秘密基地にて
目が覚めた僕がいたのは、やっぱりお姉ちゃん達の秘密基地の中だった。夢ではなかった、現実は非常に厳しい。
「あら起きた。シルバあんたって本当に凄い男だったのね、まさか戦いの興奮を抑えられず、ハッスル気絶をするなんて。話にはそう言う人がいるって聞いたことがあったけど、まさか身内に存在していたなんて!これは私も負けてられないわ!」
サティお姉ちゃんは腕を組んで“うんうん”とひたすら感心をしている。
「凄い凄いよシルバ!キミって最高だよ。いつの間にかこんなにも勇気のある男の子に育っていたのね。感動だよ! 今日はシルバの勇姿が見れるなんて、ルリお姉ちゃん鼻血でそう」
ルリお姉ちゃんは僕の両手を握り締めて、私精一杯応援頑張るよとか言ってくる。
「ん、シルバ特別にこれあげるから食べて。腹が減っては戦はできない。だから、ヤリメンシルバにこれあげる」
と、ルカお姉ちゃんはアーモンドを7粒くれた。歳の数かな?
みんなさっきから勘違いをしているな。みんな考え方がポジティブすぎると思う。僕が気絶したのは、感激でも戦いへの熱意や興奮でもなく、喪失と絶望だよ。
なんで僕がこんな目にって感じ。お姉ちゃん達に悪気は一切ないし、むしろ僕を楽しませようとして、かまってくれているのは分かるけどさ・・・・・・。
「「「きゃきゃ、うふふ」」」
お姉ちゃん達、とても楽しそうだな。そんな楽しそうにされると僕も断り辛いよな。なんとかして、リベンジは中止にして、秘密基地の見学くらいで終わるように話をもっていきたいな。
まずは、スライムから話を逸らすように誘導しよう。
僕はここまで3秒で思考をまとめると、未だ興奮冷めやらない様子のお姉ちゃん達に話を自然にふってみた。
「それにしても、こんなに凄い秘密基地を何時の間に作ったの?」
「おお、やっぱりこの秘密基地に興味津々てところね」
「知りたい?この秘密基地はね、この間の反省会の後から作り始めたの」
「ん。頑張った」
第一段階完了、話に乗ってきた。ここから褒めて褒めてと。
「へえ、あの後から作ったんだ。すごーい。でも、どうして基地作ろうと思ったの?」
「あんたがアドバイスしてくれたじゃない。準備が大切だって。だから薬草野原の近くに基地を作って、装備や道具をためておけば良いじゃんって思ったのよ」
「そうなんだ。それはとても良いアイデアだったと思うよ。僕には思いつかないや。僕にも言ってくれれば絶対に、止め、えと、手伝ったのに」
「うふ、シルバを驚かせたくて、秘密にしてみんなで協力して毎日少しずつ作っていったの。私達結構頑張ったのよ」
「ん、超がんばった。褒めて」
サティお姉ちゃんもルリお姉ちゃんもルカお姉ちゃんも、行動力が凄い。思いついたら即行動。考えないから仕事も早い。
あの僕の至福の裏でこんな計画が進んでいたなんてなあ。今日まで僕も幸せ過ぎて全然気が付かなかったなあ。
「基地野原の近くにあるんだ。へー、そうなんだー。ちなみに森の中とかじゃないよね?」
「うん?森の中に決まってるでしょ。野原に隠れるとこないし、だって、あんた秘密基地よ秘密基地。見えちゃたら秘密じゃないでしょ」
「なかなか場所がなくて、少しだけ森にはいちゃったの」
「ん、となりの森。少し入ったとこ。人に見つかる、駄目」
「そうだよね、秘密基地だもんね。秘密じゃなきゃ、秘密にならないもんね。あははっ」
森、森の中か・・・。落ち着いて、落ち着いて話を聞こう。大丈夫。薬草野原から少ししか離れていないなら、獣や魔物の心配はないよね。・・・多分。
僕は基地の中を見回してある道具を見つけた。基地の建造理由であるスライムとの戦いから一番遠い位置にあると思われる日常品。これなら安全な会話ができそう。
「あっ、お鍋発見。お玉もやフォークもある。この秘密基地では食事も出来るんだ」
「食事?できないわよ」
「でも、お鍋あるよ?」
「シルバ、お鍋をよく見て、そのお鍋は底に穴が開いて使えないの。古くなってお母さんが捨てるって言ったから、私とルカで貰ってきたの」
「ん、使わない古くなったまな板やお玉も貰った。褒めて」
「私はあんたのために、捨ててあったフォークを拾ってきたわ。感謝しなさいよね」
「そうなんだ、ありがとうね」
考えろ、考えろ僕。使えない穴が開いた鍋、古いまな板とお玉、そして捨ててあった先の曲がったフォークを僕のために?。これは、何を意味するのか。
「じゃあルリリン、ルカリン、私達もそろそろ準備しよっか」
「りょうかーい」
「ん」
・・・・・・。
鍋の底にある穴。でも見た感じ大きい穴じゃない。水を汲んだりは無理だけど木の実なんかなら入りそう。蓋もあるから考えられるのは収穫したものをいれて置く用。保管庫か?
