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エピローグ―星の海にて―


 猫の足跡銀河には、星々の光が広がっていた。

 星の海の中。

 僕らを照らしていた輝きがネコの形を創り出し――星座へと形を変えている。


 宇宙に広がる星々は、まるで少し照れ臭そうに笑っているように見えた。


「マカロニさん――この気配は」

『そのようだ、どうやら本当にこの猫の足跡銀河こそが彼、三毛猫陛下と呼ばれる元魔王の今の姿なんだろう』


 間違いなく彼だったのだろう。

 宇宙と宇宙を繋ぐ銀河が、キラキラキラと輝き言葉を発し始める。


『久しぶり、と言っていいのかどうかは少し疑問だが、まあ構わないだろう。久しぶりだね、友よ――キミを、いやキミたちをずっと眺めていたよ』


 それは生前にも耳にした異世界帰りの、少し変わった三毛猫の声。

 あの時と違うのは僕の方だ。

 マカロニペンギンの姿で僕は感動の再会の声を……とはならず。


 ペペペペっとクチバシの付け根に怒りマークを浮かべ。


『――なにが”久しぶりだね、友よ……”だ!』


 僕は銀河相手にも怯まず絡み、フリッパーをビシ!


『おいこら、おまえ! 銀河になって全部見てたんならもっと前から接触して来いよな!』

『ははは、この世界で産まれたばかりのキミはワタシの事を忘れていただろう? 星が急に、ワタシはキミの友だ――なんて語り掛けたらどうなると思う?』

『そりゃあまあ、不審者扱いはしただろうが。だがなあ!』

『キミに信用されるのは大変だろうからね』


 実際、僕はなかなか相手を信用しない。

 アランティアが、ぷぷぷと笑い。


「言われちゃってるじゃないっすか、ほんとうにマカロニさんって疑り深いっすからねえ」

『お前らと違って慎重なだけだっての』

「あれ? でもそんな性格なのによくあたしを信用しましたよね? なんっすか? あたしになんか運命的なもんでも感じちゃってたんすか?」


 他人事みたいにいう主犯を睨み、僕は告げる。


『あのなあ……僕はおまえの願いに導かれてこの世界に招かれた部分もあるからな? おまえの性質がそうさせたってのと、ぶっちゃけお前が結構脳みそ足りない系の女騎士だったのが大きいんじゃないか』

「は!? なんかあたしが考えなしみたいじゃないっすか!」

『そう言ってるんだよ!』


 僕らのやり取りを眺めていた銀河に化身したあいつが、ふふっと小さく笑い。


『やっぱりキミとこちらの女神は相性が良かったようだね』

『おまえさあ、こいつが僕を召喚する経緯にどこまで関わってたんだ? たぶんおまえは黎明期の時代、主神レイドが新しい宇宙を創り出す時にこっちに意識を飛ばしてきたんだよな?』


 銀河は考えるように大小、様々に輝いて。


『ワタシはただ、キミにいい出会いがあればと思っていただけさ。彼女がキミを選んだ事に関して、ワタシはほとんど介入していない筈だよ』


 ほとんど、かつ、筈だよ……か。

 まあ、やはり少しは調整したという事だろう。

 そもそもあちらの宇宙とこちらの宇宙を繋いでいるのは、この猫の足跡銀河。

 銀河化しているコレが全くの無関係の筈もない。


 僕は言う。


『おまえがずっと見守ってたことって、こっちの主神は知ってたのか?』

『彼とワタシは元は同じ魔王。三つに別たれた別の欠片とはいえ、同じ魔王だった存在だ。当然、彼だけは全てを知っているよ。というか、ワタシの協力者、共犯と言えるだろうね』


 あの胡散臭い主神野郎。

 後でとりあえず一発、フリッパーを決めてやろう。

 まあ、あの主神レイドもこの結末……僕もアランティアも、メンチカツもエビフライも無事に生存できるルートに協力してくれていたという事でもあるのだが。


 だからといって、……なんか、こう手のひらの上で踊らされていた感覚は消えない。

 まあ恩人であるともいえるのだが。

 ともあれ。

 話題を変えるように僕は漏らした息に言葉を乗せる。


『おまえさあ、奥さんも娘もできたんだろ?』

『ああ、そうだけれど。それがどうしたんだい』

『こんな宇宙に浮かぶ星々になって大丈夫なのかよ、奥さんだって心配してるだろ』

『キミも知っていると思うが、ワタシの伴侶はあの元勇者だからね。キミが漂流していた頃も、ワタシたちは多くの異世界の騒動や、現実世界で起こった多くの事件を解決してきた。星になるぐらい、そう驚くほどの事じゃないさ』


