ピュア!
”ナデナデ” プルルン。
“ナデナデ”プルルルン。
スライムは仲間になりたそう震えている。
突然のスライムに懐かれるという出来事で、さっきまでのが悲壮感たっぷりの雰囲気にのまれていた場酔いは覚めて、今度はお祭りの様な、明るいく楽しい騒ぎが起きていた。
僕は転んで飛び掛かられた時の状態のまま、まあ、尻もちをついたままスライムを抱いていた。
“きゅぴー!”
プリンプリンとすりすりと僕のほっぺに摺りついてくるスライムがたまらなく可愛い。よし、よーしよしよしよし。僕のナデナデが止まらない。
“きゅぴっぴー”
スライムはとても嬉しそうにしている。僕は7年生きてて初めて知りました。スライムは鳴くんだ。とても可愛いく鳴く。
さっきまでは悪魔の様にしか見えなかったスライムが、今は天使の様に可愛く見えるので、とっても不思議だ。
「なになに、どうしてどうして、かわいいかわいい、私にも抱かせてー、わたしも抱きたい!」
「スライムが人に懐くなんて聞いたことある?」
「ん、この子、あの時のスライム。サンドイッチの仇」
“ぴっぴー”
まるで正解ですという様にルカお姉ちゃんの言葉に反応して鳴いて身体を揺らすスライム。
サティお姉ちゃんとルリお姉ちゃんの言葉は反応をみせない。どうしてだろう。
「ねえ、いいないいな。私にも抱かせて。私にもスラリン抱かせて、スラリン抱かせて」
“ピュア!” パシィ!
「えっ!」
事件が起こった。はい、事件が起こりました。スライムが、抱かせてと伸ばしたサティお姉ちゃんの手を、叩き落としたのだ。
「ピュア」って鳴き声も僕には「イヤ」って聞こえた。
みんなの笑顔が凍った。今の今までの楽しい時間が一瞬で吹き飛んでしまった。
サティお姉ちゃんははたかれた手をさすりながら、驚いた様子でスライムを見ている。どうやらまだ状況を理解することが出来ないらしい。
「なんで?、えっ、なんで?」
「イヤって言ったよね。この子今イヤって言ったよね?」
「ん、ピュア!うんうん」
サティお姉ちゃんとルリお姉ちゃんはどうやら混乱しているようだ。ルカお姉ちゃんは静かに一人分何かが分かった様に納得している。
「ははは、よーし、よーしよしよしよし、なでなでなで」
“きゅぴっぴー”
場の雰囲気を温めるべく、僕はスライムと戯れる。僕が撫でるとプルプルと震えてスライムは楽しそうに嬉しそうに僕に甘えて懐いてくる。ははは、と笑ってスライムと戯れる少年の姿は抜群の温かさをもっていて、あっという間に再度常夏のバカンスの様な温かい空気を作ってくれた。
「ねえ、いいないいな。私にも抱かせて。私にもスラリン抱かせて、スラリン抱かせて!」
“ピュア!” パシィ!
サティお姉ちゃんの手をスライムが叩き落とし、また時が止まった。
「なんで?、えっ、なんで?」
「イヤって言ったよね。やっぱりこの子イヤって言ったよね?」
サティお姉ちゃんははたかれた手をさすり、ルリお姉ちゃんは驚いた様子でスライムを見ていると、ルカお姉ちゃんがスライムに近づいて会話のようなやり取りをを始めた。
「ん、ピュア!ん、ふむふむ、ぴっぴ。ぴぴぴっぴ」
”ぴ、ぴっぴ、ぴぴぴきゅきゅぴぴ”
「ん、きゅぴぴ、ぴぴぴん?きゅきゅぴっぴ?」
“ぴぴん、ぴきゅぴん、ぴゅき”
ルカお姉ちゃんが僕を指さす。
「ん、ぴっぴ、ぴきゅきゅぴ、ぴぴっぴっぴ?」
“ぴぴきゅぴ、ピュア!”
今度はサティお姉ちゃんを指さした。
「ん、ぴっぴ」
「ルカお姉ちゃんはスライムとはなしできるの?」
「ん、なんとなくわかる」
「ええー、ほんとに、凄いじゃない!ルカリン私にもやり方教えてよ」
「ルカってば、そんなこと出来たんだ」
ルカお姉ちゃんのスライムと話が出来るという事実にみんなが驚いた。たしかになんとなくだけどルカお姉ちゃんなら出来そうな気もする。
「それでこのスライムはなんて言っているの?」
「ん、シルバはご飯くれたから好き。サティは乱暴だから嫌いだって」
「ええー、なんでよう。私は乱暴なんてしないわよ」
思い当たることはあった。確かにこの間僕はこの子にサンドイッチとバナナを投げたし、サティお姉ちゃんは一所懸命に殴りかかっていた。
そうか。スライムは僕からご飯も貰ったと思っていて、お姉ちゃんには虐められたと思っているのか。
あれ?でもスライムって知能が低くて、本能で行動するんじゃなかったっけか。このスライムは、10日以上前のことを覚えている上に人をちゃんと認識することができているんだ。これって、すっごくすごいことなんじゃないのかな?
「私は乱暴じゃないよ。優しい人間だよ、だから仲良くしようよ、スラリン」
“ピュア!”
仲良くしようと手を伸ばしたサティお姉ちゃんの手をまた、スライムが叩き落とした。三回目はお約束となってしまった感が出てきた。
「この子イヤって言ってるのね」
「ん、ピュア!はイヤ」
「なんでよー!」
手を叩かれて騒ぐサティお姉ちゃんを無視するように、スライムは僕にすり寄りと“ぴっぴ”と鳴きはじめ、ルカお姉ちゃんが通訳に入った。
“ぴぴきゅ、ぴっぴ”ポヨン、ポヨン。
「ん、名前はポヨン」
“きゅぴぴぴ、きゅっぴぴぴぴぴ”
「ん。ふむふむ」
“きゅぴきゅぴ”
「ん、シルバに私の友達になって欲しい・・・・友達になって、えっと」
このスライムポロンは僕と友達になりたいのか。嬉しい、スライムの友達は初めてだけど、仲良くしていきたいな。
「うん、良いよ。ポヨンちゃん僕と友達になろうよ」
“ぴっぴ、きゅぴぴきゅぴ”
「ん、毎日、美味しいご飯で、養ってほしい。 ・・・だって」
「・・・・・・・うん?」
今日、7歳の僕に、扶養家族が誕生した。
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