『毒竜帝の独白』―メンチカツはねえだろう!? あぁん?女神様よ!―
『SIDE:毒竜帝メンチカツ』
ペンギンとカモノハシの共同戦線。
例の二匹は銀杏騒動に関してのみ、裏切ることのない同盟関係を結んでいた。
彼らの利害が一致していたからだ。
カモノハシに与えられた使命は世界に悪影響を与えかねないペンギンの監視。
そしてペンギンの目的は――ネコの行商人と出会い交渉すること。
毒竜帝メンチカツがこの世界に転生したのは、ここ一年以内の話。
転生したということは死ぬようなことがあったということであり。
その死因は水死。
彼は悪党であったが、義理と人情を優先させるまともな人間だった。
彼はアウトローであったが、悪人からしか搾取しない暴力屋だった。
そんな彼が今なぜか、生きて動くぬいぐるみのような生意気なペンギンの横で、ジト目である。
暗闇の砂漠に在るのは、ペンギンとカモノハシ。
そしてその二匹のケモノにひれ伏す二つの人類軍。
さらに、それらと敵対するように群れとなった半魔獣化した銀杏の樹木。
……。
さすがにファンタジー世界とはいえ、こんな光景は珍しいらしい。
ギギギギ……ギギ!?
と。
スカベンジャーの役割を持つ昆虫型の魔物や魔獣たちが、ギョっと二度見をしながら「か、関わらんとこ……」と目線をそらし通り過ぎる中。
少し焦げた衣色のカモノハシは思う。
――ふざけた世界のふざけた野郎だとは思っちゃいたがっ、おいおい女神さま、さすがにこいつはロックが過ぎるだろう!?
と。
彼の目線にあるのは、天の女神が手を貸したという獣王。
氷竜帝マカロニ。
その姿はイワトビペンギンに似た、変な、トサカのような黄金の髪を持つマカロニペンギン。
マカロニペンギンは手足のごとく人間を操っていた。
毒竜帝メンチカツはゴムに似た感触のクチバシの上に汗を浮かべる。
これは少々、話が違うじゃねえかと。
――氷竜帝マカロニの職業は詐欺師。口だけで相手を動かす非戦闘職だぁ!?
女神の眷属たる毒竜帝メンチカツは彼の職業が詐欺師だと知っていた。
実際に今も人間を相手にああだこうだ、自分の都合のいい選択を相手に選ばせ続ける誘導を、成功させ続けている。
口が立つのは真実だろう。
だが――。
既に彼は確信していた。
毒竜帝メンチカツは再度こっそりと、獣毛を膨らませクワ!
鑑定スキルを発動。
魔力波動を受け――平たく丸いカモノハシテールが、小刻みに揺れている。
……。
効果はまるでない。
それは純粋なレベル差。
少なくともレベルと呼ばれるファンタジーの概念の中では、マカロニの方が上なのだ。
それがメンチカツには腹立たしい。
――クソクソクソ! この野郎っ。たぶん。オレより強ぇじゃねえか。クソ! どーいうことだ! 女神様っ、オレを最強の存在に転生させてくれたんじゃなかったのかよ!