 実際、どうやら本当に僕の死後もかなりご活躍だったらしい。

 だが――僕はジト目で宇宙を見渡し。


『いやさあ、たぶんおまえが思ってるほど星々になってることは簡単な話じゃないだろ。これ、おまえさあ、帰宅したらたぶん説教されるぞ? なにしろあれを奥さんに貰ったんだろ?』

『アレ呼ばわりは困るな、もし彼女に聞かれたらワタシと一緒にキミまで説教をされてしまうだろう』

『……元には戻れるんだよな?』

『もちろんだ、元に戻ることもまた足跡銀河に戻ることもできる……というか、既に何度か戻っているからね』


 三毛猫陛下の言葉に反応するようにアランティアが言う。


「百年に一度、あちらの宇宙と繋がるアレっすね」

『ああ、なるほど――あれってお前の帰還で、リアルな七夕。百年に一度、おまえがネコに戻って行動する副産物。奥さんやら家族に会うために地球に戻った時に宇宙が繋がる、そういうロジックだったのか』

『ワタシが定めたわけじゃないが、そういう事だろうね』


 まあこっちの百年と向こうの宇宙の百年は違う。

 こいつとしては、結構なんどもあちらの宇宙に戻っていたし、向こうにとっても百年戻らないとはなっていなかったのだろう。

 とりあえず心配なのは僕に気を遣って、戻れないのに戻れると言っているパターンなのだが。


 どうやらその心配もなさそうだ。


 星々が集まり恒星のように輝きだし、それは一匹の三毛猫の姿へと転身していく。

 顕現した三毛猫はまるで僕がドリームランド内の螺旋階段を下りてきたように、トテトテトテと、いつのまにか現れた螺旋階段を下り。

 ジャンプ!

