*天の助け
バスチアン男爵はいい人
私はアドルフ・ボーモン・バスチアン。男爵だ。私は先祖代々受け継がれてきたバスチアン男爵領をとても大切に守ってきたと自負している。領民達もまた、それに応えて税を納め、罪も犯さず、非常に良く尽くしてくれていた。それだというのに、ああ。神はなぜ、私と善良な領民達を見捨てられたのか。
それは突然のことだった。いきなりの大きな揺れ。地面が揺れるなんて、初めてのことだった。咄嗟に妻と子供を庇い、机の下に隠す。ようやく揺れが収まったと思えば、領内各地からの救援要請。とにかく人命を優先させるよう命じ、救助と支援物資を送ることぐらいしか出来なかった。
どうにか混乱が落ち着くと、次は復興の問題が出た。我が家にはそれほどの財力はない。どこかから借りる必要がある。しかし、お金を借りるとは簡単なことではない。最悪、全てを差し出す覚悟が必要だ。
私は、シャロン公爵閣下に助けを求めることにした。シャロン公爵閣下のお嬢様は、次期王妃となられるお方。そんなお方のご両親ならば、我がバスチアン男爵領をお任せできる。どれだけ金利をふっかけられるかは分からない。だが、きっと返すことが困難な額になるだろう。そして、担保となるバスチアン男爵領はシャロン公爵領となる。だが、それでいい。それまでの間に復興できれば、その後シャロン公爵領となってからもきっと、大切に扱ってもらえるだろう。
…そう、思っていたのに。天は、我々を見捨ててなどいなかった。
シャロン公爵閣下と話がついたと思ったところで、お嬢様が「無担保無利子で貸します」と乗り込んできてくださったのだ。
情けは人の為ならず。そう言って我々を助けてくださったお嬢様。このご恩は決して忘れはしない。必ずバスチアン男爵領を復興して、倍以上にしてこのお金を返すのだ!
いい人過ぎて財力がそこまでないのかも
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