女神との約束で彼は世界最強の存在として転生したはずだった。
事実、例外的な存在を除けば最強を名乗っていい存在に転生しているだろう。
氷海に発生した謎の咆哮に世界が揺れた、あの日から数日後。
怯え暴れた翼竜の群れが人家を破壊してしまう前に倒したのも、何を隠そうこの毒竜帝メンチカツ。
彼が女神から与えられた役割は世界の秩序を保つこと。
そのために与えられた能力は、<暴力>。
どんな弁舌も詭弁も暴力の前には無力。
毒竜帝メンチカツはその面妖なケモノ姿とは裏腹に、暴力によって秩序を守る、一種の、昔には存在したかもしれないヤクザ的なことをしていたのである。
だが彼はすぐに思い出す。
この世界に来てからおよそ一年。
彼の上司は本物の女神であることは間違いないが――。
――……まあ、あの女神様……すげぇテキトーだからなぁ……。
だが、それでも彼は女神に忠誠を誓っていた。
それでも。
やはり毒竜帝メンチカツにもプライド的な概念は存在し。
――このペンギン……どーもクソむかつくんだよなぁ……なんだ、この感情は。
ジト目でオアシスを眺めるカモノハシが、はぁ……っと大きく肩を落とす。
再び彼の名を告げよう。
メンチカツのような獣毛を砂漠の風に靡かせ。
これで今晩はフィレステーキが食えると<黄金の延べ棒>を大事そうに抱えるケモノの名は、毒竜帝メンチカツ。
彼こそが二匹目の例外、海の女神に拾われた転生者。
そのベース……転生の器に使われたのは水の支配者リヴァイアサン。
メンチカツはあの日、あの時、転生したあの瞬間を思い出していた。
◇
あの日。
あの時。
あの瞬間に、彼がファンタジーの世界に転生したと気が付いた理由は単純だった。
綺麗だったのだ。
あの時の彼には全てが汚れてみえていた。
後頭部を殴打され、気絶したところを海に落とされ殺され水底にいた。
生前は、夜の香りを感じさせただろう高級スーツを纏う死体が、ソコに揺蕩っている。
海水はとても冷たく、けれど存外に清く澄んでいた。
だからだろう。
海はちょうど星空を反射していたのだ。
海に反射する銀河はまるで天の河。彼の死体が、そんな星の海を――「せめてもう一度、メンチカツが食べてえなぁ」と、眺めていた時だった。
突然、視界が揺れた。
星が動いたのだ。
その直後、銀河を急ぎ走るようなネコの姿が見え……気が付けばネコの尾に彼の死体は引っかかっていた。
ネコは気付かずそのまま銀河をかけ――死体はどこかの場所で振り落とされた。
落ちた先はまた海の底。
彼は死んだ意識の中で不思議な体験をしていたのだが。
そんな彼の魂を、何の因果か拾い上げた聖職者姿の女がいた。
拾われた死体はこう思った。
綺麗だと。
濁流纏う海の中。
静かに揺蕩い微笑む女性が美しかったのだ。
この世のものとは思えない美貌だからこそ、これがこの世でないと気が付いたのである。
これはあくまでも毒竜帝メンチカツが転生したときの記憶。
走馬灯ではない。
けれど毒竜帝メンチカツの脳裏にはいつでもあの日の女神がある。
それほどまでに、彼の記憶の中に女神の美貌が残り続けている。
これはその時の記憶だろう。
あの日、女神に拾われた死んだ状態の男が言う。
「あんた、何者だ」
『あたくしは人類に創世の神々と呼ばれるモノにして、最高神様の妻たる女神。役職としては、そうですね――ふふふ、海の女神と呼ばれておりますわ』
「女神か、そりゃあいいな……」
ははっと死体が笑う。
煙草を探ろうと動く腕、その指先の皮膚は何故だろうか、まるで液体窒素に触れてしまったように剥がれている。
死体はバカげた夢だと思った。
けれど女神は死体の頬を撫で、微笑み。
『ところであたくしもお聞きしたいのですが、あなたはどうしてこの世界に?』
「どうしてだぁ?」
『あたくしは旦那様を最も愛し、最も役に立つべく動く、海の恐怖を体現セシ女神。異世界からの侵略者ならば滅しなくてはならないのですが……どうも遠き青き星から紛れ込んだ、ごく普通の人間のようですし』
