お姉ちゃんとお出かけ
7年後・・・。
「シルバ、早く行くわよ!」
「まってよ、サティお姉ちゃん」
「あらあら、サティもシルバもそんなに急いだ
ら転んでしまうわよ」
僕の名前はシルバ、7歳の男の子で、ミューズ母さんの息子でサティお姉ちゃんの弟。お父さんはいない、僕達は3人で田舎の村で暮している。
僕はまだ小さいけれど、勉強が好きで無料で通える村の学校に4歳から通っている。
本が好きで、学校にある本を借りていつも家で読んいる。
でも、サティお姉ちゃんは勉強が嫌で、思いっきり体を動かしたいタイプ、いつも僕を外に連れ出して遊ぼうとする。
正直ちょっとだけ苦手。お母さんは自分の畑で薬草を育てていて、村のみんなには良く効くと評判の薬草栽培農家さんをしている。
そう、僕達はありふれた標準的な平民の家族だ。
・・・・・・。
今日はサティお姉ちゃんと町の教会にお祈りに行くところ。お祈りに行くと優しい神父様やシスターさんが、神様からのご褒美だよと美味しいミルク飴を一つくれる。
3歳年上のサティお姉ちゃんは教会で貰える飴がとっても大好きで、いつも一番大きな飴を選べるようにと、早く教会に行きたいと僕をせかす。
「シルバ、早く、早く!」
「イタた。お姉ちゃんそんなに手を引っ張らないでよ。そんなに急がなくても、お祈りの時間には間に合うんだから」
「何を言っているのよ。早くいかないと、大き
い飴がなくるじゃない。この間も遅くなった
せいで、シャクティ達に大きい飴取られちゃ
ったじゃない」
僕達は田舎暮らしの平民だから、甘いお菓子は普段は食べられない。教会で月に一回だけ貰える飴以外に、あまり甘いものは口にすることができない。
だから、このお祈りの日は村の子供にとって、一か月待ちに待った唯一の楽しみの日となっている。
サティお姉ちゃんにビリビリと手を引かれて教会に到着すると、既に子供達が綺麗に列をなして教会前に並んでいた。
来た順番に教会に入って、椅子に座ってみんなでお祈りをする。そしてお祈りが終わった後に並んだ順に飴がもらえるのだ。
「遅かった・・・」
子供の行列を見たサティお姉ちゃんは、落胆し動かなくなったと思ったら大きく地団太を踏み始めた。
「もお、シルバのせいで、遅くなったじゃない。こんなに並んでいたら、大きな飴がもらえ
ないじゃない」
「僕のせいなの?」
「そうよ、シルバの足が遅いからじゃない!も
っと早く走ってよ!」
「ええー、そんなの無理だよ」
「無理でも走るの!」
「ええー」
「シルバは男の子でしょ!そうよ、むしろ私を
引っ張るくらいに走りなさいよね!」
サティおねえちゃんは余程悔しかったか次々に新しく列に並ぶ子供達に気付かずに、僕を怒り続けた。
サティお姉ちゃんは沸点が低い上に、一度夢中になったりすると周りが見えなくなる人なのである。
この間も、友達とのかくれんぼ遊びに夢中になって、夕暮れどきに僕がお母さんに頼まれてお迎えに行くまで、みんなが帰って一人になった村の廃墟で、ワクワクしながら一人で壁の間に挟まるように隠れていたな。
僕はどういう訳か、お姉ちゃんのことを感じるから、なんとかお姉ちゃんを見つけることが出来たけど、普通はあれ、見つけられないと思う。
お姉ちゃんに怒られながらそんなことを考えていると、良く知った姉妹に声をかけられた。
「シルバ、また何かしたの?」
「ん、シルバ何かした?」
似たような声掛けをしてきたのは、サティお姉ちゃんと同い年の幼馴染の双子の姉妹で、ルリお姉ちゃんとルカお姉ちゃん。
二人共顔がそっくりで考えもそっくりの可愛い女の子。違うのは綺麗な瞳の色で、澄んだ青い眼をしているのがルリ、燃えるような真紅の目がルカ。とても可愛い姉妹で、サティお姉ちゃんととっても仲が良くて、僕の事を弟の様に接してくれる優しい女の子。
「聞いてよ、ルリリン、ルカリン。シルバのせ
いでー・・・」
二人を見たサティお姉ちゃんは、ルリお姉ちゃん、ルカお姉ちゃんの傍に行くと抱き付いて、大きい飴が、小さい飴がとか足が遅いとかずっと二人に訴えている。
「そうなんだ、大変だったねサティ」
「ん。サティは悪くない。サティは頑張った」
「だよね、そうだよね。悪いのはシルバだよ
ね」
サティお姉ちゃんの話は、あることない事をどんどんと言ってて、そんなに良く話すことあるよねと僕は思う。
でも、そんな思いの僕をよそに、うんうんと理解を示すかのようにサティお姉ちゃんの話をルリお姉ちゃん、ルカお姉ちゃんは聞いてる。
ルリ・ルカお姉ちゃん達はサティお姉ちゃんの話しを聞いた後、僕に向けて言った。
「シルバの足が遅いせいで教会に遅れたのだか
ら、私と二人で毎日遊んで体を鍛えようよ」
「ん。勉強ばかりのシルバは駄目。私と二人き
りでもっと遊ぶべき」
「ルリリン、ルカリン、私、私は?私とは遊んでくれないの?」
「私が特別に2人っきりで遊んであげる。本当
に特別。シルバだけ、なんだからね」
「ん。シルバには私だけで良い。私がシルバの
特別」
「ルリリン、ルカリン、私、私は?私は特別な
友達かな?」
僕はどちらかと言うと体を動かすより、ゆっくり本が読みたい。なのでお誘いは嬉しいけどお断りしたい。でも正直に話すとまた面倒なので話を逸らす、と言うか本題に戻す。
「ねえ、お姉ちゃん達そんな事より早く列に並ぼうよ。そろそろ教会が開くころだしさ」
「「「そんな事?」」」
三者三様に頭に?を浮かべているお姉ちゃん達を置いて、僕は一人で教会のに向い歩みを進めると教会の門が開らいた。
「来やがったなガキども!今日も腰が抜けるまで説教してやる!簡単に飴を喰えると思うなよ!」
右目に眼帯をした金髪の名物シスターが勢い良く現れた。お祈りの日の始まりである。
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