秋の収穫祭3-2 ドライアド?
また、長くなりました。ごめんなさい。
ワイルド・ボアに追いかけられて木に登って事なきを得ましたが、ワイルド・ボアは僕を見逃す気はないようです。
なので今僕は、少しでもワイルド・ボアから離れるようにと、木の中間の辺りを目指して登っています。この木この辺りでは一番太くて大きかったみたいで、高さで言うと30メートル以上はあると思う。何の木だろう、樹皮が白くて綺麗な木、ブナの木かな?
途中何度かワイルド・ボアが木に向かって突進し体当たりを仕掛けて、僕を落そうと木を揺らしていた。
幸いと木の幹が太いため振動はそれほどではなく、落下の心配はないけれど、このままでは選べる道がない。
あまり上に逃げすぎて僕の姿が見えなくなってしまえばもしかしたら、僕を諦めてルリお姉ちゃんたちがいる方へ行ってしまうかもしれない。
それは大変マズイ。
「うーん。どうしたら良いのだろう?」
僕は木の丁度中ほどの太い枝に跨りながら、唸っていた。
(アリスか先生達が戻ってきてくれるのが一番良いんだけれど、僕たちは結構逃げまわりながら、森の奥まで来てしまっているから、サティお姉ちゃんが僕を感知できるとしても、すぐには見つけられないし、アリスがいないから甘い空間も作れないし)
うーん。本当にどうしようかな。これが所謂八方ふさがりってやつ?
「うーん」
「あなた」
「ううーん」
「ちょっとそこのあなた」
「うううーん」
「・・・てい!」
バシ
「アイタ!」
僕は突然頭を強く叩かれた衝撃で、危なく枝から落ちそうになった。
「なに?一体何が?」
「なにがじゃないわよ、散々私を無視してくれたくせに。あなた人間のくせに生意気よ!」
僕は女性の声のした木の幹の方へと振り向いた。するとそこには、そこにいたのは、木の幹から体を半分だけ出している緑の髪の女の子。
木から生えているの?
「ちょっとあなた。何でそんなに薄いのよ」
「薄いですか?ええっと言っている意味が分かりません?」
「あなたの、リアクションに決まっているでしょ!木から私の様な美人が生えているのよ。普通驚いて木から落ちるでしょ!」
「はあ」
「気のない返事ね。あなたやる気あるの?こっちは迷惑しているのだから、早く落ちて面白くなりなさいよ」
「はあ」
「じゃあ、もう一回始めからいくわよ。私が後ろからあなたの頭を叩くから、あなたはそれに驚いてこっちを振り向くの」
「はあ」
「本当に分かってるのあなた? まあいいは、それでね、ここからが肝心よ。振り向いたあなたは木から生えている美人の私を見ます。・・・さあ、するとどうなると思う?」
「驚きます、かね」
この女の子は何が言いたいのだ?
「違うでしょ。それだと弱いわね。それじゃ弱すぎるわね」
確かに僕はアリスで慣れてしまっているけど、普通だったら腰が抜けるほど驚くのだろうな。
「でも、驚くこと以外に出来る事はないんじゃないかと」
「違うでしょ!まだ、あなたに出来る事は沢山あるでしょ。全く、あなたはしょうがないわね。考えてみなさいよ。例えばよ、こんな高い木の枝の上で驚いたら、普通落ちるでしょ。ギャー、ツル、ヒュー、ドシンってな感じで、ワイルド・ボアに自分から飛び込んでね、そこからまた、ぎゃーって、プププッ、クスクス」
「・・・」
「ここまでは分かる?ちゃんと理解できてる? これをここから更に面白くするのがあなたの腕の見せ所よ」
「・・・」
「ほら、だから早く。もう一度最初からいくわよ、あのワイルド・ボアの体当たりがウザくて迷惑なのよ。あいつはあなたを狙っているんだから私を巻き込まないで頂戴」
「巻き込む?でも僕は木に登っているだけで、あなたを巻き込んでなんかいませんよ」
「あんた、リアクションだけでなくて、察しも悪いのね」
だからさっきからこの子は何を言っているのだろうか?僕は目の前の子をよく観察して見ることにした。
もしかしたら、精神的な不安を抱えている、もしくは頭が少し、いやいや、いくらワイルド・ボアへのダイブを要求されたとしても、まだ結論を出すには早いか?
