*お姉様は優しい
すみません、割り込み投稿です!栞がずれてしまった方は申し訳ないです!
お姉様は優しい。僕はお姉様が大好きだ。
僕はシリル・ディディエ・シャロン。公爵令息。よくわからないけれど、とても恵まれた生まれで、領民のみんなを幸せにしてあげる義務があるんだって。お姉様が言ってた。
僕の大好きなお姉様の髪は、僕と同じ銀色。僕の大好きなお姉様の目は、僕と同じ空色。お姉様とお揃いの髪と目は、僕の自慢だ。とってもきらきらして、最高の宝物。
お姉様はいつも僕と一緒にいてくれる。お父様もお母様もとても忙しくて、僕は構って欲しくてもなかなか一緒に居られなくて。お姉様は、そんな僕を抱きしめてくれる。頭を撫でてくれる。本当はお姉様だってお父様とお母様と一緒に居られなくて寂しいはずなのに、そんな素振りは決して見せない。
僕はお姉様が居てくれるから寂しいけど我慢出来る。じゃあ、お姉様は?お姉様の寂しいは、誰が慰めてくれるの?
僕はお姉様が寂しいって思っても大丈夫なように、頑張ってお姉様にくっついていることにした。だって、お姉様が寂しいのは嫌だから。僕を寂しいから助けてくれるお姉様が、寂しいのは絶対ダメだから。
僕はお姉様の後ろをついて回る。僕はお姉様の好きなものを好きになる。僕はお姉様の持っているものをお揃いで持つ。だって、だってお姉様が大好きだから。お姉様はそんな僕を、いつだって優しく抱きしめてくれるんだ。
「お姉様、ガラスの小鳥さん可愛いね」
「そうだね、シリル。大事にしようね」
「うん!」
お姉様とお揃いの小鳥は僕の宝物。お姉様との宝物はいっぱいあるけど、どれもとっても大切だ。この間お母様から貰った色違いのくまさんももちろん宝物。
「シリル。絵本を読んであげようか」
「お姉様、ありがとう!くまさんも一緒に見るよ!」
「うんうん、くまさんはシリルのお膝の上に座ってね。シリルはここね」
「うん!」
お姉様のお膝で絵本を読んでもらう。くまさんは両方とも僕のお膝の上。
「…めでたしめでたし」
「面白かったねー!」
「ねー。やっぱり物語はハッピーエンドじゃないと」
お姉様はそういうと、少し寂しそうな顔をした。
「お姉様?」
「なあに?シリル」
「お姉様も、ハッピーエンドでしょ?」
だから寂しくないよ?
「んー?んー…そうだねぇ。お姉様は、悪役令嬢だからねぇ」
「悪役令嬢?」
「うん。この絵本の魔女さんみたいなものかなぁ?」
なんで?お姉様はこんなに優しいのに。
「お姉様は魔女さんじゃないよ。お姫様だよ」
「…ありがとう、シリル。でも、決まってることだから。お姫様になる努力をするつもりもないしね」
お姉様は僕の頭を撫でて笑う。
「まあ、その分我が世の春を楽しむつもりだしね。シリルは気にしないで」
我が世の春ってなんだろう?
「よくわからないけど、お姉様は幸せ?」
「すごく幸せだよ。恵まれた生まれだし、お父様もお母様もシリルもリリーもプラムもいるしね」
「そっか。じゃあ、よかった」
お姉様が幸せならそれでいい。お姉様がこれからもずっと幸せでいられますように。
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