「笑わないで聞いてくれるか?」
『内容によりますわ』
そりゃそうだ、と死体が言う。
死体は考えた。
どうせ語る場所がないのなら、女神に聞いてもらおうと。
バーのマダムに語る口調で――自らが死んだときの状況につながる過去を、面白おかしく告げていた。
――。
それは、男が仕事をしていた時の話だ。
男の仕事は……裏も表も問わない社会のゴミ掃除。
つまりは。
殺しだった。
死体の口が饒舌に語る。
語りは滑らかだが、それは彼の最後の仕事となる一件。
本来ならばあまりいい話でもない。
あの日。
男は、とあるクソ野郎と呼ばれた男の殺しを引き受けたのだ。
死体の口が、その男を追い詰めたときの話を女神に語りだす。
「そんとき詐欺師の野郎が言ったんだ。あのさあ、どうせ僕を殺すならせめてそこの冷凍車の中で殺してくれないかな? ってな」
『冷凍車?』
「あぁん? 冷凍車ってのはだな……」
『ふふ、それは知っていますわ。あたくしが聞きたいのは、なぜ自分を殺しに来たあなたに冷凍車で殺してくれなんて、理解できない頼みをするのか……。そもそも自分を殺しに来た相手に堂々と殺され方の交渉をするとは、あまり聞いたことがなくて。その方、少し頭がどうかしているのでしょうか』
もっともだ。
「なんでも悪人ばっかりを相手にしていた詐欺師らしくってな、オレらの仲間でももっとやれって茶化す声もあったんだが、まあなんだ。ヤツはやりすぎた。門下組織を含めて、大事な先代の名を背負った組を三つも解体させられたってなっちまったら、さすがに恨みを買ったらしくってな」
『まあ! ではあなたは殺し屋なのですか』
「似たようなもんだな、なんだ――女神さまには、ちぃとばっかし怖い話だったか?」
清楚で美しい女神をからかう死体だったが、次の瞬間。
『いいえ、海の中とてゴミを掃除するスカベンジャーは必要不可欠ですもの。今こうして、あなたの死体をカニの魔獣が食べているように、あなたもゴミを片付ける清掃員だったのでしょう。あたくしもその同類、必要ならば――』
死体はぞっとした。
美しい女神の服の裾から、じゅるりと、名状しがたき闇の塊が蠢いていたからである。
そしてなにより、その表情にあったのは他者を殺めたことのある顔。
まあ女神ならば人を殺したことぐらいあるだろうと、死体はすぐに考えを切り替えたが。
女神は少し言葉を選ぶようなしぐさで、自らの頬に手を当て。
『っと、すみません。あなたは魔獣や魔術を知らない世界の住人なのですね』
「まあ……そうだな。いや、別にあんたが怖かったわけじゃねえから、そこは安心してくれよ」
『それで、あなたはその詐欺師の願いを叶えたのですか?』
女神は死体の話を聞きたいようだ。
「ん? ああ、どうも口のうまいやつでな。悪いんだけど僕の死体を冷凍保存して、配達を頼まれてくれないかってな。いや、オレだってなにを言ってんだこいつとは思ったんだが、産地直送でお届けしようと思って……とかなんとかアホなことを言い出しやがって、ヤツが示した先はどこだと思う?」
『教会や寺院でしょうか?』
「……ファンタジーと違って教会なんて蘇生ができる場所じゃねえよ。ヤツがオレに指示した場所は病院。なんでも騙すために情報を掴んでやがったらしいんだが、その病院に超腕の立つお医者様がいたんだと。で、だ。そのお医者様は腕がいい理由もわかりやすかった。そいつは小さい頃から心臓を患ってたらしくてな、自分の心臓病の治療のために医学を学んだら、いつのまにか天才って呼ばれるようになったってオチなんだよ」
女神は昔話を聞く顔で。
『では、そのお医者様は自らを治せたのですか?』
「いいや、そのお医者様は腕がいいし天才だったらしいからな。皮肉な話さ、今の技術じゃあ絶対に治せないってことが徹底的に分かった、それだけだったんだとさ」
