本能寺の変が、迫っている。
天正十年(1582年)。
俺は決意した。
信長を守る。
光秀を止めるために、安土に留まる。
中国への道は、勝利で終わった。
だが、その道の先は、本能寺の炎。
天下布武の旗は、まだ翻る。
だが、旗の影は、最大に深くなった。
俺の選択が、歴史を決める。
本能寺の朝が、近づいていた。
次回、第21話「本能寺への序曲」。光秀の謀反準備と、主人公の最終決断――。




