第1話 雷鳴の彼方へ (信長と天下を獲る――戦国タイムリープ日本統一記――/全100話完結)
雷が落ちた瞬間、世界が裏返った。
次に目を開けた時、俺は森の中に倒れていた。
東京の夜も、満員電車も、残業続きの日常も――すべて消えている。
服が違う。
スーツではない。粗末な麻の着物だ。
腰には、覚えのない短刀が差してあった。
「……冗談だろ」
周囲を見渡して、背筋が冷たくなる。
アスファルトも、電柱も、車の音もない。
あるのは、湿った土と、見知らぬ鳥の声だけ。
数十分歩いて辿り着いた村で、決定的な言葉を聞いた。
「尾張の国、清洲の近くじゃ。今は永禄元年よ」
永禄元年。
西暦一五五八年。
――戦国時代だ。
雷に打たれ、俺は四百年以上過去の日本へ放り込まれたらしい。
俺の名前は佐藤浩太、三十二歳。
歴史好きの、ただのサラリーマンだ。
戦国の知識はある。だが、この時代で生き延びる術など持っていない。
逃げるように村を離れた俺の前に、馬の蹄の音が響いた。
武士だ。
五人。完全に包囲されている。
「名を名乗れ。何者だ」
震える声で名乗った直後、視線の先に現れた男を見て、息を呑んだ。
黒い甲冑。鋭い眼差し。
間違えるはずがない。
――織田信長。
まだ“第六天魔王”と呼ばれる前の、若き日の信長だった。
「ほう。お前、面白い目をしているな」
信長は、愉快そうに笑った。
「気に入った。俺の家臣になれ」
この一言が、俺の運命を決めた。
こうして俺は、
織田信長と共に天下を獲る戦いへ、足を踏み入れた。




