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第12話 王立騎士団

王立騎士団の訓練場は、熱気と気迫に溢れていた。

大理石で舗装された地面は、何年もの激しい訓練の跡で傷だらけだ。

中央には、いくつもの訓練用の巻き藁や人形が立ち並び、それらの周りで騎士たちが汗だくになりながら稽古に励んでいる。


また訓練場の中には、様々な道具が並んでいる。

剣や槍、斧やメイス、盾や鎧、弓矢にクロスボウ、さらには魔法の訓練に使うための特殊な装置も見える。

それぞれの騎士が、自分の得意とする武器や技術を磨くために利用しているのであった。

この場所で磨かれた技術と精神が、アストリア王国の守護者としての誇りを支えているのだった。


王立騎士団は、初代国王アレキサンダーによって、国内の治安維持と外敵からの防衛を目的に設立された。

彼らは、高度な戦闘技術と魔力を持つ実戦部隊である。

アストリア王国の歴史の中で数々の戦争や紛争に参加し、多くの英雄を輩出してきた。


今その訓練場では、見習い騎士の若者たちが、基本的な剣術の型を学んでいた。

剣と剣が激しくぶつかり合う音が、訓練場全体に響き渡る。


「せい!」

「うおおお!!!」

「せやあ!!」


そして、騎士団の指南役であるガレスが指導に立ち、その厳しい眼差しを向けて訓練を行なっていた。

ガレスは一人ひとりの動きを指摘し、時にはその場で実演して見せる。


「いいか、どんな時も身体の軸となる中心を意識しろ。そして無駄な動きを減らし、正確かつ迅速な動きを心がけるんだ」


彼の動きや説明はわかりやすく、その一挙手一投足に長年の経験と技術が込められていた。

騎士たちは彼の動きを目で追いながら、自身の技術を磨くために集中している。


「よし、全員集合!」


ガレスが合図して皆を集めた。


「今日はこれから、実戦を想定した魔法武技の訓練を行う。そして、特別指導員としてレオン隊長を呼んである」


その言葉に一同はざわめく。


「おおー!」

「レオン隊長が⁉︎」

「マジか」


王都に招集された彼に、ガレスから新人たちの稽古を頼んでいたのであった。

英雄として名を馳せるレオンは、若い見習いの騎士たちにとって憧れであり、目標とも言える存在である。

そしてレオンが現れると、騎士たちの視線が一斉に彼に向けられる。


「それでは全員、準備を整えろ」


ガレスが指示すると、皆それぞれ機敏に動き出す。

それから、全員が胸当てなどの防具をつけてレオンの前に整列した。


「それでは、魔法武技の訓練を始める」


レオンはそう言うと、彼らの前に立ち、剣を引き抜く。

その動きはまるで、一陣の風のように速く軽やかで美しい。

彼の剣から放たれる魔力の波動が、訓練場全体に広がっていった。


「魔法武技」は、魔力と物理的な技術とが融合した特殊な技術体系である。

魔法の力と戦闘技術が相互に補完しあい、高い戦闘能力を生み出す。

魔法と武術の両方を熟練させる必要があり、上級者でないと扱うのが難しい技術だ。


アストリア王国では、主に王立騎士団の者たちがこの技術を修めている。

習得は容易ではないが、これを身につけた者の強さは、他とは一線を画するものとなるのだった。


まずレオンは、基本的な剣術の型を示し、それに魔法を組み合わせた技を披露する。

彼の動きは流れるようであり、剣の一振り一振りに精妙な魔法のエネルギーが込められている。

その技術の高さに、騎士たちは息を呑む。


「見て学べ。そして、実践するんだ。自分に合った型を見つけていけ」


レオンは端的に言い放つ。

その場の誰もが、彼の動きを食い入るように眺めていた。

一通りの基本の説明が終わったところで、ガレスが声を上げて命じる。


「よーし、じゃあ次は模擬試合だ」


訓練場の空気が一段と引き締まる。


「せっかく来てもらったんだ。お前ら軽く揉んでもらえ」


そして、ガレスは騎士たちを何人かのグループに分ける。

一対一ではレオンとの実力差がありすぎるため、複数人ずつ参加させる形式とした。

そして、最初のグループとレオンが向かい合う。

騎士たちは三人のグループだった。


「始め!」


ガレスの合図と共に、それぞれが一斉に動き出した。

騎士たちは、身につけた技を駆使して攻撃を繰り出していく。

剣で斬りかかる者、攻撃魔法を放つ者など、各自の得意の形で攻めていった。

レオンはそのすべてを軽やかにかわし、瞬時に反撃に転じる。

彼の剣は閃光のように速く、力強い。

そこには同時に、雷の魔力も込められていた。

レオンは、雷の魔法を最も得意としており、同時に魔法武技の達人だった。

防御を固めた騎士たちも、彼の攻撃は防ぎきれず、一瞬で打ち倒された。


「ま、参りました」


倒れた兵士たちは、レオンの圧倒的な実力におののいていた。

速すぎて攻撃は当たらず、防いでもしのぎきれなかった。


「よし、次!」


訓練を監督するガレスの声が響いた。