『けれど、心臓自体は治せなくとも――治す方法がないわけでもない……ということですわね』
告げて女神はカニに食べられていく男の死体から、心臓だけを取り出し。
『臓器移植というのでしたか』
「ま、治せねえなら交換しちまえってのは単純な答えだわな」
『それで、どうなったのです?』
「そのお医者様は優秀な医者だったって言ったろう? もちろん金もある。そして金さえありゃ、まあ心臓だって買えるってことだわな」
そこで死体はにやりと笑い。
「あのクソ詐欺師野郎は、いつか自分が殺されるって気付いていやがったんだろうな。自分が殺されるときには心臓を買ってくれって、契約してあったらしいんだよ。医者の方も何をアホなと思っただろうが、詐欺師がよほど口がうまかったのか、それともしつこかったのか。その契約に乗ったらしい、ご丁寧に、時間と運び屋の顔まで指示してあったって話だ」
でもと、女神は首を傾げ。
『運び屋とはあなたのことなのでしょう?』
「ああ、あのくそ野郎。自分がオレに殺されるって気付いてやがった上に、事前に配送用のトラックまで用意して、更に指定の時間で届くように殺され待ちしてたってことだ。オレとしてみりゃ、腹立たしいことこの上ないって話なわけで」
女神が言う。
『わかりませんわね、何故、自分が死ぬとわかっていて自分の心臓を売ったのでしょう。死ねばそこで終わり。転生をしても昔の記憶など基本的には引き継がれない。お金を残す意味がさっぱり』
「……まあ、同じことを思ってな、少し調べた」
『あらあら、ふふふふ。奇遇ですわね。それで、答えは何だったのでしょう』
清楚な女神の、今まで見たこともない浮世離れした微笑みの前。
死体が言う。
「血が繋がってるかどうかも知らんが……ヤツには弟がいたらしい。それも、すげえ腕のいい医者じゃねえと治せねえ、厄介な難病にかかってた弟がな……」
『まあ! それでは!』
「ああ、ヤツは自らの死を利用して、弟を治せる医者を延命させることと、莫大な弟の医療費、両方を確保したってわけだ。しかも本来なら医者が自らの命のために殺し屋を雇い、臓器を買った……なんてなったら懲戒もんだが」
言葉を引き継ぐように女神が言う。
『その詐欺師を殺したのはあなたであり、その原因は悪人相手に詐欺ばかりを働き恨みを買っていたから……。あくまでも世間的にはお医者様を疑う筋はない。けれど、……その医者はおそらく事実に気が付くでしょう。そうなったら詐欺師の勝ち、普通の倫理観を持った人間ならばこう思うはずですものね。「彼の弟は、自分が命に代えても治してみせる」と。なるほど、ずいぶんと都合のいいシナリオですわね』
「だろう? 全部がヤツのシナリオ通りに進んでやがったらしくって、オレはまあよーするに、道化。ヤツの思うように動く滑稽な殺人ピエロだったっつーわけだ」
『あなたはそれが気に入らなかったのですか?』
そう、気に入らなかったのだと死体はほくそ笑み。
「ああ、だから――要らねえことをしちまったんだろうな」
『あなたが殺された理由ですわね』
「……ヤツは恨みを買いすぎていた。数年後だったが、事実に気が付いた奴もいたんだろうな。せっかく助かったヤツの弟をどうにかしちまおうってバカがでやがって――なんでだろうな、オレもよせばいいのにそのバカを殺しちまった。で、報復に沈められたって話だよ。つまりこれって、オレはその詐欺師に殺されたってことにならねえか?」
トンデモ理論だが、女神は微笑み。
『解釈次第ですわね』
「あんた、いい女だな」
『当然ですわ、旦那さまからも一番信頼されておりますから』
自信満々である。
もうすぐ、顔までスカベンジャーに食われ始めるだろう死体が言う。
「なあ、ここで会ったのもナニカの縁って言うだろう?」
『あたくしに何か頼み事ですか。そうですわね、面白い話を聞かせてもらいましたし――構いませんよ』
