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7. 電気屋の田中さんは○○がお好き


「私はいつも商店街とスーパーどっちも回るの。今日はお店の方もお休みだから、色々な用も済ませちゃおうと思うのだけど、いいかしら?」

「もちろんですわ。私、荷物持ちでもなんでもやりますわよ!」


 そうして久々にヒールを履いて……ってああもう売ったのでしたわ。このサンダル?とやらを履きまして。このぺたんぺたんとなる感じ、嫌いじゃなくてよ。


 ああそれにしても、売った時の店員の反応は面白かったですわ。あの転移してしまった次の日に、売れる場所や人のところに連れて行っていただきましたが……。


『まあ、こんな素晴らしいもの初めて見たわ! まるで本物みたい!!』


 とこの国にしては珍しく屋敷に住んでいるご婦人……もといウメコさんのご友人に買い取っていただいた時はそれはもう喜ばれて。


『ハッ!?!?』


 宝石をお店に売りに行った時は、担当の方のお顔が凄いことになっておりました。目を見開き、真っ青になって、最後には白くなって。一つ二つ売ったら別のお店を紹介されたのは意外でしたが……。まあそれなりのお値段で売れたのでよかったですわ。異世界の宝石でも大丈夫なのね。



「さて、まずは電気屋さんで替えの電球を買いましょうか」


 しばらくゆっくりと歩きながら、ついたのは家……ツネダ商店に似ているお店。


「大きな電気屋さんもあるけれど……私はどうも落ち着かなくてね。こんにちは〜」


 お店の中に入ると、黒い板や掃除機が並んでおりました。数日前に衝撃を受けたようなものばかりですが……私、もう恐れ慄きませんのよ。


「いらっしゃいませー……って梅子さん! 今日は何をお探しで?」

「はい、こんにちは。玄関の電球が切れちゃったのよ」

「はーそりゃ大変だ。付けに行きましょうか?」

「大丈夫、この子がいるから」


 カウンターの奥から出てきたのは、三十代前半くらいの男性。均整の取れた筋肉質な体にピチピチの服、髭に、この国の民族のほとんどと変わらない黒髪。

 これはもしや店員に変装した隣国の軍人だったり……しないわね。異世界だもの。


「えっ! 外国人!? は、ハロー!」

「……ハローってなんですの?」

「って日本語ペラペラ!!」


 驚いて少しのけぞっていらっしゃる店員さん。

 またこの反応ですわ……。私、そんなにその外国人とやらに似ているのかしら。


「ごきげんよう。私はベアトリス・バーナード。ウメコさんの家でお世話になっておりますの」

「どうもご丁寧に。俺は田中仁です。田中電気店の息子で、店員です」


 と頭を少し下げられましたので、私もカーテシーを……そうだわもうドレスじゃないわ。

 そして……どうして私の胸部を凝視してくるのかしら。もしや。


「わ、私には婚約者がおりましてよ!? いいえもういませんが!」

「……え、あっ、ごめんなさい! 違うんです! ちょっと白いTシャツ見るとウズウズしちゃって!」


 み、見苦しい言い訳ですこと! この助平!

 私の豊かな胸部を凝視していたじゃありませんの! うら若き乙女の胸部を!


「それに、俺、ゲイなので!!」

「なんですのそれ!」

「男だけど男が好きってことです!」

「……なるほど。誤解して申し訳なかったですわ」


 故郷でも教皇が男色でしたし、別に珍しい話ではありませんわね。……では、この人本当に白いTシャツを見るとウズウズしてしまいますの? それはそれでちょっと特殊すぎませんこと?


「いやいや、俺の視線も紛らわしかったですよね。今俺が着てる服みたいに、Tシャツに印刷するのをシルクスクリーンって言うんですけど、これが趣味なんですよ」

「田中電気店……って書かれたこの文字のことですの?」

「そうそう」


 ほら、こんな風にとカウンターの下からTシャツを取り出して、見せてくださる田中さん。

 また知らない文明ですわ……まさか、書くのではなく刷るだなんて。


「あらあらもう仲良くなれたのねぇ」

「……よろしければそのTシャツにも何か刷っても?」


 私のこのTシャツに!?

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