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第17話 闇との対峙

漆黒のローブに身を包んだその者は、全身から異様な空気を放っていた。

その姿はまるで、闇そのものが形を成したかの様であった。

顔につけた白い仮面の中央には、三つの円が重なった紋章が描かれている。

そこには、目をのぞかせる穴すらない。

全身に禍々しさを纏い、その周囲には冷たく重い気配が漂っていた。


リサはその姿を、まじまじと観察するなり直感した。

目の前の存在こそ、この事態の元凶であると。

邪悪そのものであると。

その全身から発せられる、忌まわしいオーラが語っていた。

そして、彼女の内に激しい感情が湧き上がって来る。


「あんたが……黒幕か?」


すると、リサの身体から魔力が溢れ出した。

それは先ほど盗賊たちを焼き尽くした時よりも、さらに激しいものであった。


「素晴らしい魔力だ」


彼女の力を感じた仮面の者が、冷たい声を放った。

その声は、底知れない闇を感じさせる。


「絶対に許さない」


リサの目に、また怒りと憎しみの炎が宿る。

そして彼女の体を包む様に、赤く激しい炎の魔力が渦巻いていく。

その猛々しい姿は神々しさすら感じさせ、まるで彼女自身が炎の化身となったかの様であった。


「塵になるまで焼き尽くして、滅却してやる」


そして彼女は、仮面の者へ向けて手をかざす。

するとそこから、凄まじい勢いで巨大な火球が打ち出された。

燃え盛るその炎の球は、まるで弾丸の様な速度で飛んでいき、仮面の者を飲み込んだ。

火球はそのまま止まることなく直進して村の建物へとぶつかると、大きな爆発が起こった。

その衝撃波がリサのところまで届き、その燃える様な長い髪をなびかせた。

衝撃が収まると、彼女は振り返る。


「わりと素早いんだ。今のをかわせるなんて」


振り返ったリサの視線の先には、いつの間にか仮面の者が立っていた。

方法は不明であるが、とてつもない超スピードで移動したことだけは確かであった。

彼女はその動きを目で追えた訳ではなく、魔力感知によって邪悪な気配を察知したのである。


「その力、尋常ではない魔力量だ。面白い」


彼女の強烈な魔力を感じて、仮面の者は低くつぶやいた。

事実、彼女は盗賊たちとの戦いの時から今に至るまで強力な魔法を放ち続けているが、いまだその魔力は尽きていない。

常人を遥かに超えた力の持ち主だと言っていい。


「もう少し試させてもらおう」


仮面の者がそう言うと、その背後に黒い闇の渦が現れた。

それは不吉な気を放ちながら、次第に大きくなっていく。

すると、その中から邪悪な魔物が姿を見せた。


◇◇◇


討伐部隊出発の日が目前に迫り、作戦会議室では最終的な確認が行われていた。

部屋の中央にある大きな円形のテーブルの上には、地図や報告書が広げられている。

そして、団長を中心としてテーブルを囲み、副団長、各部隊の司令官、レオンをはじめとする各班のリーダーたちが集まっていた。

そして真剣な表情で地図に目を落とし、それぞれの役割を再確認していた。


——いよいよか。


討伐部隊の出発を前にして、レオンは特に緊張などはしていなかった。

やることは常に単純である。

与えられた任務を確実に遂行する、ただそれだけであった。

すると、団長が力強い声で話し始める。


「諸君、いよいよ盗賊団の討伐を開始する。目標は複数ある奴らの拠点だ。これを各班にて一斉に叩く」


その場の誰もが、団長の言葉に耳を傾けている。


「奴らによる数々の略奪行為は、王国の平和を脅かすものだ。断じて許すことは出来ん。王立騎士団の名にかけて、確実に本作戦を成功させよ!」

「はっ!」


騎士たちが一斉に応じた。


◇◇◇