「オレがこうして死体のまま喋ってるってことは、魂やら、そーいう感じなモンってのは実在するってことでいいんだよな?」
『あなたと、そして海底で揺蕩うあたくし自身がその証明かと』
ならばと死体の男は言った。
「もし、詐欺師の野郎の魂があるのなら、悪かった……でも、ありがとうよって伝えてもらうことはできねえか?」
『その詐欺師の魂がいまどこにあるのかにもよりますが、確かにあたくしなら可能です。ですが、なぜ感謝と詫びを? あなたは利用されて恨んでいるのでは?』
死体の唇が不器用な笑みを作る。
「なに、その超腕のいいお医者様が、ヤツの心臓移植を受けて延命できたおかげで――その後に多くの命が救われた。そん中に……まあなんだ、オレの大事だった人がいた。その医者じゃなかったら助からなかっただろうって、くだらねえ話だ。それだけだよ、だからな。まあ、礼ぐらいは言うのが筋だろうってな」
それはただの偶然だろう。
あくまでも必然ではない、計算外で起こった出来事の連鎖。
臓器移植で助かった医者はそのあと、多くの命を救った。
腕のいい医者なのだ、そうおかしい話ではない。
その中にこの死体の大切な人がいた、ただそれだけの話である。
それでも。
海の底で、思い出を紡ぐように死体は言う。
「本当に、大切な女だったんだ……手を出せないほどに、本当に」
『そうですか。でしたら、ご自分の口で感謝を述べる権利をあなたに授けましょう』
言って、女神は微笑んだ。
全てを食われた男は、闇の中。
光となってそこにいた。
死体だった男の魂を掬い上げ、清楚な女神は人間味の薄い美貌を笑みとし。
『アシュトレト。あの子が三体の審判の獣の神性を混ぜたのなら、ふふふふ、こちらもせめて同じ素材を使わないと話にならないかもしれませんわね……。ここをこうして……あら? あら? こう、かしら……まあ、動けば問題ないでしょう』
と。
嫋やかな美貌の下で、ぞっとするほどの冷たく黒い微笑を浮かべ。
海の女神はリヴァイアサンの器に、やはり天の支配者ジズの素体と地の支配者ベヒーモスの素体を合成。
静かな水の流れを感じさせる瞳をゆったりと細め。
――あら? あららららら? どうしましょう、これじゃあまるで。
カモノハシ。
そう言いかけただろう女神の唇を見て、毒竜帝メンチカツは死の世界から目を覚ましたのだ。
どういうことだ!?
と、文句を言ったが海の女神は一切崩さぬ微笑みのまま。
海の女神は微笑する。
声が響く。
これもあなたの望みを叶えているだけ。
あなたは不死身の獣王へと転生しました。
海の支配者たる神龍リヴァイアサン。
地の支配者たる神獣ベヒーモス。
そして、天の支配者たる神鳥ジズ。
三つの器と魂を兼ね備えた、地上最強の存在です。
その永遠の命は、多くの魂との邂逅を呼ぶ。そしていつかは……あなたの大切な人が助かるきっかけとなった、その詐欺師の転生体とも巡り会う。
いつか、あなたの願いも叶うでしょう――、それまではあたくしの愛玩動物……いえ、眷属として働いてもらいます。
と。
女神曰く、いつかは感謝を告げられるのだ。
それなのに。
日々、実は腹黒な、そして人間性が薄い女神の下でこき使われる獣王。
毒竜帝メンチカツは思った。
今回も、無理難題を押し付けられたのである。
あががががががが! なんでっ、なんで! こんなクソみてえなペンギンの監視なんぞしてなきゃいけねえんだ! いつになったら願いを叶えてくれるんだ!
と、憤怒するカモノハシは女神に抗議するが。
なぜだろうか。
女神は困った顔で、カモノハシとその横で悪だくみを働かせるペンギンを、交互に眺めるのみ。
砂漠で展開される共同戦線。
銀杏との戦いという、異世界でも滅多にない珍事件を映すオアシスの波紋。
その揺れる水面の世界にて。
もう少し、知恵にもポイントを振るべきでしたでしょうかと。
女神は呆れつつも楽しそうに。
そして何より人々を見守る聖母の顔で、自らの眷属を眺めていた。