何故かグルメ王の称号をもらいました
グルメ王
「セレスト」
「は、はい。リシャール様。なんでしょうか?」
王宮にて今日も今日とて勉強をして、さあ帰ろうという時にリシャール様が駆け寄ってきた。すごい剣幕で。え、なにかしちゃった?
「君が教えてくれた塩釜焼き。父上がお気に召したみたいなんだ。もちろん僕も母上も、フェリもフェリの母上様も気に入ったのだけど…。で、父上がセレストにグルメ王の称号を与えるって!」
「グルメ王?」
そんな称号あったっけ?
「ないよ!そんな称号ない!ないから作るって!あの滅多にわがままを言わない公しかない父上が!私の部分がない父上が!」
リシャール様が取り乱してる、珍しい。
「とにかく、そういうことだから!セレスト、近いうちに表彰式が行われるから覚悟していてくれ!ありがとう、セレスト!あの人の人らしい部分を引き出してくれて本当にありがとう!正直心配だったんだよ!あの生き急いだ人、いつか早死にするぞって!本当に安心した…セレスト!君はどうしてそんなにも僕を救ってくれるんだ…」
リシャール様がいっぱいいっぱいになっているようなので、とりあえずリシャール様の頭をなでなでと撫でる。
「リシャール様、お父様が大好きなんですね。大丈夫ですよ」
リシャール様がほっと息を吐く。
「ごめん、取り乱して。セレスト、本当にいつもありがとう。感謝してるよ。バスチアン男爵の件も聞いた。セレストが活躍してくれているお陰で、フェリを担ぎ上げようとする汚い大人どもも黙らざるをえないみたいだ。フェリも、直情的な部分が治ってきたし。セレストが僕の花嫁でよかった…」
僕の花嫁でよかったなんて、そんな最上級の褒め言葉、嬉しすぎる。
「ありがとうございます、リシャール様。リシャール様にそう言ってもらえると、とっても嬉しいです。私も、そんな風に言ってくれるリシャール様が婚約者でよかったです」
「セレスト…君はどうしてそんなに愛らしいんだ…」
リシャール様にぎゅうぎゅうと抱きしめられる。温かい。
「…ごめん、これから帰るんだよね。引き止めてすまなかった。気をつけて帰ってね」
「はい、リシャール様。また今度」
「うん、またね」
ー…
本当にグルメ王の称号が作られることになり、また私がグルメ王に選ばれることになった。わあ、すごい。
表彰式に呼ばれた私はとっておきのドレスに身を包み、失礼の無いようにめちゃくちゃ緊張しながら国王陛下から表彰を受ける。
「そなたはこれまでなかった革新的な料理を生み出し、この国の食文化の発展に寄与した。よってグルメ王の称号を与える」
「謹んでお受け致します」
わあっと会場が盛り上がった。あー、緊張した!でもこれで終わりだよね!下がっていいんだよね!
「これからも励むように」
「はい!失礼致します!」
あー、終わった!ようやく終わった!よかった!
式が終わると、リシャール様、フェリベール様、パトリック、シリル、イネス、グレイ、リリーに囲まれた。グレイとリリーは侍従、侍女としてだけど。
「セレスト、緊張しただろう?大丈夫かい?よく頑張ったね」
「リシャール様…ありがとうございます」
リシャール様に頭を撫でてもらうと落ち着く…。
「にしても、塩釜焼きとか超斬新だよな。アリアンヌだっけ?お前すごい奴に依頼したよな」
「そうですね!本当にアリアンヌさんはすごいです!」
それもこれも全部アリアンヌさんの努力のおかげだもんね!
「そんなアリアンヌさんを発見したセレストもすごいよ」
「いやぁ、私はうちの料理長の伝手を頼っただけだから」
私自身はそんな大したことないし。
「姉上が普段から使用人達と良い関係を築いているからこそ、紹介して貰えたんだよ。姉上はもっと自分を誇っていいんだよ?」
「そうです、お嬢様!坊ちゃんのおっしゃる通りです!」
「お嬢様は本当にすごい。俺はお嬢様に仕えることができて幸せです」
「みんな、ありがとう」
そんなに褒められると、嬉しいなぁ。
「セレストは人を見る目がある。すごい」
「そうかなぁ?」
「そう。アンナのお父さんしかり、私しかり、アリアンヌさんしかり。一種の才能」
「ふふ、ありがとう」
そんなこんなでグルメ王になりました。まあ、でも、いつかは悪役令嬢として断罪されるんだし、あんまり意味ないかもだけど。
この称号をもらったからどうこうとかは無い