それは、巨大な蛇の怪物であった。

その体表は黒光りする鱗に覆われ、まるで硬質の金属のように見える。

体長は十数メートルにも及ぶであろう大蛇であった。


「強力な魔物の召喚もできるって訳ね」


目の前に現れた巨大な蛇の魔物を見て、再びリサは燃え盛る炎の魔力を身に纏う。

この世の者とは思えない恐ろしい怪物を前にしても、彼女はまったく臆していなかった。


「よく分かった、あんたは今この場で、確実に殺さなきゃいけない奴だってことが」


この仮面の者を放っておけば、この先さらに途方もない被害が出る。

リサはそれを確信していた。


すると突然、蛇の怪物が動いた。

巨大な体をうねらせて地面を這い、リサに向かって猛然と襲いかかった。

その一杯に広げた顎は、人間を余裕で丸飲みに出来るほどの大きさである。

そこに並んだ鋭い牙は、恐らく毒を持っているであろう。


そんな怪物の巨大な顎が、リサの目の前に迫った。

しかし、その牙は彼女に届く寸前で停止した。

最初の盗賊の一人が襲いかかって来た時と同様であった。

よく見ると、彼女の周りに魔力の壁が張られているのであった。


魔物は荒れ狂いながら噛みついて来るが、その魔力の壁を突破出来ずにいる。

すると今度は、その巨体をうねらせてリサの周囲を囲んだ。

そして、その長い身体を強力に巻きつけて締め上げてくる。

魔力の壁ごと、無理矢理に押し潰そうとしているのであった。

しかし、彼女は落ち着いていた。


「召喚されたばかりで悪いんだけどさ、さっさと消えてくれる?」


リサがそう言うと、魔力の壁が赤みを帯びていき、熱を発し始める。

彼女の周囲に張られたそれは、炎の魔力を宿した壁であった。

次の瞬間には、壁は凄まじい高温となって周囲に熱と光の波動を放出した。

その波動は瞬く間に怪物を飲み込んで、さらに高温となって放たれ続ける。

熱と衝撃によって、まばゆいばかりの光が生じて周囲の大気は歪んでいた。


その中で魔物は激しく暴れ回っていたが、やがてその動きは鈍くなり、遂には活動を止めた。

熱と衝撃と光が、程なくして次第に収まっていく頃には、ところどころ焼け焦げた巨大な蛇の魔物が地面に横たわっていた。


「蛇の丸焼きの出来上がりね。これって食べれるの?」


煙を上げながら横たわる巨大な魔物を見ながら、リサが言った。


「さあ、次はあんたの番だけど?」


彼女は仮面の者を見る。

そして、相手の方へと歩みを進めて近づいていく。

そこには一切の躊躇はなく、敵を滅ぼすという明確な意思と覚悟があった。


「驚異的な力だ、殺すに惜しい」


仮面の者は冷酷な声で言った。


◇◇◇


早朝の薄明かりが、王立騎士団本部の壁に淡い光を投げかける。

その中庭には、すでに騎士たちの鎧の音や、馬のいななきが響き渡っていた。


「皆、準備はいいか!」


レオンの力強い声が中庭に響く。

すると部隊の騎士たちが、一斉に整列した。


「目標は盗賊団の拠点の一つだ。そこに奇襲を仕掛けて一気に叩く。敵は生かしておく必要はない。情けは不要だ。すべて殲滅しろ」


レオンは一人一人の顔を見渡しながら言った。

皆優秀な騎士たちであり、いい面構えをしていた。

討伐部隊に選ばれた騎士たちは、王立騎士団の中でも精鋭の強者たちであった。


「では行くぞ!」


レオンの合図で、馬にまたがった部隊は一斉に動き出す。

彼の部隊は一列になって城門へと向かい、やがて門が重々しく開かれる音が響いた。

馬に乗った騎士たちが、次々と城門を通り抜けて行く。

レオンはその先頭に立ち、風を受けながら馬を駆けさせた。

そして一行は、盗賊団の拠点へと真っ直ぐに向かうのであった。

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