*恐ろしい夢
聖女は星の夢を見る
飛竜の一種、火竜レッドドラゴンが空を飛ぶ。旋回しながら火を吹いた。街が燃える。村が燃える。イストワール王国はレッドドラゴンの火で大打撃を受ける。その中には、私のいた孤児院も含まれていた。孤児院のみんなが燃えた。熱い、苦しいと叫んでいた。嫌だ、嫌だ、見たくない!夢なら覚めて、早く覚めて!
目が覚めた。最悪な夢。あまりにもリアルな夢に枕を抱えて泣きじゃくる。聖王猊下が言っていた。聖女は星の夢を見るのだと。星の数ほどの命が潰えるような大災害が起こる時、それを予知する夢を見るのだと。それならば、あれはただの夢じゃない。予知夢だ。聖王猊下に知らせなければ。私は泣きじゃくりながらも、聖王猊下の部屋へ向かった。
コンコンと聖王猊下の部屋のドアをノックする。夜中に突然訪ねてしまったのに、聖王猊下は私を快く迎え入れてくれた。
「エステル、そんなに泣きじゃくってどうしたんだい?聖王たる私がいるんだ、なんでも言ってごらん?大抵のことなら、私が解決してあげるよ」
聖王猊下は私を抱き上げて膝の上に乗せて、抱きしめてあやしてくれる。背中をトントンと叩かれると、少しずつ落ち着いてきた。
「聖王猊下…」
「うん」
「星の夢を見ました」
聖王猊下の動きがぴたりと止まった。
「…エステル。詳しく話せるかい?」
「はい」
私は見た夢をそのまま伝える。聖王猊下は真剣に聞いてくれた。
「エステル。聖女としての最初のお仕事だ。魔法を使って大結界を張りなさい。数日かかるだろうが、なるべく急ぐ必要がある。…出来るかい?」
私がやらないと、みんなが燃えちゃうから…。
「やります、やらせてください」
「…いいお返事だ。そうと決まれば、今日はもう遅い。今は無理にでも寝て、英気を養っておこう。…一人で眠れるかい?」
「…」
「…エステル。今日はお爺ちゃんと一緒に寝よう」
「え?」
「なに。私はエステルの保護者。つまりエステルのお爺ちゃんなんだ。エステルを甘やかすのもお爺ちゃんの特権だろう?ほら、おいで」
聖王猊下は私をベッドに寝かせて、背中をトントンと叩いて寝かしつけてくれた。あれだけ恐ろしい夢を見たのに、私は聖王猊下のお陰でゆっくりと眠ることができた。
目が覚めてからは忙しかった。朝食を抜かれ、お清めをして、中央教会内の大神殿に隠された魔法陣…大結界を張る為のものらしいが、その上に立たされる。そして魔法陣を私の魔法で起動する。この魔法陣は、聖女の魔力を使って大結界を張ることが出来るが、魔力を大量に費やすため聖女への負担が大きいらしい。見守ってくれる聖王猊下がくれぐれも無理はしないようにと言ってくれるが、元々成人した聖女でさえ何度も何度も起動して使う魔法陣。幼く魔力の少ない私は多少の無理はしなければならない。
限界ギリギリまで魔力を費やしては意識を失って、意識が戻っては魔法陣を起動する。けれども足りない。まだ足りない。はやく大結界を張り巡らせないと、いつ星の夢が正夢になるか…。すでに重要都市には結界を張った。でも、私の孤児院のある村にはまだ届いていない。お願い、間に合って…!
実は残酷なタイトルでした