そして次、また次と、レオンは騎士たちの相手をしていった。

騎士たちは毎回、複数人で一斉に攻めかかるものの、彼にはまるで通じなかった。

見習いと言えど、王立騎士団に所属する者たちは皆、選りすぐられた精鋭である。

並の兵士よりも実力はずっと上であった。

しかしそれでも、レオンの前ではなす術なく叩き伏せられるのだった。


訓練が終わる頃には、騎士たちは皆疲れ果てていた。

そしてレオンは、最後に全員に向かって言う。


「魔法武技は、一朝一夕で身につくものではない。これからも稽古に励め」


それから、訓練場を後にしていった。

それを見送ると、騎士たちに向かって笑いながらガレスが言う。


「やれやれ、まったく歯が立たなかったな」


◇◇◇


そこは小さな村であった。

辺りは穏やかな陽光に包まれている。

燃える炎のように鮮やかな髪をなびかせながら、リサは村の広場に向かって歩いていた。

村人たちは彼女を見ると、微笑みを浮かべて挨拶をする。


「こんにちは、リサ様」

「リサ様、ご機嫌よう」


リサもまた、彼らに元気よく挨拶を返す。


「こんにちは」


リサは、広場の片隅でパンを焼いている老婦人に話しかけた。


「こんにちは。今日も美味しそうなパンね」

「まあ、リサ様。今日は特に上手く焼けたんですよ。お一つどうぞ」


老婦人は笑顔で、焼きたてのパンを差し出す。


「やったー、ありがとう! 頂きまーす」


リサは一口かじり、幸せそうな表情を浮かべた。


「うーん、美味しい」


すると、小さな子供たちが駆け寄ってきた。

そして彼女を取り囲む。


「リサ様、魔法見せて!」


小さな少女が目を輝かせて頼んだ。


「お願い! 見せて、見せて、炎の魔法!」


他の子供たちも、口々にそう言ってせがむのだった。


「オーケー、わかった。じゃあ、危ないから少し離れてね」


子供たちは興奮しながら少し後ろに下がり、リサが広場の真ん中に立つのを見守った。

リサは両手を広げ、集中し始めた。

その瞬間、彼女の手のひらに小さな炎が現れ、ゆっくりと大きくなっていった。


「わあ!」

「すげー!」


子供たちは目を見張り、歓声を上げた。


リサはその炎を操り、空中で踊るように動かした。

炎はまるで生き物のように形を変え、鳥や花、星の形に変わっていった。

子供たちはその幻想的な光景に目を奪われ、息を呑んだ。


「すごい、すごーい!」


子供たちは拍手を送り、その目には憧れと感動が溢れていた。

リサは笑顔を浮かべながら、最後に炎を消し去り、子供たちに近づいた。


「どう、楽しんでもらえた?」

「うん!」


子供たちは一斉に答えると、リサに駆け寄ってきた。


「でもね、炎も魔法も便利だけれど、とても危険でもあるの。それこそ大怪我したり死んじゃったりすることもある。だから決して甘く見ないこと、いいね?」

「はーい」


リサは日常的に領地の者たちと話をし、交流することを大切にしていた。

フレイムハート家の城からこの村まで馬を走らせて、村人たちと会話をするのだった。

彼女は当主の娘としての地位にこだわらず、一人の人間として村人たちと接していた。


「ねー、最近ね。なんか変な影がいるんだよ」

「変な影?」


不意に子供の一人が話しかけてきた。


「そう、なんか黒っぽくて影みたいなの」

「それは人なの? それとも動物や魔物?」

「わかんない。気づくと村のはずれや森の中に立ってるんだ」


すると他の子供たちも反応する。


「あ、それ僕も見た」

「私も私も」


口々にその目撃情報を語るのだった。


——何だろう? 少し気になるな。何でもないと良いんだけど。


子供たちの話に、どこか不安を覚えずにはいられなかった。


同じ頃、遠くの高台から馬に乗った一団が村を見下ろしていた。

武装してはいるが騎士ではない。

使い古された武器を手にしており、全員が戦闘の痕跡をその身に纏っていた。

見るからに粗野で、凶暴そうな者たちであった。


リーダーと思しき男は、肩幅が広く逞しい体つきで、顔には深い傷がいくつも走っていた。

片目に黒い眼帯をしており、その鋭い目つきは見る者を威圧する。


その時、彼の横に黒い魔力が発生すると、中から異様な存在が現れた。

漆黒のローブに身を包み、顔には奇妙な仮面をつけている。

そこには、目をのぞかせる穴すらない。

白い仮面の中央に、三つの円が重なった紋章が描かれている。

黒に覆われたその姿はまるで、闇そのものが形を成したかのようであった。

近くにいるだけで空気が重く、冷たく感じられる。


「次はあの村だ」


黒衣の仮面の者が、冷たく低い声で言った。

その声は底知れぬ闇を感じさせる。


「分かった」


リーダーと思しき眼帯の男が、淡々と答えた。

そして、村の人々は誰一人として、その事態に気づいていなかった。

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