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第18話 アビスの者

すると仮面の者が、ゆっくりと動いた。

その手から、闇の魔力のエネルギーが溢れ出していく。

次の瞬間、リサの足元に魔法陣が展開されると、そこから黒い影が広がった。


「これは⁉︎」


それから瞬く間に黒い壁が複数現れると、彼女を囲んで包み込んだ。

それはまるで、黒くて大きな箱であった。


その黒い牢獄は、リサを完全に閉じ込めていた。

反応して避ける暇など無かった。

内部は冷たく何も見えず、彼女の周囲にはただ冷たい闇が広がっているだけである。

リサは手のひらから炎を出した。

しかし、一瞬だけ明かりを灯すと、その炎はすぐに消えていく。


「なるほどね……」


どうやらこの黒い牢獄は、その内部で発生した魔力を吸収して無効化する様だ。

魔法の使い手を囚えて拘束するには、とても有効な手段だと言えた。


仮面の者は、リサを牢獄に完全に閉じ込めたことを確認する。

その足元では、先ほどの蛇の魔物の死体がどんどんと崩れ始めていた。

やがて、その身体のすべてが塵となって消えていった。


そして仮面の者は、牢獄へ向けて片手をかざす。

その手から不吉な魔力が溢れ、漆黒の闇の魔力が放たれ出した。


「永遠の闇の中へと送ってやる」


その渦巻く闇の中へと、牢獄ごとリサを引きずり込もうとしているのであった。

しかしその時、仮面の者は何かを察知した。


「ん」


程なくして、牢獄が激しく揺れ始めた。

その内部から、強力なエネルギーが溢れ出していく。

黒い影を押しのけるように、幾つもの光の筋が内部から放たれていた。


「何だと……⁉︎」


その光は、どんどんと勢いを増し、まるで太陽の輝きの様に強烈になっていく。

そして次の瞬間、光のエネルギーが一気に爆発し、牢獄はその力に耐え切れずに砕け散った。

内部から破られ、四方八方に黒い魔力の破片が飛び散るのだった。

その中心には、まばゆい光に包まれたリサが立っていた。


「馬鹿な……人間が闇の牢獄を打ち破るなど」


仮面の者は驚愕していた。

黒い魔力の破片が、広場の地面に散らばっていく。


「そうか、この娘……あの一族の末裔か」


そして、牢獄から解き放たれたリサは、再び炎の魔力を解放した。

その炎は彼女の周囲を渦巻き、これまでよりさらに強力な魔力となって燃え盛る。


「今度はこっちの番だね」


彼女はそう言うと、仮面の者へ向けて手をかざした。

すると、その足元に魔法陣が展開される。

そこから凄まじい勢いで、燃え盛る巨大な炎の柱が出現した。

それは瞬く間に、仮面の者を飲み込んだ。

その炎は、激しい熱と光を帯びながら、さらに勢いを増す。

その中で生きられる生命など、いるはずも無かった。


しかし仮面の者は、瞬間的に魔力の防御壁を自身の周囲に張り巡らせていた。

それにより、かろうじて業火の中でも焼かれずにいた。

しかしながら、圧倒的な威力の炎に耐え続けることは、到底不可能である。


「いまだ連綿と続いているのか……忌々しい」


彼はそうつぶやくと、自身の内に魔力を集める。

その漆黒のエネルギーを解放させると、炎の中から忽然と姿を消した。

それにリサも気づいて、燃え盛る炎を解除する。


「まったくさあ、逃げるのは上手いよね」


そう言うと、彼女は振り返る。

そこには仮面の者が立っていた。

その身体のあちこちから、細く煙が上がっている。


「今回はここまでだ。お前の力、なかなかに侮れん」


仮面の者がそう言うと、リサは彼と対面してからずっと抱いていた疑問を尋ねる。


「ねえ、あんたがアビスってやつなの?」


リサの問いかけに、程なくして彼は答える。


「いかにも、我らこそ闇の力の支配者にして、この世界を統べる者だ」

「ふーん、やっぱそうなんだ。分かってよかった」


するとアビスの者は、また魔力を集め出す。


「また会うことになるだろう。我らの衝突は避けられない定めだ」

「言われなくても、必ずこの手で滅ぼしてやる」

「フフフ、お前は本当に威勢がいいな」


そう言うと彼は闇の魔力を解放させ、一瞬のうちにその場から消えた。

村の広場には、リサだけが一人残されていた。

もはや邪悪な気配は、周囲から完全に無くなっていた。

そして広場の至るところに、先ほどまでの壮絶な死闘の痕が刻まれていた。


◇◇◇


王都を出発してから数日後、レオンの班は盗賊団の拠点付近へと到着し、キャンプを張っていた。


夜の静けさが辺りを包み込む中、レオンはキャンプの中央で地図を広げ、作戦の確認を行っていた。

焚き火の灯りが彼の顔を照らしている。


すると突然、遠くから馬の蹄の音が響き渡り、こちらに近づいて来た。

レオンをはじめ、騎士たちは素早く警戒態勢を取る。


「こっちに来てるな」

「馬は一騎の様だ」


それぞれ武器を手に取り、こちらに迫る者の気配を探っていた。

音は段々とキャンプに近づいて来る。

すると、こちらに向けて叫ぶ声が聞こえてきた。


「伝令! 本部より伝令!」


それは、王立騎士団本部からの伝令であった。

味方からの報せだと分かり、全員が警戒を解く。

そして、キャンプへと馬が駆け込んで来た。

伝令は息を切らしながら馬から降り、レオンの前へとやって来た。


「レオン隊長、本部より伝令を携えて参りました」

「そうか、ご苦労。どの様な内容だ?」

「はい、フレイムハート家の兵士たちが、我々の討伐に加勢して来ます」


その報告を聞いて、レオンの表情に驚きが浮かんだ。


「フレイムハート家が……それは確かなのか?」

「はい、確かです。すぐに先遣隊が到着するでしょう。こちらが伝令書です」


そう言って正式な書類を差し出すと、レオンは受け取った。


「先日、フレイムハート家の領地の村々が盗賊団の略奪に遭い、多くの被害を出したそうです。それを受けて、彼らもその討伐に動き出したのです」


伝令は報告を続ける。


「それから、王立騎士団がすでに討伐部隊を派遣していることを彼らは知ると、協力と共闘を王国側に正式に通達しました。そして、王国側はこれを承諾しました。そうしてフレイムハート家は、王立騎士団に合流させるべく兵を派遣したのです」


レオンは黙って報告に耳を傾けている。


「王立騎士団でも、すでにこの件は受諾されています。只今各方面に向けて、情報の共有を進めているところであります」

「そうか、承知した。ここまでの伝令ご苦労、ゆっくり休んでくれ」

「はっ、ありがとうございます」


伝令が下がって行った後、レオンは部下たちに向けて声を上げる。


「皆の者、フレイムハート家の兵が我々に加勢することになった。王国も承諾済みだ。盗賊団の討伐は、彼らとの共闘になる。明日にも兵士たちが到着するだろう。彼らを迎える準備をしておけ」


その思いがけぬ知らせに、ざわめきが起こる。


「これはまた」

「意外な展開だな」


誰もが驚きを口にしていた。

五つの名家による加勢とは、予想だにしない事態であった。


「これで気を抜いたり、油断したりするなよ。予定通り、しっかりと備えておけ」


レオンの声が響いた。

しかしながら、彼の内では別の考えが巡っているのだった。


——フレイムハート家か……これはいい機会かもな。

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