歳は、16、17歳かな。彼女の肌は、日の光を浴びたこのブナの木の樹皮のように滑らかで白く、わずかに淡い緑の陰影を帯びている。
髪は木漏れ日のような黄金色に輝き、瞳の色は深く澄んだエメラルドグリーン。自分で言っている通り確かにアリス級の美人さん。
言ってることは過激だけれど、表情は風にそよぐ木の葉のように穏やかで、深い知性を宿しているよう。に、見えなくもない。
彼女の服は、編まれた白い樹皮の繊維と繊細なモスグリーンの葉脈でできて、なんと言うか清らかな空気を感じる。生きよ離れしているって言うのかな。
言っていることは、おかしいけれども、持っている雰囲気は神聖だ。
「うーん」
「なによ、あなた。そんなに私に見とれて。やっと私の美人に気が付いたの。でもダメよ。私は大自然の恋人。あなたみたいな普通の人間なんかに好意なんて持たない・・・ん?」
僕が彼女の人物評価に悩んでいると、また彼女の方も僕をマジマジと観察し始めた。
「ちょっと、あなた。両手を出しなさい}
僕は言われた通りに両手を彼女に差し出す。
「ムー」
僕の手を握って唸りを上げる。
「今度は目を見せなさい。目の奥を見せなさい」
今度は僕のまぶたを指で開いて覗き込む。
「動かない、動かない。ジー」
その間もワイルド・ボアが木に体当たりをしつこく繰り返していて断続的な振動が僕たちを襲う。
ドシーン、ドシーン、ドシーン。
「あーんもう!あんた、本当に煩いわね。少し静かにしなさい。こっちは今真剣にマジで鑑定中なんだから!」
その瞬間、彼女からマナが噴き出した。この感じは、ヘスティア先生以上のマナ?
「そこで静かにしていなさい。木よ貫け、ルート・スパイク」
彼女が呪文を唱えると地面から木の根っこが鋭い串となってワイルド・ボアを突き刺し貫通していた。丁度頭の部分に直撃したので即死したと思う。
「今の魔法は・・・」
僕は驚きを通り越して恐怖を感じてしまうが、彼女からいつの間にか体をツルの様な物で拘束されていて動くことが出来ない。
「あなたも、動かないでこれで最後だから。大きく口を開いて、はい、アーン」
彼女は僕の両頬は手で挟んで僕の口を無理やり開かせた。
「な、にふぉするのでぃふか」
「良いから黙っていなさい」
彼女がジーと僕の口の中を確認している。右から見たり、左から見たり、上から見たり、下から見たりして、うーんと悩んでいるみたいだ。
その時遠くから声が聞こえてきた。声はだんだんとこちらへ近づいて来ている。
「シルバ何処にいるの。たしかこっちからマナを感じたのに。シルバー!」
「アリリン、あっち。あっちの方よ」
アリスとサティお姉ちゃんの声が聞だ。
「アリフー」
と、僕はアリスの名前を呼んだ。
「黙って!」
僕はまた頭を拘束された、彼女の正面に向かされてしまう。
「アリリンいた。シルバはあの木の上よ。誰かに掴まっているわ」
「シルバー」
2人が僕を見つけてくれた。そう僕は確信した。
「最後は体液で鑑定よ」
そう聞えた瞬間、僕の唇は塞がれた。僕は彼女にキスをされた。
「シルバが知らない美人とキスをした!」
「ななな」
「んんー、ふがふがふがー」(お姉ちゃんしたんじゃないよ、されたんだよ)
数秒後、彼女を僕から唇を離した。何があったの。混乱する僕をよそに、背後から怨念の情念を感じた。物凄い怨念。
アリス、僕はやってないからね。アリスのことを裏切った訳じゃないからね。そう、これは事故だよ。
「シールーバーーーー。恨めしーー、へ?」
最後に聞こえたのはアリスの恨めしや。多分そうだったと思う。僕はアリスの言葉を最後まで聞き取ることが出来なかったんだ。
だって、アリスの言葉をふさいだ彼女の言葉が、僕の世界を壊してしまったから・・・。
「・・・ふう、この感じは違うは。でもわからない。あなたは普通ではないの、もう一度、サンプルが多く必要だわ。今度は本気よ」
彼女はもう一度、僕にキスをした。さっきとは一味も二味の違う、大人のやつだ。
「チュー、ジュルジュルジュルジュルジュルジュルジュルジュル、キュポン!ふー、チュー、ジュルジュルジュルジュルジュルジュルジュルジュル」
「あー、シルバがすっごいチューをした。すんごい激しいチューした。凄い激しいの!」
「あわわ、あわわ、シルバシルバシルバ。何てこと何てこと何てことおおおお」
確かに時間が止まった。呼吸も鼓動も僕の全部が止まった。
僕は、感じてしまった。
僕は、少しだけ、大人になってしまったんだって。
でも、
代償として、アリスが悪霊化した。
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