「まずは身体を温めてっと、“シュシュシュ”今日のパンチいつもよりキレが良いわ」
「肩を“グルグルグル”まわして、よしっと、いつもより肩が軽い気がする」
「ん。”ペロ”しょっぱい。ちゃんと塩」
じゃあ、まな板は?ナイフも包丁もないのにまな板?ん?このまな板ひもついている。ヒモ、ヒモは結ぶ、結んで・・・・、吊るす? まな板を吊るして・・・!お玉で叩く!これだ、間違いない!
このまな板を基地の軒先に吊るしてお玉で叩く。合図!合図を送るやつだ。カン、カン、カーンって。
確かにこれは良いアイデア。昔からある安全や危険を知らせることがやつだ。
「二人とも準備は出来た?」
「投げやすい石も10個ももったよ」
「ん、塩の他に、白い粉ももった」
「「「ばっちりー!!」」」
じゃあ、僕の為の先が曲がったフォークは、曲がったフォークの使い道は?
「じゃあ、行くわよって、ねぇシルバ。ねぇ、シルバってば!!なにこの子、全然準備出来ていないじゃない」
「聞こえてないみたいね」
「ん、なんか集中」
曲がったフォークは?
僕の為に・・・先の曲がった・・・?
「「「シルバーーー!!!」」
「うわっ、なに?どうしたの」
突然耳元で大声でされて驚いた僕。耳がキンキンする。ひどいよお姉ちゃん達、折角もう少しで何か閃きそうだったのに。
「あんたこそどうしたのよ?何回も話しかけたのに私達を無視してさ」
「どうかしたシルバ。考えことや悩みことでもある?」
「ん、相談、解決」
「ああ、ごめんね。別に無視をしていた訳じゃなくてさ。考えていたんだよ。底に穴の開いたお鍋、古いまな板に玉とフォーク、何の道具に使うのかね。まあ、考えて大体わかったけど、曲がったフォークで悩んじゃってさ」
「何言ってんのあんた?」
「え?」
「それ装備よ」
「え?」
「だからそれ、道具じゃなくてあんたの装備。はー、しょうがない子ね。私達が手伝ってあげるわ」
「・・・・・・・・・・・・・え?」
・・・・・・。
・・・・・・ステータス確認。
名前:シルバ(男性)
年齢:7歳(洗礼前))
職業:村民
レベル:1
主武器:古いお玉
副武器:先の曲がったフォーク
頭部:底に穴が開いたお鍋
胴体:縛られた古いまな板
盾:お鍋のフタ
スキル:なし
魔法:なし
「思った通り、なかなか似合うじゃない」
「シルバ強そう」
「ん、かっこよ」
「え?」
なに?考えれない。
「え?」
なに?なんだろ?
「では、リベンジにいくわよ!」
「「おおー!!」」
リベンジって、
「・・・・・・・・・・え?」
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