ライブイベント参加券
人は生まれる時に神様から、いくつかのライフイベント参加券をもらう。
【結婚】(男女共通)
【出産】(女性のみ)
【立会い出産】(男性のみ)
【昇進】(男女共通)
【子育て】(男女共通)
【住まいの購入】(男女共通)
…
…
…
などなど。
一昔前まで生まれる前の人間は、このライフイベント参加券を「とりあえずもらっときます」という人が、ほとんどだった。しかし、ここ十年程で人間の在り方が変わってきた。
人間は生まれる前日、神様から一人ずつ祝福を受ける。その時にライフイベント参加券を持って生まれるか否かを問われる。
今日も五百人の祝福が行われた。神様は一人ずつお祝いの言葉を述べ、最後に問う。
「汝はライフイベント参加券を必要としますか?」
それに対して、今日祝福を受けた五百人は口々に言った。
「いや、いらないっすね」
「無難に生きていきたいので、結構です」
「責任を負う人生は嫌です」
「放浪の旅に憧れているので、それは足手まといです」
……
神様は希望に溢れた人生を目の前にしている赤子達の、あっさりした様子に閉口した。そして、今日配布されるはずだった五百人分のライフイベント参加券は、そっくりそのまま残ってしまった。
何人かは受け取るだろうと思っていたのに。全員「いらない」と言った。
「やれやれ」
神様は呟きながら倉庫に向かう。配られることがなかったライフイベント参加券の入った小さな箱を倉庫に入れる。ふと、倉庫の奥まで目をやると、この十年で受け取りを拒否された、ライブイベント参加券が入った箱が、天井近くまで山積みになっていた。
――資源の無駄遣いかもしれないな
来年からライブイベント参加券を作成するのは、やめよう。神様はそう思いながら倉庫の扉を閉め、鍵をかけた。
読んでいただき、ありがとうございました。