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【電子書籍発売中】悪役令嬢として捨てられる予定ですが、それまで人生楽しみます!  作者: 下菊みこと


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*優しさに触れた

エステルはセレストが大好きに

私はエステル。平民の出身で、両親から惜しみない愛情を受けて育った。優しく朗らかな両親と幸せに過ごしていたある日、両親は突然亡くなった。急な仕事中の事故だった。高い場所から足を踏み外したらしい。即死だったそうだ。両親の亡骸は、幼い私には見せられない状態だったらしい。葬儀の際に、棺桶の中を見せてもらうことさえ出来なかった。私はただ、両親がもうこの世にはいないという残酷な事実だけを受け止めることしか出来なかった。私は孤独になった。


親戚達は私の扱いに難儀したようだ。結局、孤児院に入れられることになった。孤児院は十歳になると出て行かないといけない。それまでの間に身の振り方を考える必要がある。けれども、私にはそんな余裕はなかった。ただ、自分だけを取り残して目まぐるしく変わる世界に呆然としていた。


そんな私を、孤児院のみんなは最初はそっとしておいてくれた。そして私がだんだんと孤児院での生活に慣れるにつれて、話しかけてくれることが増えた。最初は周りを拒絶していた私に、めげずに関わりを持ってくれた。遊びに誘ってくれた。私はだんだんと孤児院のみんなに心を開いた。いつからか、孤児院のみんなが私の家族になった。両親ももちろん大好きで大切。でも同じくらい、孤児院のみんなも大好きで大切になった。


そんなある日、聖王猊下が孤児院に慰問に訪れた。聖王猊下が手ずから魔術を孤児院のみんなに教えてくれる。私も聖王猊下の教えてくれる通りに魔術を使った。しかし、その瞬間聖王猊下の優しげな表情が真面目なものに変わって、聖王猊下は孤児院の先生達と難しいお話をしていた。そして私は、聖王猊下に引き取られ中央教会で暮らすことが決まっていた。拒否権はなかった。みんなと離れたくないと駄々を捏ねたが、無駄だった。


私が使ったのは、魔術ではなく魔法だったらしい。よくわからないけれど、魔法は奇跡の力で、それを使えるのは聖女様だけらしい。つまり、私は絵本に出てくる聖女様と同じということで。いきなりそんなことを言われても信じられない。けれど中央教会で聖女としての色々なお勉強を受ける中で、だんだんと自分が普通の人と魔力の質や量が違うとわかって、自覚も芽生えて。


自分には人と違う不思議な力があるから、その力を他の人のために使うべきなのだ。だから、そのためにも人一倍努力して、お勉強して、力を付けないといけない。家族もお友達もいない。私はまた孤独になった。それから、私は眠れない夜が続いた。


そんなある日、聖王猊下が私のげっそりした様子を見て私にお友達を作ってくれると言い出した。そしてしばらく経った日、忙しいお勉強の間に今まではなかった休憩時間を設けて貰い、お友達になってくれる人が遊びにきた。


セレスト・エヴァ・シャロン様。公爵令嬢だというのに、聖女とはいえ平民の出身で孤児の私に丁寧に接してくれた。私が敬称も敬語もいらないというと、自分も敬語はいらないとフレンドリーに接してくれた。セレストは連れてきた婚約者様やお友達や従者を私に紹介してくれたが、王族や貴族がほとんど。私は緊張して萎縮してしまった。


そんな中で、セレストのリュックから突然シルバードラゴンの子供が現れた。きゅうきゅうと鳴くその可愛らしい生き物に、思わず興奮してセレストの許可もなく思い切り抱きしめてしまった。セレストはそんな私を許してくれて、セイゲツというシルバードラゴンの子供に教えた芸を披露してくれた。そしてセイゲツ君のお手を私にもやらせてくれた。セイゲツ君はとても可愛らしい。私はテンションが上がり、緊張が解けた。そのままセレスト達と外で遊ぶことになった。


鬼ごっこに隠れんぼ、花一匁やかごめかごめという初めての珍しい遊びを教えて貰い、みんなでワイワイと楽しむ。セレストはすごいなぁ。セイゲツ君に難しい芸を教えるだけじゃなくて、珍しくて楽しい遊びも知ってるんだなぁ。


セレストのお陰ですっかりみんなと打ち解けて、お友達になれた。そしてみんなで遊ぶのが当たり前になったある日、私は我慢出来ずにセレストに我儘を言ってしまった。家族に会いたいと。


リシャール君から、お墓詣りにでも行くかと言われて驚いて首を横に振る。孤児院の兄弟達に会いたいのだというと、その日聖王猊下から呼び出された。なにかと思ったら、次にセレストが来る日に孤児院に遊びに行っていいと言われた。セレストのお陰だから感謝するようにと言われた。セレストに馬車の中でお礼を言うが、セレストは大したことはしていないと言う。セレストは優しい上に謙虚で本当にすごいなぁ。私なんかよりセレストの方が聖女に向いてるんじゃないかなぁ。


孤児院に帰ると、みんなに囲まれた。ああ、懐かしい。やっぱり私は、みんなが大好きだ。大切なみんなを守るために、立派な聖女にならなければ。


セレスト達はしばらく、なんだか難しい話をしていたが、私が呼ぶと来てくれた。孤児院のみんなを紹介し、セレスト達も孤児院のみんなに紹介する。そしてみんなで一緒に鬼ごっこや隠れんぼ、花一匁やかごめかごめをして遊ぶ。すっかりみんな仲良くなったところで、帰る時間になってしまった。


孤児院のみんなが、私ともっと一緒にいたいと駄々を捏ねた。…正直を言うと嬉しい。家族に愛されていると実感する。セレストが年少組の頭を撫でて説得してくれて、孤児院のみんなと別れる。頻繁には無理でも、きっとまた会える。私はとても幸せな気持ちになって、なのにその夜、とても恐ろしい夢を見た。

セレストもエステルが大好きです

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