 こちらに近づき――髯を傾け、僕の横に目をやり。


『キミたちもご苦労だったね、お疲れ様。キミたちのおかげで三獣神も情報を入手でき、万全の状態で全ての父たちに対抗できた……外からの干渉はしばらく発生しないだろう』


 ありがとうと感謝を述べる三毛猫の元魔王を、じぃぃぃっと見ているのは三人。

 アランティアが言う。


「うわぁ、まーじでネコちゃんなんすね」

『そうだよ、なにか問題があるのかな?』

「てか、いまドリームランドの階段を使ってましたよね? ここってか、あっちの宇宙もこっちの宇宙も、まさか三毛猫さんの夢の中だったりします?」


 突拍子もない発言にメンチカツが、あぁん? と小馬鹿にした息を漏らし。


『んなわけねえだろ。もしそうならオレたちは全員、魔王が見ている夢の中の住人って事じゃねえか』

「んー……でもなーんかその階段、マカロニさんの夢世界の時のと似てるんすけどねえ」


 と、いまだに怪訝そうな顔で螺旋階段を睨むアランティアである。


 仮にアランティアの説が正しかったとしたら、魔王とその同一存在こそがクトゥルフ神話における最高神――宇宙そのものを夢見るアザトースとなるのだが。

 まあ実際そうだったとしても、なにかが変わるわけではない。

 エビフライが言う。


『ところで三毛猫陛下さん』

『なんだい弟くん』

『兄さんを殺しちゃったときのことを聞きたいんだけど……って! なにするんだよ、メンチカツさん!』


 珍しく空気を読んだメンチカツがエビフライの口を塞ぎ。


『ああ! ああ! 過ぎたことはもういいじゃねえか! 相棒が良いって思ってるなら、それでいいんだよ!』


 こいつ……さっきはストーカー発言でメチャクチャ空気を白けさせたが。

 こーいう時にはちゃんと動くんだよなあ。

 もしかしてだが、このカモノハシのこのボケ体質……実は、ある程度計算でやっていたりする可能性も……。


 いや、ないか。

 うん、ない。

 このメンチカツに限ってそれはない。


 ともあれ。

 僕は思うのだ。

 一面に広がる星の海の中。

 友が導いてくれた、この宇宙を見渡し――。


 マカロニペンギンのクチバシから、本音が漏れる。


『本当に――この世界は退屈しなさそうだな』


 と。


 僕の本音を揶揄う様に。

 人間だった時の、あの日々を知る友が言う。


『あの日のキミは、人生なんてつまらないものだと一蹴していたが――どうかな? ペンギンになったキミは今、幸せになれたかい?』

『さあな、幸せかどうかなんて終わってみないと分からないだろ』

『否定しない所を見ると――答えはイエスといったところか』


 実際、そうかもしれないが。

 勝手に決めつけ、友は宇宙の狭間の世界で小さく笑った。

 僕はやはりあえて否定する気にもなれず、宇宙にまで送られてくる勧誘の手紙に目を落とす。


 友が生きる僕らの宇宙を維持するためには、きっと。

 この手紙の主、全てに頷き――監視用の分霊を放つしかないだろう。


 どうせ勧誘に頷くならば……。

 ……。

 僕はまず待遇や給与についての交渉をするべく、詐欺師の頭を働かせ始めた。


 全ての基準をほぼ最高に設定し、相手をキレさせないギリギリラインを確保。


 さて、あのメチャクチャな連中を相手にどこまで良い条件を引き出せるか。

 僕は自分の腕を試すように、ニヤリと笑い。

 友の目の前、書類生成の魔術を展開し始めた。


 僕が提示した雇用条件に全員がジト目になりつつ。

 しかし、僕の能力で全て押し通してしまった逸話は、またいつか。

 それは今回の騒動とは別の物語なのである。




 ―終―


◇本エピソードにて、マカロニさんの物語は完結となりました。


文句を言いつつもやりたい放題やっていた、ペンギンさん(マカロニ氏)ですが、

最終的にはかなり楽しみながら、あの世界で暴れてくれていたと思っております…!

マカロニさんの珍道中に最後までお付き合いいただき、

ありがとうございました!


以下はこれからの更新予定などになります。


①これからの更新予定について。


(1)新作開始について。

二週間の執筆期間後に、引き続きなろうさんにて、新作の連載開始を予定しております。

またお付き合いいただける方は、こちらもチェックしていただければ幸いです。


(2)具体的な日時について。

新作の更新開始は二週間後、「6/22(土)午後、13時13分」を予定しております。

定期更新時間はまだ未定ですが、おそらく15時~19時の間になると思います。

また、一週間後の「6/15日(土)の13:13」に「本作や魔猫シリーズについての雑感」を、活動報告にて行う予定です。

興味がおありでしたら、来週もチェックしていただければ幸いです。


もし次回作もお付き合いいただける方は、引き続きよろしくお願いいたします!


②新作とは別になにかお知らせできる事。


(1)お知らせについて。

もし何か既存作品で動きがある場合、「活動報告」または、

拙作、「殺戮の魔猫の概要欄など」でお伝えさせていただく事になると思います。

魔猫シリーズの今後の動きに興味を持っていただけましたら、

お気に入りユーザー(フォロー)にご登録いただくか、

「殺戮の魔猫のブックマークを残していただく」or新たに登録していただければ幸いです!


(2)それと魔猫シリーズの宣伝になりますが、


もしマカロニさんの話は読んだけど、殺戮の魔猫はまだ知らないよ!

という方がいらっしゃいましたら、

この機会に是非、ケトスにゃんの活躍を読んでいただければ、と!

(作者は大変喜びます!)


※殺戮の魔猫の二部辺りになりますと、

ああ……生前のマカロニさんのやらかしは此処に繋がってるのか……等、

派生作品も含め、

こちらを読んでいただけた方のみ、ニヤリとできる部分もあったりします。

(ただし、ほんとうにかなり長い作品となっております…!)


以上となります。



それでは、長くなってしまいましたがお付き合いいただきありがとうございました!

ここまでお読みいただき、

本当にありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[一言] 完結お疲れ様でした! 事務能力のマカロニさん そして願望機としてのアランティアは今後も出番が多くなりそうですね 3獣神が顕現し直接統治する以上、レイド神の世界は今後非常に安定しそうですなあ……
[一言] 終わってしまった…… 22日までお預けか……まだ先じゃないか…… 魔帝マカロニ(端末)の未来や如何に!! 炎母ちゃんと一緒に黒ニャンコに説教する未来が見えたような気がした
[良い点] 完結おめでとうございます、そしておつかれさまでした! 今回はアカリちゃん世代のお話と思っていたのですが あそこがあーなってそうだったのか~と見事な伏線回収でした シリーズごとに分割魔王様の…
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